ニュースの視点

ニュースの視点 午後3:00〜4:00 再放送 同日午後9:00〜10:00

事件・事故や政局、環境や教育問題、経済の動向から国際政治まで・・・。限られた時間では、伝えきれない事実や真実、捉え方があります。「ニュースの視点」では、時事問題の中から毎日一つのテーマを絞り、時にはゲストや専門家を招いたり、現場から生中継を繋いだり、TBS NEWSのキャスターが、政治部、経済部、社会部、海外特派員などの現役記者や解説委員と共に、ニュースの本質に迫ります。

2019年02月放送

2019年02月26日放送

#2553「映画が描く現代史」

ゲスト  :映画評論家 町山智浩さん
解説   :「報道特集」金平茂紀キャスター
キャスター:上野愛奈

【テーマ】
『LBJ ケネディの意志を継いだ男』、『バグダッド・スキャンダル』、『タクシー運転手 約束は海を越えて』、『1987、ある闘いの真実』など、それぞれの国の生々しい現代史をめぐる映画が次々制作され、去年から日本で立て続けに公開されています。描き方によっては物議を醸す可能性もある現代史をなぜ映画にするのでしょうか。一方、日本ではなぜ現代史や社会を風刺する作品が少ないのでしょうか。映画が現代史を描く意味について、また現代史をめぐるメディアの在り方について映画評論家の町山智浩さんと「報道特集」の金平茂紀キャスターに聞きます。

【放送後記】
アメリカ政治の現場を描いた『バイス』、『記者たち〜衝撃と畏怖の真実〜』、『フロントランナー』という3本の映画を題材に、日本にも、少なからず影響を与えてきたアメリカ政治史、そして、それを伝えるメディアの在り方について語っていただきました。町山さんはカリフォルニア州バークレイ在住、金平キャスターはJNNワシントン支局長、JNNアメリカ総局長(ニューヨーク)として、アメリカ取材をされていたこともあって、映画の見どころはもちろんですが、2人の経験談も興味深いものでした。

『バイス』は、ネオコンの中心的人物の1人で、2001年からスタートしたブッシュ政権下では、実権を持つ副大統領とされたディック・チェイニーの伝記的映画です。ブッシュ政権時に、ワシントン支局長としてホワイトハウス取材をしていた金平キャスターは、チェイニー副大統領の印象を「異様な怖さ」があったとおっしゃっていましたが、『バイス』の中でも、イラク戦争開戦を陰で導いたチェイニーは、怖いものなしの実力者として描かれています。ただ、そんなチェイニーが若いころから頭が上がらず、チェイニーを裏で操っていたとされるのが妻リンだった?というオチもあるなど、『バイス』の魅力の1つは、非常に風刺のきいた作品であることだと思いました。アダム・マッケイ監督は、コメディ劇団の出身で、1990年代には、スパイスの効いた政治風刺が日本にもたびたび紹介される人気番組「サタデーナイト・ライブ」にレギュラー脚本家として参加していた人物です。チェイニーの強力な政治手腕もあって、ブッシュ政権は「イラクには大量破壊兵器がある」という世論形成に成功し、アメリカはイラクと戦争します。この大量破壊兵器の存在に疑いを持ち、真実を明らかにすべく取材を続けるナイト・リッダーの記者たちを描いたのが『記者たち』です。この2つの作品について町山さんは、政府や権力、言論の自由に挑戦していこうとするアメリカ映画の可能性を評価されていました。

番組で取り上げたもう1つの作品『フロントランナー』は、1988年の大統領選挙で有力候補とされたゲイリー・ハートが女性スキャンダルで失速、脱落していく過程を描いています。大統領選とジャーナリズムとの関係を描いた作品です。この作品について金平さんは、スキャンダリズムへの批判と、アメリカ・トランプ大統領への皮肉と評していました。現代史を見ると歴史が分かると語る、『記者たち』のロブ・ライナー監督の言葉にも通じる点があると感じました。(上野愛奈)

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2019年02月06日放送

#2552「“「イスラム国」後”のシリア」

ゲスト  :フォトジャーナリスト 安田菜津紀さん
キャスター:上野愛奈

【テーマ】
アメリカのトランプ大統領は『シリアでの「イスラム国」は撃退した』として、駐留米軍の撤収を表明。しかし、その後も自爆テロで、米軍の兵士を含む20人が死亡するなど、各地でテロが続いています。 内戦から8年、“「イスラム国」後”のシリアの行方はどうなっていくのか。そして今も厳しい生活を強いられている避難民たちの生活はどうなっていくのか。シリアを取材し続けているフォトジャーナリストの安田菜津紀さんに聞きます。

【放送後記】
安田さんが今回取材したのは「イスラム国」が“首都”と呼んでいたシリア北部の「ラッカ」やクルド人部隊と「イスラム国」が激しく争った「コバニ」。ラッカでは今もビルが崩れ落ちたままで、不発弾の撤去作業も続いています。「米軍撤収表明」は、これまで米軍と連携し「イスラム国」との戦いで前面に立ってきたクルド人からは「自分たちは使い捨てだったのか」という声も聞かれたそうです。また、クルドを敵視する隣国トルコとの関係などもあり、今後も不安定な状況が続くシリア情勢。国民の2人に1人が住む場所を追われるという信じられない状況の中、「イスラム国」が去った後も、経済状況やインフラの破壊などにより、今も自分の故郷に戻ることができない方々が多くいます。シリアに関する報道が少なくなりつつある今こそ、支援の手が必要です。(上野愛奈)

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2019年02月05日放送

#2551「高潔な人々の国・ブルキナファソで見たもの」

ゲスト  :フォトジャーナリスト 久保田弘信さん
キャスター:大鋸友紀

【テーマ】
西アフリカの国・ブルキナファソ・・・と言ってもほとんどの人には馴染みのない国では?世界で最も貧しい国の一つとして知られるこの国ではマラリア、水、医療など多くの問題が山積みです。近年は大きなテロも問題となっています。世界各地の紛争地域や難民取材を続けるジャーナリスト・久保田弘信さんがこの国で見たものとは何だったのでしょうか?日本ではなかなか報じられることがないブルキナファソの今を伝えます。
【放送後記】
大きな紛争やテロがあるわけではない国となると、つい見逃されてしまいますが、5歳までの死亡率が9%、マラリアが大流行しているにも関わらず医師の数は10万人に対し5人だけ。これらの数字だけで、危機迫る状況がうかがい知れます。
こういった現状を大きな事件やニュースが麻痺させているように思う所もありますが、そこを一旦立ち止まり、問題を知ること、認識することを積極性をもって行わないと助けが必要な状況がどんどん見過ごされていってしまいます。
今回取材したブルキナファソは、まさにそんな国なのではと感じました。そして発展の途上にある今だからこそ、貧富の格差拡大を少しでも抑制しテロを未然に防げるチャンスなのだと思います。
日本食に欠かせないゴマの輸入相手国第一位(財務省貿易統計 2017年)、そして化粧品として身近なシアバターの産地ということで意外にも身近なブルキナファソ。これだけ身近であると、私たちは継続可能な支援を行える「当事者」と言えるのではないでしょうか。(大鋸友紀)

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