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手作りフリップ

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9月21日放送

襲われると“死亡率24%” 熊被害が過去最悪ペースで急増 求められる「個体数の管理」と「出没させない取り組み」とは

各地でクマの被害が増えている背景には一体なにがあるのか、そしてできる対策はあるのでしょうか。

■死傷者は過去最悪と同ペース…背景にクマの増加

秋は、冬眠前のクマが大量の餌を求めて活発に活動するため、最も注意が必要な季節です。

日本には、2種類のクマが存在します。北海道にいる「ヒグマ」と、本州・四国にいる「ツキノワグマ」です。

ヒグマは大きい個体で、立ち上がると3m近く、一撃で馬の首を折るほどの怪力を持っています。また足の早い個体だと100mを6秒で走ることができます。また、ツキノワグマも100mを8秒で走ります。

襲われた場合の人の死亡率は、ヒグマの場合は24%、ツキノワグマでは2.3%となっています。

2025年4月~8月末にかけての死傷者は69人。ドングリの凶作で過去最悪だった2年前と同じペースで増えています。

では、今なぜクマの被害が急増しているのでしょうか。一番の理由は、クマの数が増えているからです。

2018年度の環境省の調査では、地図の赤色の地点で、新たにクマが生息していることが確認されました。四国を除き、多くの地点で増えていることがわかっています。

ヒグマは30年間で倍以上に、ツキノワグマも分布域が1.4倍になりました。現在、本州で唯一クマがいないのは、千葉県だけです。一方で、九州では既に絶滅しています。

では、なぜこれほどまでにクマが増えてしまったのでしょうか。

ツキノワグマの場合は、大正~昭和初期にかけて、毛皮や漢方薬に使われる熊の胆などを目的に捕獲が進み、絶滅が危惧された地域もありました。

ところが1999年、クマの新たな保護管理制度が始まったことに加えて、人口減少、高齢化によって耕作放棄地も増え、餌が豊富になったことなどから、急激にクマの数が増えてしまったんです。

こうして、人の生活圏の近くに生息域が広がったことで、人への警戒心が薄れ、これまでの生態とは異なる“アーバンベア”として、住宅街などにも出没するようになりました。

■求められる「個体数の管理」「出没させない取り組み」

もしクマに遭遇してしまった場合、私達はどうすればいいのでしょうか?

まず、クマが近くにいる場合は、クマを見ながらゆっくりと後退してください。このとき、背中を見せて走って逃げてはいけません。

そして、至近距離で突発的に遭遇してしまった場合は、うつ伏せになって、両腕で顔や頭を覆い、できるだけ致命傷を防ぐことが重要です。

では、そもそものクマ被害を防ぐためにはどのようなことが求められるのか。兵庫県立大学の横山真弓教授は、二つ挙げています。

一つは、個体数の管理です。街に出てきたクマだけではなく、民家周辺に住む個体を捕獲して、数を減らす必要があると指摘しています。

そしてもう一つは、出没させない取り組みです。クマの好物である柿や、餌となるごみを適切に管理したり、農地に電気柵を設置したりすることが必要で、こうした二つの対策を同時に進めることが重要だといいます。

被害が相次ぐ中、国は2024年、クマを保護の対象から外して、指定管理鳥獣に加えました。シカやイノシシと同様に集中的に捕獲をして、数を管理していくという方針に変更したのです。

また9月からは市町村の判断で、市街地などでも猟銃を使用することができるようになりました。

昔話では、金太郎とクマが相撲を取るなど、日本人にとってはなじみが深い存在ですが、人とクマが共存できる知恵が今、求められています。

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