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手作りフリップ

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9月28日放送

国連の限界 安保理「拒否権」とは?「総会の決議に大きな権限を」との声も改革実現は難しい現状が…

国連の機能不全はたびたび指摘されてきましたけれども、改めてアメリカなどの母体国による拒否権などを始めとする、国連の仕組みをまとめたいと思います。

■「平和と結束」 国連の仕組み

第二次世界大戦後の1945年に設立された「国連=国際連合」。そのエンブレムは、「平和」の象徴とされる「オリーブの枝」に包み込まれる形で世界地図が描かれています。どの国にも属さない北極点を中心に描かれ、“結束”の象徴とされています。

その「世界の平和」を守るため、国連の中でも唯一、強い権限が与えられているのが「安全保障理事会」です。アメリカ、フランス、イギリス、中国、ロシアの5か国からなる常任理事国と、任期が2年で、毎年半数が選挙で改選される10か国の非常任理事国で成り立っています。

【非常任理事国(2年)】
・アルジェリア
・デンマーク
・ギリシャ
・ガイアナ
・パキスタン
・パナマb ・韓国
・シエラレオネ
・スロベニア
・ソマリア

特定の国に対する▼経済制裁や▼武力行使といった強制的な措置をとることができるのは、この安保理での決議が通った場合だけですが、5つの常任理事国には特別に「拒否権」が与えられ、1か国でも反対すれば決議は通りません。

■「オスロ合意」以降21回の「拒否権」行使

国連には、193の加盟国全てがそれぞれ1票の投票権を持つ場もあります。それが「総会」で、過半数の賛成によってさまざまな議決をすることができます。

例えば、▼ガザの停戦や、▼ウクライナからのロシア軍撤退を求める決議も、圧倒的な賛成多数で採択されてきましたが、安保理とは違って“強制力”はなく、国連としての意思表示にとどまるのが現状です。

一方、強制力を伴う安保理では、イスラエル・パレスチナ問題に関して、イスラエルの後ろ盾であるアメリカが「拒否権」の行使を繰り返しています。

今回のガザ攻撃が始まった2年間だけでも、6回、停戦決議案に対する拒否権を発動。パレスチナ国家の建設に道を開く「オスロ合意」が結ばれた1993年以降だと、パレスチナ自治区へのイスラエルの入植活動をやめるよう求める決議案などで21回、行使しています。

一方、ウクライナ侵攻をめぐっては、停戦決議案にロシアが2度、拒否権を使っています。

■「拒否権」はなぜ認められているのか… 「国際連合」機能不全の反省

大国が自分勝手に使っているようにみえる「拒否権」は、そもそもなぜ認められているのでしょうか。

大きな理由とされるのが、今の「国際連合」の前、1920年につくられた「国際連盟」が機能不全に陥り、第二次世界大戦を防げなかったことへの反省です。

まず「国際連盟」には、大国アメリカが参加していませんでした。また「全会一致」を原則としたため、“何も決められない”状態となり、満州事変やナチス・ドイツの再軍備などを止めることができないまま、日本もドイツも相次いで脱退。第二次大戦へとつながったことを受け、戦後にできた「国際連合」では、戦勝国側の5大国に「拒否権」を与えたのです。

しかし戦後80年を経て、パレスチナ問題やウクライナ問題で、この5つの安保理常任理事国だけが持つ「拒否権」の矛盾も露わになる中、今回、石破総理も国連総会の演説で「常任理事国の拡大」を訴えました。ただ、こうした安保理改革には常任理事国全ての賛成が必要で、ハードルが高いのが現状です。

■「総会決議により大きな権限を」 国連改革の方向性

現実的な国連改革の方向性はないのでしょうか。国連の中満泉事務次長は、「ウクライナやガザをめぐる安保理での度重なる機能不全の中で、加盟国では総会の決議に、より大きな権限を与えるべきだという声が強まっている」といいます。

こうした改革もすぐには実現が難しい一方で、現状でも「総会は国際社会の声を表明し政治的な圧力をかける場としての意義は十分持っており、もっと効果的に活用すべきだ」と指摘しています。

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