和歌山県・白浜の動物園の4頭のパンダが、来月、すべて中国に返還されることが発表され、別れを惜しむ家族連れなどが押し寄せています。東京・上野動物園にいる2頭のパンダも来年2月には返還期限を迎えます。
パンダを外交ツールの一つと位置付けてきた中国。現状の日中関係をにらみつつ、どう対応するのでしょうか。
■なぜ白黒?パンダのかわいさの秘密
パンダの人気の高さはやはり「見た目」にあります。その魅力について、少し考えてみました。
生成AIで作った全身「真っ白なパンダ」はシロクマのようで少し物足りません。両足と耳、目の周りも黒くすると、一気にかわいらしさが増しませんか?
野生動物として、なぜ白黒模様になったのでしょうか。
▼生息地である中国・四川省の山は、冬の時期、水墨画のような雪景色になります。そこに溶け込んで身を守るのに、都合が良いということです。
さらに、▼耳が黒いのは、冷えやすい体の先端が太陽の熱を吸収しやすくするためです。そして、▼目の周りが黒いのは、模様の違いで互いを見分けるためなどと考えられています。
パンダは希少動物で国際取引が禁じられているため、1990年代以降は繁殖目的で貸し出されるようになりました。費用はオスとメスのつがいで年間100万ドル(日本円で1億5000万円ほど)といわれています。
■パンダ外交と“ゼロパンダ”
中国のいわゆる「パンダ外交」の始まりは、1941年のアメリカへの贈呈でした。日中戦争のさなか、アメリカの支援をとりつける狙いがありました。
日本に初めてパンダがやってきたのは、1972年、日中国交正常化の年です。“友好の証”として送られました。
中国から日本にやってきたパンダの数ですが、日中関係が良かった80年代には10頭も来日しています。その後、繁殖目的となり、数が絞られたこともあって減少しました。
2011年に上野動物園に貸し出されたのが、最後の2頭となりました。
国内で赤ちゃんが産まれることはあったのですが、2012年の尖閣諸島をめぐる対立以降、日中関係は冷え込み、2013年に習近平体制になってからは1頭も来ていません。
そして2025年6月、和歌山・アドベンチャーワールドの4頭が返還され、2026年2月には、東京・上野動物園にいる最後の2頭も返還期限を迎えます。このままいくと、実に54年ぶりに日本からパンダがいなくなってしまうのです。
■習近平氏の新たな戦略
一方、東京女子大学の家永真幸教授は「習近平氏は世界各国でパンダ外交をより“戦略的に多角化している”」と指摘します。
パンダが貸し出された国々は、習近平体制以前は14か国でしたが、習近平体制になると、新たに8か国が加わっています。
近年はアジアやヨーロッパの国々にも広がり、これは習氏が進める経済圏「一帯一路」とも重なります。
家永教授は最近のパンダ外交について、「アメリカと対抗できる経済圏をつくることを目指す国際戦略の表れ」と指摘しています。
今後、日本に新たなパンダがやってくるかどうかについては、「日本政府の対中政策や、民間のパンダ歓迎ムードなどを見極めながら判断されるだろう」としています。
中国のパンダは単なる「客寄せパンダ」にとどまらず、外交官としての任務も背負わされているようです。
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