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第五二一回('14年11月2日 放送)
 「政治とカネ」と「北」と「中国」と
 ゲスト: 増田寛也 氏 / 田中均 氏

御厨

「さあ、田中さん。まずは今回の会談についてお伺いしたいんですが、北朝鮮からは、過去の調査結果にはこだわらず、新しい角度からくまなく調査すると言うことだったと言われているんですね。その一方で拉致被害者の新たな情報はなかったという事ですが、どうでしょう」

田中

「私はひとつ、先に繋がった事は良かったと思うんですね。こういう事っていうのは結果を作らないといけないのでね、中途半端な結果で国民世論が反応するという事では物事が先に進んでいかないと思うんですよね。で、今回の特色を見れば、私も実はちょっとびっくりしたんですけど。日本の代表団が行った時にですね、皆軍服を着てね、まさに将軍ですよね。彼ら国家安全保衛部と言うのは秘密警察ではあるんだけど、軍との関係でも、軍の中の規律もまさに処罰をする憲兵も兼ねてる訳なんですね。それでキム・ジョンイルが拉致を認めた時のキム・ジョンイル総書記の説明と言うのは、これは党の工作機関、国務機関、拉致というのをやったと言う事なんですね。ですから軍が調査をしない限り、党を中心にやった調査では、なかなか結果が出てこないんです。これは明らかなんです。ですからね、体制としてはまさに軍の国家安全保衛部が全面に出て、なおかつ国防委員会と言う最高の意思決定機関、この枠の中で調査をする。特務機関についても調査をするんだって言うのは、こういうことの調査としては最もベストな体制であると、結果を作るためにはベストな体制だと私は思うんです。ただ同時にね、北朝鮮も中途半端な情報を出したり、あるいは私ね、日本が望んでいるような結果がでてくる事を心から期待するんですが、そうでない場合もあり得る訳ですよね。その時の日本の反応と言うのは極めて強烈なものであろうと思うんですよね。だからこの問題の難しさと言うのは、私は外務省の後輩達が一生懸命やっておられると思うし、ただものすごく難しいと思うんですよ。どういう形でね、北朝鮮から結果を絞り出して、それで先に進めていくのか、まさに日本の世論はずっと見てる訳ですからね、まさにこういう問題っていのは、なかなか難しい。今それがね、決裂でもするってことになるとですね、もう深い闇の中に入っていってしまうのでね。今回について結果が出なかったのはとても残念ですよ、だけど先に続いた事は良かったんじゃないかと私は思いますけどね」

御厨

「増田さんいかがですか」

増田

「日本の世論を相当意識してるんでしょうね。あそこまで建物を公開したりね、新しいプレートが各部屋に掲げられていましたけど。ですから、世論がどういう反応をするか常に考えながら、激高しないように、逆に言えば誠意とか誠実さを前面に出してやっていくと言う事だと思うんですが。おそらく、これは推測ですけども、結果は全部彼らは分かっていると。結果は既に全部分かっていて、それをどういうやり方で、どういうタイミングで、自分たちにとって一番良い出し方っていうのが常に頭にあって、もうそれだけだと思うんですね。ですから直には出てこないし、我々にとっては、焦らされ焦らされという中で、どうやって少しずつ前に引き出していくかという事だと思います」

御厨

「田中さん、日本からは拉致問題解決に向けた強い決意をね、最高指導部に伝えたという事ですが。田中さん、この意味はどういう事になりますか」

田中

「拉致問題が最優先であるとかね、やっぱり私は全てについて日本人の命とか、日本人の行方不明な人も一体どこへいるのかとか、日本人妻の問題とか、遺骨の問題、それぞれ捉えても大事な問題であることは間違いないのでね。拉致が最優先ではあるけれどもね、他の問題をおざなりにしてはならないと思うんですね。だから、この問題について日本が最優先で、かつとりわけ安倍さんがね、非常に強い決意を持ってやっておられると言うのはもう周知の事実なんですよね。日本国民もそうだし、北朝鮮もそうだと思うんですよね。ただ私はちょっと不安に思うのはね、外交と言うのはある程度、かなり突っ込んだやり取りをやって。結果を作るために色んなプロセスを踏んでいくというのが普通なんですが。今回はいちいち世論と北朝鮮の思惑がガシャンとぶつかるような形になっていく訳でね、なかなか前へ進んでいくのが難しいかもしれないなと言う事とね。もうひとつはね、さっきも申し上げた、私は多分北朝鮮の中で、軍と党との関係が必ずしもまだ定着していないと思う。キム・ジョンイル総書記の時は、先軍政治と言って軍が中心になって、軍の下に党が来た。ところが、キム・ジョンイル政権の最後の方で党をもう一回持ってきた訳ですね。そこで軍の非常に強い反発があって、また軍が出てきた。今回軍服を着た人がみんな出てきたという事はそういう配慮もあるんじゃないかと、軍が中心になってるよと言う事ですよね。それで軍が出てこないと党がやった拉致とか、そういう事に対してはなかなか結果が作りにくいと言う問題があるのでね。だからこれが国内の彼らの体制というのが、これからどうなっていくのかという事をよく見ないと、なかなか難しいしね。北朝鮮の今やっている事を見れば、例えばアジア大会の閉会の日に突然北朝鮮のナンバー2とかナンバー3の人を送ったりね、それで南北対話をやろうと言ってやるその前日の日に銃撃戦をやって結果的には出来なくするとか、ひとつ一つの行動がものすごく衝動的なんですよね。だから分かりませんがね、ちょっと北朝鮮のそういう国内の体制が揺らいでる部分がなくはないんじゃないか、と言う気もしますしね。だから慎重に見極めてやっていくというのが正しいんじゃないでしょうか」

御厨

「増田さんいかがでしょうか」

増田

「過去の調査結果にこだわらずって言うのが入っていたりね、それからあと特殊機関ですかね、そこも含めてやるというのが何を意味しているのか。ただ、これまでの経験を言うとね、そう言う一語一句にあまり妙な期待感を持ったり、それから我々が望むような、国民誰しもが望んでいるような事が出てくれば良いですけれども、いずれにしてももう恐らく全部調べがついてね、それでこういうことはもう分かっているはずですよね、当然彼らにしてみればね。ですから、新しい角度で調査と言ってますけども、要は、言葉だけの話で、結局は日本の世論とそれから自分達の得る物は何かと言う事を見てると、で、出来るだけ取るものは取りたいと。少し冷めた言い方ですけど言わざるを得ないと思いますね」