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第五八一回('16年1月10日 放送)
 「『選挙』が来るぞ」
 ゲスト: 片山善博 氏 / 浜矩子 氏

御厨

「さあ、今回のこの株価続落の事態を浜さん、分かりやすく説明して頂くとどういうことなんでしょう」

「分かりやすく言えば、当たり前でしょという感じですね。元々日本の株価っていうのはものすごく無理をして無理をして、政策的に押し上げて、2万円超えを目指すという感じでやっていたもので、そのこと自体が非常に不自然だったわけですので。何かこういう大きなことがあればドドッと、つっかえ棒がなくなって落ちていくというのは、全然驚くに値しないことですね。5日連続とかいう下げ幅の大きさ自体に、今までの相場が架空のものだったということが表れていると思いますね。確かにこういう大激震ですから、株が下がるのは当り前ですけども、でももっとちゃんと土台がある状況だったらば、こういう格好で奈落の底まで落ちていきそうな雰囲気にはならないわけで。当然こういう姿になるだろうということで、やっぱりね、だから言ったじゃないの、ざまー見ろ、っていうのが私的感じでございますね」

御厨

「非常に分かりやすい説明でございました。片山さん、今回のこの株安の事態ですけどもね、日本企業の業績よりは、中国市場やニューヨーク市場、円安の動きで大きく乱高下するわけですね。この日本の株式について、これまでは、これはアベノミクスの成果のひとつとされてきたわけですよね。この点いかがですか」

片山

「やっぱりアベノミクスの成果ということで言いますとね、例えば年金資金を大量に株式市場につぎ込むとかね。これをアベノミクスと言うんならひとつの成果でしょうけど、本当の成果ではないですよね。やっぱり無理をして、本来やるべきでないような事をやった結果、上がってる。体力の弱った患者さんに無理やりカンフル剤を打ったような、そんな感じですよね。ここに来て外部要因で、中国の問題とか北朝鮮の問題とか、それで乱高下した時に、なかなか打つ手がないんだろうと思うんですね、真っ当な手としては。黒田総裁は、出来ることは何でもやる言われてますが、ちゃんと出来ること自体がもうなくなってるんだろうと思うんですね。これで本来やっちゃいけないことを出来るからといってやれば、もっともっと酷いことになりますから。もうあまり無理をしない方が良いと私は思いますね」

御厨

「なるほど。浜さん、この点はどうですか。株高がアベノミクスの追い風になってきた事実。これをどうお考えになるでしょう」

「この、ナントカノミクスなるもの、実はこの間の株の動きっていうのは、その効果とか効用とか成果というのではなくて、むしろその害毒の表れだというふうに思うんですね。株価を操作することによって、あたかも経済実態が良いかのごとき幻想を振りまくと。そういうような事のために株式市場を使うというのをやってきたことの問題性とか化けの皮が、ここで剥がされてきてる、明らかになってきてるということだと思います。そういうふうなことになってきているので、黒田さんの出来ることは何でもやるという言い方で、片山さんも今、出来るからといってやってはいけない事をやってはいけない、とおっしゃいました。それはすごく重要な指摘で、出来るからといってやってはいけない、やってはいけない事を彼は連合の会合ですでにやってるわけですね。労働組合に対して、賃金を上げろなどということを中央銀行の総裁が言うというのは、本当に考えられないことですね。労働運動にエールを送るなら良いですけども、そうじゃなくて、物価が思うように上がらないのはおまえらサボってるからだろう。というようなことを言ったわけで、これはもう明らかにやってはいけないことをやったという事だと思いますね。すでにそういう領域に踏み込んじゃっているという事だと思いますね」

御厨

「今の点はいかがですか」

片山

「その通りだと思いますね。やはり日銀の、特に総裁を中心にした日銀の使命は何だろうか、ミッションは何だろうかといえば、それは例えば通貨価値を守ることを中心にあるべきですよね。それを賃上げをしろとかですね、まして労働組合に頑張れとかっていうのは、日銀総裁としてやられることではないですよね。それは勿論、物価上昇目標2%を立てて、それが思うようにいかないから色んなところに声をかけたりされるんでしょうけどね。やはりそこは節度を守らないといけないと思いますし。もうひとつは、そんなに律儀に悲壮な顔をして覚悟でやられることはないと思いますよ。中央銀行の総裁はもっと朗らかな顔をされてないと、明るくなりませんよね。経済明るくならなきゃいけないって言ってる時に、非常に苦虫噛み潰したような顔で悲壮な覚悟でというのは、私はよくないと思いますね」