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2009年1月24日(土)よる7時スタート(初回2時間スペシャル)

インタビュー

Vol.03 横浜市安全管理局 特別高度救助部隊 高橋一夫 隊長

スーパーレンジャー隊 (SR) とは何か教えてください。

私たち横浜市安全管理局では 『スーパーレンジャー』 という呼び方をしていますが、これは難易度が高い人命救助に特化して活動する 『特別高度救助部隊』 のことです。
自治体ごとに呼び方は変わり、東京消防庁は 『ハイパーレスキュー隊』 と言います。そのため一般的には “レスキュー” という呼び方のほうが馴染みがあるかもしれません。
通常の人命救助の際は、各所属のレンジャー隊が出場 (※ 注:消防の場合は、現場に出向くことを “出場” という) するのですが、大災害や大事故または特殊な要因があるケースの場合は、高度な技術と救助資機材を持った私たち 『スーパーレンジャー』 が担当します。
日本で一番初めに消防救助隊を作ったのは横浜市だと言われています。
設立の際、自衛隊の陸上レンジャー部隊から、技術・精神を学びました。自衛隊と消防は目的は違えど、隊員に必要な体力・気力・誇り・不屈の精神などいわゆる 『レンジャー精神』 は一緒であるということから、これらが備わった救助隊員を、横浜市では 『レンジャー』 と呼んでいるのです。
『スーパーレンジャー』 や 『ハイパーレスキュー』 など呼び方は違えど、根底にあるのは市民の皆様の命と安全を守りたいという熱い使命感と奉仕の精神です。

スーパーレンジャー隊の主な活動内容を教えてください。

先述したとおり、通常のレンジャー隊では対応困難な大規模または特殊な事故・災害時に出場します。
また、それら本来の出場要請がかからないときは、横浜市内で日々発生する事故・災害の救助活動応援として、各所属のレンジャー隊の支援にまわっています。
たとえば、火災現場などで救助活動を行う際、「早く助けたい」 という気持ちからつい安全が不足するような行動をとってしまうこともあります。
そんなとき、私たちがレンジャー隊の安全を確保したり、救助活動がスムーズに行えるよう各種のサポートを先回りして行うのです。
私たちスーパーレンジャー隊は、元々消防隊やレンジャー隊だった者の集まりなので、現場で何が必要とされているのかを、充分解っています。
自身が経験してきたさまざまな事例を元に、危険を事前に察知して防止したり、必要になるであろう資機材を、一回りも二回りも先んじて用意できるような、きめ細かいフォローが求められています。
またそれができる能力がないと、スーパーレンジャー隊員にはなれません。

通常のレンジャー隊より数倍も過酷な訓練を経てまで、なぜスーパーレンジャー隊を目指すのですか。

私自身が若い頃、各隊を経てレンジャー隊に配属になったとき、人命救助の最前線にいるレンジャーの仕事に、非常に大きいやりがいと魅力を感じました。
年月を経て、レンジャー隊の隊長を任命されたときに、次は最上ランクのスーパーレンジャー隊の隊長を務めたいと思ったのです。それは、もっと高い知識と技術を身につけて、人々の安全を守りたいという純粋な気持ちと、トップの集団に認められたいという向上心からです。
つまり消防の組織のなかでさまざまな体験をしながら、一歩一歩上を目指してキャリアを積み、レンジャーの到達点である今のポジションに辿り着いたという感じですね。
しかし若い世代、たとえば現在スーパーレンジャー隊で一番若い秋田真澄隊員 (26歳) などは、「スーパーレンジャー隊員になりたい」 という動機で消防職員になったと聞いています。初めからスーパーレンジャー隊という目標を持って消防職員になっている。だから指導していてもスポンジに水が染み込むように、技術も知識もどんどん吸収していくのを感じます。
これも 『スーパーレンジャー』 という存在が、一般の生活に浸透してきたという証拠でしょう。
今、レンジャー隊にいる若い隊員は、みんなスーパーレンジャー隊へのキャリアアップを目指しているのを感じます。

通常の消防職員より、求められる能力も高く、課せられた使命も重いスーパーレンジャーという立場は、プレッシャーになりませんか?

