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過去の放送 出演者 時事放談「サロン」 テレビプロデューサーの日々
 
 
第五七一回('15年11月1日 放送)
 「外交の秋」
 ゲスト: 丹羽宇一郎 氏 / 田中均 氏

御厨

「さあ、今回の新3本の矢。丹羽さんはどうご覧になってるでしょう。GDP600兆円は可能なんでしょうか」

丹羽

「政策と現実が乖離し過ぎてますね。したがって旧アベノミクス3本の矢は一体、空中に漂ってますね。あれどこにいったんですか、あの矢は。

要するにPDCAサイクルってのは昔からですね、総務省で私が委員やってるころからね、このサイクルで実行して、絶えず反省してチェックして次のプランを考えなきゃいけない。全く無視されてますよね。あの3本の矢のPDCAでね、反省をして、一体どこに問題があったか、だから次の3本の矢を打つんだということですね。今度の3本の矢は一体なんですかね、具体的に。何も分からないですね。

したがって、国民感情からすると、またかと。600円兆もね、言葉としては大変勇ましいし、結構な話なんだけど。現実の地方の経済を見てますとね、何にも変わってない。全然良くなってない。これでまた600兆、そんなもの出来るわけないでしょ。皆さんがそうなってですよ、その内にね、政治に対する信頼をなくすと思いますね。これだけ現実と政策の乖離が大きくなるとね。これはやっぱり政権としてよく考えないといけませんね。1億ナントカもですね、一体何を言いたいのかよく分からない。

ということでね、これ安倍政権経済政策についてはよほどね、もっと現実に足を下ろして国民に良く説明をしないと、誰も聞いてませんね。信用もしてないね」

御厨

「さあ、そして600兆円に向けた成長戦略の目玉であるTPPですが、田中さん、これをどうご覧になってるか。日本にとってプラスなのかマイナスなのか」

田中

「私はプラスだと思いますけどね。これがその第三の矢っていう成長戦略であるかどうかっていうのは甚だ疑問なんだと思うんですよね。むしろそのTPPについては戦略的な意味合いの方が大きいと思うんですよね。

実はそのまさにTPPで決められているようなこと、すなわち例えば知的所有権の保護とかね、それから国有企業のあり方とか、そういう事というのは実は、より高い資本主義の原理・原則なんですね。それがそのルールを作る事によってね、この地域の経済体制というのはまさに自由な経済体制を維持しようという事なんですね。で、これに中国が将来入ってくればね、私はこの地域、要するに中国はひとつの大きな国際市場の中に中国も入ってくるという形を作れると思うんですね。

ですからそういう意味で戦略的な意味合いっていうのはものすごく大きいと思うしね、それが果たして経済政策として、競争政策としてどれくらいの意味をもってるかっていうのはやっぱり私は多少疑問だと言うふうに思うんですよね。これはもう既に工業製品の関税というのはほとんどないですしね、日本はね。農業についても旧来手法なんですよね。米の枠を作るとかですね、ですからそういう意味で成長政策としての意味はないんじゃないかなという気がしますけどね」