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2018年04月放送

2018年04月26日放送

#2532「見て見ぬふりをする社会〜傍観者効果とメディアの行方〜」

解説   :「報道特集」金平茂紀キャスター
キャスター:上野愛奈

【テーマ】
第70回カンヌ国際映画祭で、最高賞のパルムドールを受賞した「ザ・スクエア 思いやりの聖域」が公開されます(4月28日公開)。モダン・アートの世界に生きる人々を通して現代社会が抱える問題を、ユーモアを交え鋭く描いた作品です。日本にも蔓延する“見て見ぬふりをする社会”を、この映画のテーマである「傍観者心理」、「恥と罪の意識」、「メディアとクリック・エコノミー」といった視点から考えます。また、映画のリューベン・オストルンド監督の単独インタビューの模様もお伝えします。

【放送後記】
映画の主人公は、有名美術館でキュレーターを務めるクリスティアン。彼の美術館の次回の展示作品「ザ・スクエア」は、四角で囲まれた枠の中では、すべての人が平等の権利を持ち、公平に扱われるというものでした。私生活の中で財布を盗まれてしまった彼は、犯人探しの過程で、偏見に満ちた行動を取ってしまう。同様のことを「ザ・スクエア」のPR動画の配信でも起こしてしまい、クリスティアンは謝罪会見をすることになります。知性のある人たちによる「ザ・スクエア」と相反する言動を、ブラックジョークを込めて描いていきます。知的エリートたちからしみ出す偏見や差別。そして、現前に起こるそれらの行為に、傍観者となってしまうことへの皮肉が描かれ、見る者の心理を刺激します。
リューベン・オストルンド監督の出身地でもあるスウェーデンでも、少数民族や移民など、マイノリティの存在は大きな社会問題となっています。去年公開された映画『サーミの血』もスウェーデン少数民族への差別がテーマでした。
金平さんによるオストルンド監督へのインタビューでも、現代社会における傍観者効果(見て見ぬふり)の問題が語られていました。この傍観者効果を助長するマスメディアの存在は、以前から指摘されていることではありますが、それを批判してきたエリートたちが、実は無意識に差別に加担してきたかもしれないという皮肉にハッとさせられました。(上野愛奈)

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