日立 世界ふしぎ発見!

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2019年11月2日 よる9時から放送

第1532回

アドリア海に眠る沈没船
若き日本人学者と追う!ルネサンスの謎

ミステリーハンター

華恵 (はなえ)

1991年4月28日生まれ、アメリカ出身。6歳から日本で暮らす。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業。小学6年生の時に『小学生日記』を出版して以来エッセイストとして活躍。また現在はラジオパーソナリティ、翻訳など活動の場を広げている。主な著書は、『小学生日記』(プレヴィジョン)、『本を読むわたし My Book Report』(ちくま文庫)、『華恵、山に行く。』(山と渓谷社)、『わたしの もりを ぬけたら』作:レイチェル・ウッドワース、絵:サン・ミャオ、訳:華恵(フレーベル館)。
ミステリーハンターは今回で2回目。

沈没という悲劇を物語ると共に、歴史のロマンも宿す沈没船。世界中の海には数えきれないほどの沈没船が眠っています。そんな沈没船を年間100隻以上も調査している水中考古学の第一人者、山舩晃太郎(やまふねこうたろう)さんと共にルネサンス時代の沈没船発掘調査現場をレポートしたミステリーハンターの華恵さんにお話を伺いました。

近年注目が高まってきている
水中考古学とは?

古くから多くの船が行き交い
そして沈んだアドリア海

今回の取材で、まず私にとって新鮮だったのは、「沈没船=遺跡」だということです。海底遺跡というと、災害や環境の変化で水没した町や建造物のことだと思っていましたが、沈没船もまた、過去の人たちの生活や価値観などを知る重要な痕跡のひとつなのですね。考えてみれば、船、特に大型船は立派な建造物ですから当然のことなのですが、これまでそういった捉え方をしていなかったので、新しい見方を得ることができました。

また沈没船などの海底遺跡を調査する「水中考古学」も、ユニークで興味深い学問だと感じました。クロアチアで取材をしていた時に耳にした「船は人類が最初に造った乗り物」という言葉が印象に残っています。古代エジプト、ギリシャ、ローマ…数千年という時間を遡っても船は存在する。そして船は貴重なものも積んでいます。世界中に数多くある沈没船は、あらゆる時代を読み解く手がかりとなる!と聞いてワクワクしました。そして水中考古学は考古学の中でも比較的新しい分野なので、驚くような発見も期待されています。

日本のテレビ初取材!
ミスター沈没船・山舩晃太郎さんと
ルネサンス時代の海底遺跡へ!

そんな水中考古学の調査現場で大活躍されているのが、山舩晃太郎(やまふねこうたろう)さんです。山舩さんは、ヨーロッパからカリブ海、南北アメリカ大陸、ミクロネシアまでまさに世界中の沈没船を調査していて、日本のご自宅に戻れるのは年間2週間ほどとか。世界中の調査現場から引っ張りだこの山舩さんの驚異的な調査法は、番組でお楽しみ頂きたい見所のひとつです。まさに水中考古学の第一人者山舩さん、なのですが、ついそれを忘れてしまうほどの気さくなお人柄で(笑)。分からないことをどんどん質問してしまいました。

華恵さんが参加した調査チーム
華恵さんの隣の男性が山舩晃太郎さん

そして私も山舩さんが調査中の現場に同行させて頂き、特別に調査にも参加させて頂きました。現場はクロアチアのパシュマン島沖、ルネサンス時代の沈没船がある遺跡です。私が担当させて頂くことになった仕事は、発掘された遺物を記録し、保存すること。保存も独特でした。何百年も海中にあったものを、いきなり真水で洗ったり、長時間外気や紫外線にさらしたりすると、急速に劣化してしまうので、まずは海水に浸けて保存するのです。さらに何段階かの保存を経て、博物館へ展示できるようにしていくそうです。クロアチアの現地には今回取材をした船の遺物を展示している博物館があります。その展示物も本当に素晴らしかったです。

ヴェネツィアの人気観光船
16世紀のガレオン船を再現したもの

アドリア海に眠る沈没船の故郷
イタリア・ヴェネツィアへ!

クロアチアの海底で見つかった船は、これまでの調査から16世紀後半のヴェネツィアで造られたことが分かっています。ロッシ教授率いる調査チームには、さまざま分野のエキスパートがいます。山舩さんは船、その他にもチーム内には、美術や言語学などの専門の方がいて、それぞれの知識を集結して、水中遺跡の分析が行われています。各界のプロが集まっている現場はかっこよくて、憧れました。さらに、何百年も前の船を確実に特定するために、海底遺跡調査に欠かせない仕事をする方がいて、その方に会うためにイタリアのヴェネツィアへ向かいました。

ヴェネツィア国立公文書館
マウロさんの調査現場!

ヴェネツィアでお会いしたのは、歴史文献学者のマウロ・ボンディオリさんです。マウロさんは、膨大な古文書から調査中の船に関する記述を探すのです。古文書に検索機能はありませんから(笑)、ひたすら隈なく読み続ける…。しかも文献の多くは帳簿などの記録で手書きの筆記体、さらに貴重な歴史的資料ですから扱いも丁寧にしなくてはなりません。現場の発掘調査にも劣らず心身ともにタフな仕事だと思いました。

実はマウロさんにお会いする前に現地調査チームの方たちから、からかい半分で叱られないようにしろよと言われていて、気難しい方なのかなと思っていましたが、実際にお会いしてみると、誇り高く調査への熱い想いを持った方だと感じました。マウロさんは「私は毎日一人で文献の海の中で調査している」とおっしゃっていましたが、マウロさんの尽力により、そんなことまで?という詳細が明らかになるのです。
私にとって未知の世界だった水中考古学ですが、今回取材でお会いしたみなさんのおかけでその魅力を知ることが出来ました。番組を通して多くの方にもそれがお伝えできれば嬉しいです。

こぼれ話

華恵さんに教えて頂いたクロアチアでの沈没船取材こぼれ話をお楽しみください!

水中ならではの発掘調査
そして山舩さんの水中考古学への想い

沈没船の発掘作業は、海の中で行われるので1回の調査時間が30分、1日2回までしかできません。陸上で行われる発掘調査と比べるとかなり短いと思いますが、みなさんが潜行してほどなくすると、次々に発掘されたものが船上へと運ばれてきます。それはもうザックザックという感じで(笑)、興奮しました。ですが保存担当の私としては、貴重で繊細な発掘物を揺れる船上で丁寧に扱いながら作業を進めないといけない…。結局、作業終了までその状況にドキドキしっぱなしでした。発掘現場は許可を得た研究者しか潜れないので、山舩さんには気持ちだけでも一緒に潜ってくださいと言って頂いたのですが、例え潜れる状況にあったとしても私には無理でしょうね。ちょっと方向を変えた瞬間にフィンが沈没船に当たってしまったら、なんて考えただけで怖いです(笑)。

クロアチアの沈没船から発掘された大砲
船を特定する手がかりとなった

そして山舩さんは、カメラが回っている時もそうでない時も、水中考古学を一人でも多くの人に知ってもらいたい、その魅力を伝えたいという想いに溢れた方でした。お食事などをご一緒する機会もあったのですが、山舩さんのお話はいつでも沈没船(笑)。今後の発見への期待と同時に、水中考古学のファンが増え、後継者がもっと出てくることにも期待をしていました。さまざまな面から水中考古学の未来を考えている方だと感じました。

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