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Vol.6

写真法医学監修・上村公一先生インタビュー 後編

『アンナチュラル』法医学監修の上村公一先生(東京医科歯科大学)に、ドラマ制作との関わりや法医学の現状などについて、お話を伺いました。今回は後編をお送りします。

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Q:ドラマでキツイ、クサイ、キケンなど「7K」の職場と言われていますが、実際は?

そんな感じかもしれません。解剖時間は一体2〜4時間ですが、交通事故など、傷が多いと6時間かかることもあります。腐乱死体となるといくら石鹸で手を洗っても、その日一日くらいは匂いがとれませんね。1話で六郎君が解剖室で気分が悪くなるシーンがありましたが、実際、慣れない警察官が立ち会って倒れてしまうこともあります。
キケンは本当に危険な仕事です。病理解剖と違って事前に感染症の有無がわかっていることが少ないです。そのため「もしかしたら感染症を持ったご遺体かもしれない」と疑い、最初から感染症があるという前提で常に作業をします。ドラマでもゴム手袋2枚の上に軍手をしたり、マスクとゴーグルで完全防備していて、病院の手術シーンとは大きく違いますよね? あれは針やメスなどのケガによる血液感染や空気感染から自分の身を守るためです。

Q:実際に解剖して意外な死因がわったことはありますか?

予想と違う死因が見つかることはよくあります。最近は子どもやお年寄りで虐待が発覚するケースは多いですよ。持病による自然死と思っていたのが、解剖したら肋骨が折れていたことによる呼吸不全、首を絞められていたことによる窒息とか。薬物中毒死は解剖のみでは全くわからないので、血液や尿の薬物検査結果を待って判断します。また、考えてもいなかった肺炎が病理組織検査で見つかって、それが死因だったということも。基本的に法医学は疑うことが非常に大切。疑わなければ種々の検査もしないので見逃しにつながってしまうんです。
死因を突きとめることで真犯人を見つけたり、逆に冤罪が証明されることもあります。特に小さな子どもが突然死した場合、死因がわからなければ、なかには自分を責めてしまうお母さんもいます。そんな時、死因を調べて教えてあげることで、少しは助けてあげられるのではないかと思いますね。

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Q:UDIのような専門機関ができたら、社会は変わる?

今の司法解剖の一番の問題は、解剖結果が刑事裁判以外の場で活かされていないことでしょう。もしもUDIのような専門機関ができて全国のデータが一元化されて活用されたら、病気や事故、自殺、虐待、中毒などの動向がわかって予防のための対策にもつなげられます。メリットは計り知れません。
ただ、そのためには法医学だけではなく、臨床医学つまり病院との連携も必要になります。治療や診察も大事ですが、人が亡くなるところまで医療制度に組み込まれるのも一つの方法でしょうか。その過渡期として、UDIのように半官半民みたいな公的機関で、広く解剖を受け入れていく必要があります。実際、欧米には解剖、病理組織、薬物分析、DNA分析、臨床法医学などさまざまな部門が集まった総合的な死因究明研究所があって、協力して死因究明にあたっています。

Q:専門家からご覧になって、このドラマの魅力は?

UDIラボという斬新な設定の面白さと、解剖医の姿勢がブレずにきちんと描かれているところがいいですね。遺族に共感もしますが、それだけではない。社会の公正を大事にして、ご遺体から事実を見つけ出そうとする姿に好感が持てます。

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