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過去の放送 出演者 時事放談「サロン」 テレビプロデューサーの日々
 
 
第五二五回('14年11月30日 放送)
 「スタート選挙戦」
 ゲスト: 武村正義 氏 / 片山善博 氏

御厨

「要するに少子高齢化が進んでる訳ですね。毎年社会保障費は1兆円ずつ増えている状態で、この社会保障制度を続けていくためには、例の自民・民主・公明で合意した消費税10%増という事だったんですが、今回ついに先延ばしであります。武村さん、これはどうでしょう」

武村

「安倍さんはあえて先延ばしをされるんだから、この2年半は皆さん我慢して下さいと。これこれこれの約束がありましたけども、これは出来ませんと。だから子育て、子ども支援策もね、数千億かかりますがね、これを確実にやりますと逆におっしゃってるんですね。何を根拠にそうおっしゃってるのかと問いたいんですがね。言葉だけに惑わされちゃいかんなあと。2%上がらないって事は5兆円くらい歳入が見込み違いになるわけですから、やろうと思った事を相当抑制しなきゃならない。だからその交換条件で先送りをするからサービスはやりませんよと、サービスもやります先送りもしますなんてそんなこと出来ないですよね。そこは政治家はもう少し正直に国民に語って欲しい、説明して欲しいと思いますね」

御厨

「片山さんいかがでしょう」

片山

「景気の悪い時に、というか景気がやっと持ち直そうとしている時に水をかけるように消費税増税したら、税収も減って元も子もなくなると、この考え方は私は理解出来るんですね。したがって1年半先送りしようという事なんでしょうけど、その際に、消費増税をあてにしていた社会福祉の歳出増の方をこれが全部出来なくなりますよというのは、そこはちょっと考え方違うんですね。と言いますのはですね、社会保障というのは消費税でないとやらないみたいな考え方になってるんですけどね。本当はそうじゃなくて、歳出予算の中でどこかを減らして大事なところを増やすって事ですから。本当に社会保障で子育て支援なんかやらなきゃいけないって事があれば、他のところ削ってでもやらなきゃいけないんですね。その作業をしなきゃいけないですよね。なにか消費税を上げるのは、子育てなんかは消費税分しかあてないっていう妙な理屈になってるんですね。そんな事いうならば、国土強靭化っていう突如出てきたものは、これ財源なんなんですか。消費税も充てないし何やってるんですか。あれ国債ですよって話になってますが、国債はどっかで償還しなきゃいけないですね。だから一方では財源のメドがないのにイケイケドンドンみたいな分野がある。ところが肝心の子育てとかそういうところは消費税が上がらなければ一切手をつけられませんっていうのは、これはやっぱり財政の論理としてはダブルスタンダードでおかしいと思うんですね。どこかはやっぱり削って、全部でなくてもある程度出来ますよって姿を示されるかどうか、ここだと思いますよね」

御厨

「武村さん、国の借金も1000兆円を超えてる訳ですね。で、よく言われるのは子どものクレジットカードで買い物をしている状態というふうに言われてた訳ですが。子供や孫の代に借金を残してしまう事をどうお考えになるか。あっさり、先送りという事に今度はなった訳ですが、この点はいかがですか」

武村

「まあとにかく国の予算全体の40%くらいが借金でまかなわれてますからね、非常に異常な状況です。ですから今の片山さんのお話もね、あちこち削ればってのは分かるんですけどね。なかなか借金以外でですね、削るところがそう多くはないと。そういう意味で非常に増税を先送りすればね、なかなか容易じゃないよと私は思うんですがね。それにしても1000兆円というのは世界最大の最悪の赤字大国です。で、1年間の国税収入は50兆円です。だからサラリーマンの皆さんも考えて欲しいんですが、例えば年収、奥さんと合わせてでもいいんですが、5000万くらいの収入がある家庭が20倍、1億円の借金を抱えたと、金利も含めてこれをどう消化するかで、とても出来ないと言ったほうが正直なくらい大きな借金です。50丁円の国税収入しかない日本国が、その20倍の1000兆円の借金を積み上げてしまったと。これちょっとやそっとじゃ償還出来ません。プライマリーバランスというのもあれ元本は手をつけないで金利だけバランス取るという初歩的なバランス論ですからね、それでもなかなか出来ない。それぐらい深刻だって事と、もうひとつ申し上げたいのは、やっぱりこれ道徳的でない、非常に非道徳な政治現象だと。要するに、60年で償還するんですから、今どんどん借金して60年かけて子どもや孫に、生まれていない将来の子どもに借金を返済させようというのは極めて非道徳で。日本の高校生が、世界の世論調査を見てますと将来にあんまり希望を持ってないと。希望を持ってるのが10何%。中国やアメリカは70何%。何でこんなに違うのかと、きっとその原因のひとつにはですね、この1000兆円という借金があるんじゃないか。あんなに巨大な借金してる日本は、我々の未来を奪っていると感じ始めてるんじゃないかとさえ思います」

御厨

「片山さんいかがですか」

片山

「私ね、歳出カットというのをもっとやらなきゃいけないと思うんですね。武村さん、さっき言われたようになかなか容易ではない。容易ではないんですけどね、どうもね、歳出カットといっても、来年度の予算編成でどこまで削れるかみたいな議論になってしまうんですね。そうしますと急には削れないですよね。やっぱり構造的な部分を直していかないといけないですよね。そういう根っこから、ちょっと時間かかるけれども地道にやっていこうという改革作業がほとんど出来ない、苦手なんですね。いつもやっつけ仕事で来年度って話になると時間切れになるんですね。だからもう少し、数年かけて歳出をカット出来る方法を探していこうという事をまずやらなきゃいけないのがひとつと、もうひとつはですね、為政者。政治家の人達と、中央官庁の官僚の人達を見てますとね、切迫感がほとんど感じられないですよね。やっぱり身を切る改革じゃないですけど、こんなになったんだからまず自分たちが隗より始めよで、自分たちの身の回りから削ろうねって。それだけやってもそれはとても1000兆円の解消には大きく役に立たないかもしれないけども、まずその姿勢がなければ、多くの国民の皆さんは、やっぱりそうだなと、自分たちも我慢しなくちゃいけないなってふうになりませんよね。全然それが感じられませんね」