写真は7月10日、午前7時過ぎの東京都日野市の京王線南平駅前の様子です。

日野市の馬場弘融(ひろみち)市長がマイクを持って通勤の市民に訴えています。
いったい市長は何を訴えているのか?実は日野市では今年の10月から、ごみの出し方が大幅に変わることになっているのです。
日野市はこの数年、ゴミの中に資源となるゴミが含まれる割合、リサイクル率が多摩地区でワースト1です。また一人当たりの燃えないゴミの量も
同じく多摩地区でワースト1。さらにダイオキシンの排出基準をクリアするため、炉の改修工事が必要となり、この10月から二つの炉のうち、
一つを停止しなければならなくなりました。このままゴミの量が減らないと、燃やせない分を他の自治体などに委託することになり、
お金がかかってしまうのです。
そこで日野市では昨年の春から、今年の10月に向けて、ゴミの改革を市民に大々的に訴えてきたのです。
馬場市長は語ります。
「ゴミをできれば半分に減らしたい。
これまで行政のスタンスはどうぞ自由に捨てて下さい。全部だしたものは引き取ります、というスタンスでした。そのために職員も含め、住民がゴミを減らそうとせず、資源ゴミの分別もいい加減だった。だから徹底した改革が必要なのです」。
ではどういう方法をとるのか。まず日野市は30年近く燃えるゴミ、燃えないゴミを集めるのに使ってきたダストボックスの廃止に踏み切ります。ダストボックスは大きな鉄の箱で市内におよそ7000個設置されています。ゴミが外に見えず、清潔な感じがするとその昔は好評でした。
しかしいつでもごみを捨てられるので、ごみを減らす意識が生まれないという指摘もあり、また他の自治体の住民がやってきて捨てていくという問題も大きなものでした。
そこでダストボックスを全面廃止して、1軒1軒で収集する戸別収集方式に切り換えるのです。(ちなみにダストボックスがあるのは多摩地区では現在3市です)。
そして二つめの柱がゴミの有料化です。市の指定の袋を買うという形で、ゴミを出す量が減ると負担も軽くなることで減量をはかるものです。
まだ多摩地区で導入している自治体はほとんどありません。
ダストボックスの廃止と有料化という思い切った改革を市民に納得してもらうため、日野市役所ではこの1年以上を市民への説明会に費やしてきました。その回数は300回以上。ほとんど毎日に近い状態です。
ふだんゴミ行政に携わっている職員だけでは足りず、150人の職員が手伝いました。私が取材した説明会でも、市長公室の秘書担当の女性が説明役を担当していました。また小学校などでも説明会。
子供が親を動かすことを期待してのことです。
さらにスーパーやコンビニ関係者への要請も行っています。説明会でも出たのですが、「住民がゴミを減らそうと思っても、売る側のスーパーが
過剰包装やいらない容器などの返却を受け付けてくれないのでは」という声が多いのです。この辺はこれからの大きな課題でしょう。
馬場市長は自宅のゴミの量を公報で公開しています。ここまでの熱意で取り組むゴミ改革、はたして10月になったとき、成功するでしょうか。
そのためには行政と住民の努力だけでなく、モノを作って、売る側の協力も必要になってくるようです。
リポーター 崎山敏也