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第七〇一回('18年6月24日 放送)
 「激動『朝鮮半島』」

ゲスト: 武村正義 氏/田中均 氏

御厨

「安倍総理は日朝首脳会談に前向きな発言をしています。田中さんはこれをどうご覧になるか。ここに来ての状況は拉致問題にとってどういうタイミングなんでしょうか」

田中

「私はずっと前から申し上げてるんだけど、拉致問題っていうのは北朝鮮の政権の問題なんですね。その政権がいろんな懸案があって、拉致問題も日本との関係で最大の懸案だという意識は彼らにもあるわけです。ですから、非核化の問題が動き出さないと、拉致の問題っていうのはそれが単発で動くことはないんですよね。だから、そういう関係から見て、今しかその機はないと思います。非核化の問題が動き出してるということがあってね。だから、それはそれでこの好機を逃すべきではないと思います。

だけど、一方においてこの、「動き出した日朝首脳会談」。安倍政権っていうのは見出しをお作りになるのはすごく上手だけど、本当にそうなのかという私は疑問を持つわけです。通常こういう国のトップが、特に国交がない他の国のトップと首脳会談をやるというときには、よっぽどきちんとした根回しと準備がないと、軽々に言って、日本は首脳会談やりたいのかと足元を見られるようなことになるしね。それで、通常外務当局がそのための準備、万端の準備をするもんですよ。私たちがやったときも軽々にそういうことが出ると、全部の構想が変わっちゃうわけですよ。日本が望んでるんだと。だから、私はこういうことを口に出される以上、既に水面下ではいろんな根回しが行われてるっていうことを信じたいんですけど、分かりません。

とりわけ大事なのは、安倍首相というのは、安倍首相というよりも日本国首相なんですね。もしも首脳会談をやって一定の成果が出なければ、日本国として極めて強いダメージを受けるんですよ。

だから当然こういうときには、例えば拉致の問題というのはどういう手法で解決をしていくのかといったようなことについて一定の成果が見いだせるようなシナリオを誰かが作らないといけない。それは空中戦で、首脳会談やります、トランプがこう言った、文在寅がどう言ったということで物事が進んでいくものではないと私は思うんですよ。

だから私が申し上げてるのは、拉致の問題で安倍さんが全員生きて帰ってこなきゃいけないと、それが拉致の解決だとおっしゃるが、それを僕はその目標値を下す必要はないと思うけど、だけど何が大事かっていうと、やっぱりその事実関係を確認しなきゃいけないんですよ。一体北朝鮮に拉致されていった人がどういう形でどこで生活をして、生きてるのか死んでるのかということも含めて調査しなきゃいけない。よく言うんですよ。北朝鮮の捜査は信頼がならない、これまでもだまされたと。それだったら徹底的に合同調査をやっていく。1回、2回っていうことじゃなくて徹底的にやってくということでなきゃいけない。

例えばアメリカの米朝首脳会談で一つだけものすごく具体的な合意があるわけですよ。それは遺骨なんですよ。朝鮮戦争のときの遺骨について、北朝鮮は返すし、アメリカが捜査してもいいんだと、それが書いてあるわけですね。そういうもんなんですよ。だから私は、ましてや生きてる人であるならば、日本の権限ある当局がきちんと行って合同調査をして、それで事実関係を確立するということをしなきゃいけない。それが1回、2回の調査でできないじゃないかと、こう言われるかもしれない。だったら連絡事務所をつくられたり、連絡事務所をつくって拉致の問題をフォローアップしていくと。それだけ真剣にやるんだという。言葉だけで重要だって言われても、国民に響かないんですよ、それは」

御厨

「今田中さんはこうおっしゃいましたけど、武村さんはどう見てらっしゃいます」

武村

「何となく日本人は、今北朝鮮に対してはなんかマイナスイメージで捉えてる人が多い。安倍さんがあんまり圧力、圧力と言い続けて、なんか北は普通の国じゃないような印象を与えてしまった、そのせいもあるでしょうし、とにかくもう少し真っすぐにあの国をまず見ることから始める必要があるなと。

私に言わせると、私は5回ほど大分昔ですが訪朝しましたが、田中さんよりはるかに少ないんだけど、でも私の感想でまず申し上げたいのは、普通の国の一つだなと。やっぱり男女がいるし、子どもと大人が住んでるし、そんな鬼か蛇が住んでる国じゃありませんよと、まずそういう認識が必要であって、だから先ほど信頼って言葉も出ましたけど、信頼を置きながら真剣に話をすれば通ずる国だと、全ての問題が通ずる国だと私は思いますね。だからそういう姿勢でこれからの日朝外交はやるべきだと。

しかし、安倍さんは率直に申し上げて、きのうまでトランプに追随ちょっとされ過ぎてる感じもありました。トランプが米朝会談中止って言えば支持します、再開すると言えばまた支持しますって、何だろうなと思うぐらいべったり追随してましたけど、同時にあまりにも北朝鮮に対して圧力一点張りの発言を繰り返してこられましたからね。北がどこまで安倍さんという日本のリーダーを信頼しているだろうかと。今さら訪朝、会話だ、対話だとおっしゃっても、北がそういう雰囲気になるかどうかちょっと心配な面があります」