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2020年12月19日 よる9時から放送
第1580回
明治の世に西洋式宮殿を造れ!
日本を支えた「迎賓館」物語
ミステリーハンター
中山 卓也
1988年12月13日生まれ、福井県出身。俳優として映画、ドラマ、舞台で活躍。趣味は登山、トレイルラン、野球観戦。世界遺産検定1級を持ち、空き時間を見つけては世界遺産巡りへ。
ミステリーハンターは今回で8回目。
来日した海外のVIPをおもてなしする場所、迎賓館。次回「世界ふしぎ発見!」では、その素晴らしい建築と知られざる物語に迫ります。1974年から国賓を迎えてきた東京にある迎賓館赤坂離宮、2005年に完成した京都迎賓館、そして大正から昭和にかけて迎賓館の役割を担っていた奈良ホテルを取材したミステリーハンターの中山卓也さんにお話を伺いました。
10年の歳月と莫大な費用をかけ
建造された赤坂離宮が
迎賓館になるまでの歴史秘話に迫る!
迎賓館赤坂離宮は、まさに豪華絢爛な宮殿でした。外観も内観もすべてが見所です。これをほぼ西洋建築がなかった明治時代に建造したというのが本当に凄いと思いました。宮殿風ではなく、正真正銘の宮殿ですから。さまざまな宮殿建築様式と同時に最新技術も取り入れられていて、日本もこれだけできるんだ!という当時建設に携わった人たちの気概を感じました。赤坂離宮は、世界で最後に造られた西洋式宮殿と言われているのですが、まさに宮殿建築の集大成だと思います。ですが現在圧倒的な美しさを誇るこの宮殿には、切ない歴史秘話がありました。赤坂離宮が辿る数奇な運命、僕が再現で演じさせて頂いた設計者の人生にも注目して頂きたいです!
数々の海外VIPをもてなし
西の迎賓館と称された奈良ホテル
クラシックホテルには、海外セレブの逸話があってミーハーな僕はそれだけでテンションが上がるのですが(笑)、奈良ホテルにはそれだけでなく心温まる秘話がありました。心を込めたおもてなしをするというのは、ホテルとして当然のことかもしれませんが、もしそれが戦争中だったらと想像すると、自分はそうできるか正直自信がありません。でも奈良ホテルで働いていた方々は、戦時という過酷な状況の中でも、他国も自国も関係なく真心を持ってホテルに滞在する方たちに接していました。そうした誠意は、時に国同士の絆の原点にも成りうると知りました。
これぞ日本流のおもてなし
日本伝統技術を結集させた
京都迎賓館
京都迎賓館は、見るものすべてにおぉ!と歓声が出てしまう赤坂離宮とは対照的でした。とてもシンプルなしつらえで、派手な主張はない自然と調和したデザイン。説明して頂くと、どれだけ貴重で高価なもので満ちているかを知り驚きなのですが、気持ちが穏やかになる建築でした。伺ったお話で印象的だったのは、池の鯉にエサをやるのがVIPの方たちに好評だということ。僕もニュースで見た事があります。鯉にエサなんて公園やお寺でいくらでもできるのにと思うのは、凡人の発想のようで(笑)。日々分刻みのスケジュールをこなしているVIPの方たちは、来日中はもちろん自国でものんびりと池の魚を眺めることはないそうです。くつろぎの時間という素敵なおもてなしですね。
また京都迎賓館の建設に携わった数寄屋建築の名工・升田志郎さんのお話も興味深かったです。先輩が手掛けたという四君子苑で、数寄屋建築について教えて頂いたのですが、建物のそこかしこ、いかに素晴らしいかを滞在中ずっと熱弁してくださいました。そしてわかったのは、自然と調和したシンプルな空間は、実は細部にわたり計算し尽されているということ。さまざまな伝統技法によって、ほっとくつろげる空間が生み出されるのですね。日本建築の奥深さに感銘を受けました!
こぼれ話
中山卓也さんに教えて頂いた撮影秘話、そして伝統技法のこぼれ話をお楽しみください。
テレビマン魂と役者魂で実現
中山!中山!中山!中山!
一人20役の再現シーン
これまでミステリーハンターでは、世界遺産やアウトドアなどプライベートで好きだったことを活かしてきましたが、今回は役者スイッチを入れるシーンが多かったですね。赤坂離宮の設計士・片山東熊(とうくま)、文豪・高浜虚子を演じ、そして日本初の電気街灯を見物に来た人びとになりました。街灯の場面では、僕が見物人20人に扮しました!わずか数十秒のシーンにこれだけの労力をかける…、テレビマンの情熱を感じました。いい経験でしたね。女性の着物の着付けが大変だということを実感できました(笑)。ご覧のみなさんに楽しんで頂けたのなら嬉しいです!
京都迎賓館にも用いられた
伝統技法・截金(きりかね)
京都迎賓館では、扉に施された截金の優美な美しさと、デザインに込められた想いに感動しました。そして迎賓館の装飾を手掛けた截金師・江里佐代子さんの娘、朋子さんにその技法を見せて頂き、繊細かつ根気と集中力を要する作業に感嘆しました。金箔を貼っていく技術は、まさに神業。また作品を仕上げるためには膨大な量の金箔を必要とするので、金箔を細く切る作業だけで2ヵ月くらいかかることもあるそうです。無心でやらないと手元が狂うので、虫になったつもりでひたすら手を動かしているとおっしゃっていました。僕ならこの作業だけで心折れます(笑)。截金の美しさはもちろんですが、こういった技術が現代あること、それを受け継ぐ方たちがいることが尊いと思いました。
人間国宝の截金師・江里佐代子さん、番組で截金について教えてくださった江里朋子さんの作品を間近に見ることができる展覧会が京都で催されます。
京の至宝Ⅱ 江里佐代子 截金の世界
―宙(そら)の輝きを康慧・朋子とともに―
場所:美術館「えき」KYOTO
住所:京都府京都市下京区烏丸通塩小路下ル東塩小路町 京都駅ビル内・ジェイアール京都伊勢丹7階隣接
開催:2021年1月2日(土)〜1月24日(日)
開館時間:10時〜19時30分、入館は閉館の30分前まで
※1月2日(土)は9時30分開館。百貨店の営業時間に準じ、開館時間が変更になる場合があります
※この情報は2020年12月のものです
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