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2006年07月27日

　今年は「プール熱大流行」と言われていますが、本当にそうなの？

今日は泉貴子が担当しました

＜プールシーズンを前に気になる記事を発見！＞
まもなく梅雨明けで夏本番！
いよいよ「プールシーズン到来！」と、
プールを楽しみにしているお子さんも多いと思いますが、
最近、気になるニュースを多く見かけるようになりました。それは
「プール熱、大流行の兆し」
という記事です。多くの新聞でこのような見出しが出され、
子供を中心にプール熱が大流行の恐れと書かれています。
子供を持つ親にとり、気になることと思い。実態を調べてきました。
まず、プール熱とはどんな病気なのか、
小児科医・みやクリニック医院長「龍みやこ」先生に伺いました

＜プール熱ってどんな風邪？＞
正式名称は咽頭結膜熱（いんとうけつまくねつ）という病名です。（咽頭：のど）
アデノウイルスというウイルスにより引き起こされる夏風邪の一種で
５歳以下の子供が主に感染します。症状として特徴的なのは、
３９度近くの「高熱」、「喉の痛み」、「結膜炎」の３つです。

ちなみに、「プール熱」という名前の由来は、１９２０年代の欧米で、
当時この病気が、プールで感染することが多いとされたために名づけられ、
日本では１９５０年代に定着しました。　

＜本当に「プール熱」が今年大流行しているの？＞
新聞の記事等は、過去１０年で、患者数が最高とされた２００４年を上回り
２００４年の１．７倍のペースで感染者数が増えていると報じているのですが、
実際のところはどうなのか、国立感染症研究所・感染症情報センターの
「安井よしのり」先生にうかがいました。

　　プール熱が大流行とか、過去最大の流行と言うのはおかしい話です。
確かに、プール熱感染者の「報告数」は増えて、過去１０年間で最大では
ありますが、なぜ数が増えたか、その理由を考える必要があります。
２０００年頃から、プール熱のウイルスに感染しているかを、簡単に診断できる
診断キットが開発され、病院などで簡単に検査、診断ができるようになったことが
大きく関係しています。つまり、以前は夏風邪で片付けられていた患者もプール熱と
診断されるようになり数の上では「患者の数」が増えたんです。
だから、そもそも、過去十年間では、検査方法が違うわけで感染者の
「数の比較」をすること自体ナンセンスなんです。

なるほど。感染者が増えているのではなくて、
プール熱と「診断される」患者が増えたということだったんですね。
さらに、安井先生はこのように話されました。

診断キットの登場で、簡単に、すぐ患者が診断されるようになり、
急激にプール熱と診断される患者の数が増え、
ここ数年、マスコミが注目しプール熱を取り上げられる機会が増えました。
その結果、親や医師の間で、プール熱の認知度が更に高まって、
診断キットがより普及し、積極的に検査をするようになっています。

検査キットの普及とマスコミの報道が相乗的に関っているのですね。
そんな中、今年の大流行の真相については、安井先生は次のように話されました。

特に今年は、ある通信社が５月半ばに「プール熱感染者過去最大」と報じたのを
きっかけに新聞などで盛んに取り上げるようになり、
それが更に報告数の増加に拍車をかけています。
つまり、マスコミが大流行と報じれば報じるほど、感染者の数が増える
カラクリなんです。しかも、きっかけとなった記事を書いた通信社の記者は
　私から直接説明を受けたにもかかわらず、
　　誤解を生むようなセンセーショナルな書き方をしたんです。

これは問題ですね。安井先生はお怒り気味でした。
そこで、今年１年にプール熱に書かれた新聞記事について調べてみると、
通信社の記事が書かれた日を境に、プール熱の新聞記事が急激に増え、
１月から記事が出る五月半ばまでは、わずか１０件程度だったのが、
その後２ヶ月で１００件以上となっていました。
ひとつの記事をきっかけに誤解を招きかねない報道が増えてしまったようです･･･

＜プールだけが感染源ではないのに、プールが悪者に･･･＞
お話を聞き、大流行ではないことが分かり、一安心ですが、
それでは済まないという人たちもいます。
都内のスイミングスクールからはこんな切実な声が聞こえてきました。

普段は騒ぐことではないんですが、これだけメディアで騒がれると、
　「プール熱＝プールが悪人」みたいに思われ、仮に１件感染が起きたものなら、
尾ひれが付き、まるで１０件位感染かのように騒がれてしまいそうで、
非常に心配しています我々は地元に根ざした、チェーン店のないクラブで、
近所の子供相手に長年経営していますが、このように騒がれているときに、
感染者が出ると、一時の悪い印象が死活問題になってしまいます。

今年は大流行と書かれ、過剰な反応が起きるのではと心配されていました。
また、「プール熱＝プールの感染症」と思われがちですが、
安井先生は次のように話しています。

プール熱がセンセーショナルで言い易く、マスコミ、医者、家庭でも使っていますが、
そもそも、プールだけで感染するわけではありません。
感染経路としては、プールを介してより、くしゃみなど飛沫感染や
患者が触ったものを触るだけで感染する接触感染の方が多く、
プールだけを目の敵にしても仕方がないのです。

また、先程の、みやクリニックの劉先生の話でも、
・プールシーズン前の３月から６月の間にも患者の数が増えている
・感染した子供はプールには入っていないと答えることが多い
などの理由もあり、プールに限らず、人の多いところで感染する方が多いのに、
「プール熱」の名前に引っ張られ、知るべき事実が忘れられているとのことでした。
名前の持つ怖さですね、一方で、この「プール熱」自体、
そもそも怖い感染症なんでしょうか？
たしかに、学校伝染病で、軽視してはいけない病気ではありますが、
安井先生はこの様に話していました

＜そもそもただの夏風邪　～皆かかるもの。神経質にならないで～＞
　アデノウイルスは非常に感染力の強いウイルスで、抗生物質も効きません。
感染には、対処療法以外は効果的な対策はありません。
対処療法とは、高熱には解熱剤、喉の痛みには鎮痛剤、結膜炎には目薬などの
対処をすることですが、結局的には安静にして、
自然に治るのを待つしかありません。
そもそも、このウイルスには、大人になるまでに人は必ず感染するもので、
一度感染することで免疫をつけ、二度とかかららなくなります。
高い熱は出ますが命を落とすことは少なく、はしかのような危険性も弱く、
かかってはいけない病気だとは考えず、親御さんも自身が経験したからこそ、
必要以上に心配しないで欲しいと思います。

私も、安井先生も、皆かかってきた、いわば通過儀礼のようなものなので、
あまり恐れず、適切な処置をして安静にしていれば問題はないと話していました。
「大流行」と「プール熱」という言葉に引きずられ、
危険な病気だというイメージをもたないで欲しいと思いました。
繰り返しになりますが、
プール熱は流行していません。
プールだけで感染する病気でもありません。
誰もがかかり、免疫がつき二度はかからない病気なので、
必要以上に心配しないでください。
そして、我々メディアは正確な情報を伝え、余計な不安をあおることはしないことを
再確認しないといけないと思い知らされました。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　担当ディレクター：　生駒　佑人