スーパーレンジャー隊になるということは、それらのことが求められるということですから、それがプレッシャーになるようでは、この仕事は務まりません。
また、選ばれた隊員しかなれないポジションですから、模範でなくてはならない。いわば消防組織の指導的立場であると、私は認識しています。
現場で活動するにしても、私たちの一挙手一投足を市民の皆さんはもちろん、周囲の消防職員も見ているのです。行動はもちろん、服装も装備も不備があってはならない。
消防組織を代表して、模範となる行動を日々継続して示せることに喜びを感じ、それを誇りに思える人間でなければ、スーパーレンジャーではありません。

今回、『RESCUE〜特別高度救助隊』 というドラマのモデルになったことをどのように感じますか?

スーパーレンジャー隊をはじめ、横浜市の消防組織全体を取り上げてくれていることに、一職員として喜びを感じています。
私個人の感想としては、プロデューサーの方や脚本家の方から、「火災現場は怖くないのか」 とか 「何を考えて仕事をしているのか」 などの質問を受けて、自分の消防人生を振り返る良いきっかけをもらったように思います。
消防職員になって今まで、プロ意識を持って職務を遂行してきましたが、とくに自分の内面と向き合ったことがありませんでしたからね。
「怖くないか」 という質問に関して言えば、普段はまったくそんな気持ちに気付かず活動していますが、怖いですね、やはり。
災害規模の大小ではなく、命の危険は常にありますから。
規模が小さくても危険要因の多いケースもありますし、ましてそんな現場に私が隊員を送り込むわけですから、責任を負う怖さもあります。
現場では常に私が活動方針を決定し、隊員に指示を出すのですが、考える時間はほんのわずかしかありません。
『果たして自分が出した指示は正しかったのか』 という自問自答は常にありますし、危険な場所へ進入していく隊員の命、果ては彼らの家族の生活まで私が負うわけです。
慎重を期しても、災害はどんな展開を見せるかわかりません。
そういう意味では、やはり怖いです。
ドラマ制作に関わらせていただいたことで、スーパーレンジャーの意義や存在価値、そして職務を遂行する自分の気持ちを再認識することができたと思います。

隊員の方が 「高橋隊長の言うことは間違いが無い。だからどんな命令にも従える」 と言っていました。部下と強い信頼関係を結ぶために隊長として努力していることを教えてください。

難しい質問ですね。
現場ではもちろん普段の勤務中でも、隊員一人ひとりの様子に気を配って、個々の状態を知ろうという努力はしています。具体的には、自分がどんなに忙しくても、求められれば必ず話を聞くことを心がけていますね。
また出場した後には、現場での救助活動において検討すべき事案をみんなで話し合う機会を設けます。いわゆる反省会のようなものです。
現場で状況を判断し指示を下すのは私ですが、その指示に対して若手隊員から 「こういう方法もあったのではないか」 と意見もでます。しかしそういう意見も出しやすい関係でいたいと思っているんです。
あくまで隊長と隊員であり、明確な上下関係があるのですが、その関係を越えて意見や考えを自由に交換できる隊でありたいです。

消防職員を20年以上続けてきて、今までで一番うれしかったことを教えてください。

小さな女の子が、自転車のチェーンに足の指を挟んでしまった事故がありました。
通常でしたら、チェーンを切って処理してしまうのですが、よく見ると自転車の後輪を外せばチェーンを切らなくても救助できることに気がつき、そのように対処しました。
結果的に足の怪我も大事には至らず、それでいて自転車も元通りに修復できたんです。
女の子にとても喜ばれ、感謝されました。
事故としては本当に小さなレベルかもしれませんが、人を助けるというのはこういうことかなと思った出来事です。

人気アイドルの中丸雄一さん、増田貴久さんをはじめとする、人気の若手俳優が集結したドラマですが、スーパーレンジャー役のために訓練に取り組む彼らをどのように評価しますか。

何度か事前の訓練に立ち会っていますが、一本のロープに身を預けて渡っていく 『ロープブリッジ渡過』 を、ずいぶん上手にできていて驚きました。
消防に入ってきたばっかりの職員の場合でも、うまく出来ないことが多いんですよ。
細いロープの上に身体を預けると、大体ひっくり返ってしまい、初日はなかなか渡れないものです。
それを中丸さんたちは、スッとやってしまった。
バランス感覚をはじめとする身体的能力の高い俳優さんが揃っていると思いました。
それにコツを掴むカンにも優れていて、もうロープブリッジ渡過を 「得意です」 と宣言している人もいるほどです (笑)。彼らもまさしく俳優のプロフェッショナルですね。

では実際に中丸さんたちがスーパーレンジャーの候補生だとしたら、全員合格でしょうか?

もっと総合的に見ないと判断できませんが (笑)、筋は抜群にいいと思いますよ。

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