疫病、地震、噴火、台風、地球温暖化、戦争。
この世界は耐えがたいことばかりだけど、小さくても尊いこともきっとある。
それが私たちを世界につなぎとめている。
いつもと変わらないささやかな自然の営み、愛おしい風景、懐かしい笑顔、
ふと開いた画集の一枚の絵、一編の詩、美しいメロディ・・
「Tangle」というイランのアニメーション作品がある。
家族を失い、家を追われたひとりの少女が銃声と砲火から逃げる、逃げる、
無数の思い出の糸が彼女にからまる、もつれる、ついにたどり着いた国境で糸は切れる。
台詞のないモノクロームの7分に、悲しみと恐怖と絶望と祈りが込められている。
テレビ、新聞、ネットには無数のニュースがあふれているが、
自分が当事者である問題はわずかで、ほとんどの問題に対してよそ者に過ぎない。
遠い外国で起こっていることに思いを寄せる。
ここでは起きてはいない。でもそれは紛れもなく起こっていることである。
「Tangle」の少女を想うことで私たちは社会の矛盾、世界の真理に少し近づくことができる。

2020年に引き続き2021年も海外の受賞者、関係者の皆さんと一同に会することは叶わなかった。
2022年11月のコロナ状況、世界情勢を予測することは困難だが、
3年ぶりに、海外からのお客さまを安全に東京に招くことができるよう、いまはただ祈る思いである。
「おかえり」「ただいま」「ひさしぶり」「はじめまして」「よくきたね」「あえてうれしい」
皆さんに笑顔で逢える日を夢見て、2022年 24th DigiCon6 ASIA の開催を宣言します。


2022年3月24日
DigiCon6 ASIA フェスティバルディレクター
山田亜樹