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第五七四回('15年11月22日 放送)
 「激動の世界の中で…」
 ゲスト: 石破茂 氏 / 仙谷由人 氏

御厨

「(パリ・同時テロを受けて)具体的な警備の上でも、日本では来年の伊勢志摩サミットですね。そしてもっと大掛かりなのが、当然東京オリンピックと、あるわけですよね。ここにきてテロ対策として、犯罪を実行しなくても計画を話し合うだけで処罰対象にする共謀罪を成立させるべきだという議論が浮上しておりますけれども、石破さんはこの点はどうでしょう」

石破

「これはね、名前からして何なんだという話になるんですけども。これ、なんでこんな議論になってるかというと、今から15年前、西暦2000年に国連で国際犯罪防止条約ってのが決議されたんですよね。つまり、世界すべての国が、そういう情報とかを共有することによって、そして共に同じ事を犯罪と認めることによって、互いに協力しましょうねっていう条約ですね。で、今185カ国じゃないですかね、これを実際に批准して入っているのはね。今入っていないのって、日本、北朝鮮、イラク、もう数カ国なんですよ。

そうすると、これに日本が入るためには、犯罪を実行されちゃったらもう何百人と死ぬわけですよね。そうじゃないと、そういう重大な犯罪、軽微な犯罪じゃないですよ。例えば懲役5年以上の殺人とかね、強盗とかね。そういうものを組織的に形成された団体が相談をして、謀議をして、そして合意が成立しました、というものすごく厳しい要件をかけることによって、名前はともかくとして。そういう事をそういう集団が相談をし、合意が成立する、それはやはりね、きちんと犯罪として取り扱っていかないと。

日本はそういうのを、共謀罪、何といっても良いんだけど。そういうものって犯罪じゃないよね、相談することは良いんだよね、合意しても実行しなきゃ良いんだよね、ってことになると、日本だけ世界のネットワークから外れる事になるのでね。これはね、本当に説明するのに丁寧で、親切で、真摯な、そういう説明をする事によって議論をして、やっぱり私はこの成立っていうのは必要な事だと思いますね」

御厨

「仙谷さん、いかがでしょう」

仙谷

「コンスピラシーっていうんですよ、この共謀罪は。昔は人々が集まって、集まる事自身が問題だという国もあるんだけども、集まって批判的な事を考えてるとか、そういう相談をしたという事で引っかけていったと。だから労働組合結成なんて程度の話でも犯罪だった時期もあるわけでね。

それから共謀罪は、よく使われるのは陰謀をやったと。だからそれは陰謀だから良く分からないんだけども、時の政府とか権力によってはですね、これはよからぬ事をやってると、これは殺す事までも考えてる、という事をでっちあげてというか。そういう冤罪の温床になってた部分もある。

だから、歴史的な裁判とか冤罪とかを見るとやっぱり、あいつはよからぬ事を考えてるだけでも犯罪にする。あるいはそれを喋っただけでも犯罪にしたい、演説をしただけでも犯罪にしたい、皆さんそうでしょと。で、魔女裁判的な人民裁判をやるとかですね、そういう事との繋がりが今まで随分多かったもんだから、歴史的に。

だから、日本においてはやっぱり行為がなければ犯罪にしないんだと。つまり行為がある、行為も既遂と未遂、それから予備、それから謀議と、こういう順番なんだけども、謀議のところだけで行為が何にもないのにこれを犯罪にするのかというのはですね、刑法と刑事訴訟法の大問題なんですね。

で、イギリス系の国というのは割とコンスピラシーというのは元々イギリス発祥と言われてるんだけど、イギリス系の国は割と簡単にとってくると。ミャンマーも民主化されて選挙になってスーチーさんが勝ったという事なんですが、たった4,5年前までは人々が集まる事自身が犯罪だと。だから人々はですね、集まって議論して話合うという習慣があまりないんですね。で、集まって話し合って議論する習慣がないところの人間の進歩というか、ないわけですよね。そういう、共謀罪というのはどちらへ転んでも大変な事になるという事は分かって議論をしないといけないと」