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第五一八回('14年10月12日 放送)
 「どうも変だ」
 ゲスト: 武村正義 氏 / 浜矩子 氏

御厨

「8月の13日に4月から6月のGDPの速報値が6.8%減少というふうに出て以来、悪い指標がどんどん出てる訳ですね。アベノミクスで大企業のメーカーは良いんですけども、それ以外の大企業、そして中小はかなり厳しいと聞いています。8月の内閣府の判断や、あるいは9月の調査でも悪い訳ですね。浜さん、これをどうご覧になりますか」

「まあこれが実態だ、本当の姿だ、と言う事でしょうね。やっぱり経済活動と言うのはごまかしがきくものでもないですし、嘘のつけないものですよね。だから最初この安倍政権が出てきて色々わーっと色んな事を言って、ちょっとそれでまやかしのムードが盛り上がった。だけども、それが完全に息切れしてしまっていて、実態が姿を表してきていると言う事だと思いますね。好循環という言葉が使われていますけど、ごく一部のおっしゃった輸出系の大企業とかで循環しているだけであって、経済全体に何も回っていないって言うことがこれらの一連の数字で非常にはっきり現れていると思いますね」

御厨

「なるほどね。どうでしょう武村さん。株は確かに上がる。それ以外は円安が急激に進んで原料を輸入する会社は割高になって困っちゃってると。こういう訳ですけど武村さん、どうですか」

武村

「政策としてのアベノミクスは、正念場にさしかかってると言わざるを得ませんね。今、おっしゃったように株高とか円安という当初の明るい要因と言われたのが、この円安はむしろ逆にデメリットが強調されるようになってきましたし。加えて、全体として見ればやっぱり原材料費がどんどん上がってきて、実質賃金がむしろ上がらないどころか下がっていると言うこの矛盾ですね、これは致命的ですね。この矛盾から抜け出す事が出来なければ政策としてはとても成功してるとは言えない」

御厨

「どうなんでしょうか、今話が出ましたけれど、賃金ね。浜さん、デフレ脱却は良いんですけども物価が上がる方が早くて実質賃金がマイナスになっちゃうと。こういう状況、どうご覧になります」

「非常に悲惨ですよね。極めて弱いものいじめ的になっていて、日本経済の中の一番弱いところが一番痛めつけられるような格好になっちゃってる訳ですよね。こんな事やっていたらデフレ脱却などと言うものは夢のまた夢という感じになってくる訳で、支離滅裂な感じだと思いますね。一方で変に公共事業を色々やったりする結果、奇妙な形で人手不足が発生してしまうとか、それで人手不足倒産に追い込まれる中小零細企業も発生していると言う。これはある意味では政策不況と言って良いんじゃないかと言う状況に」

御厨

「政策不況」

「政策が支離滅裂な事をやるのでそれに経済実態が振り回されてしまって、もともと土台が弱いところにどんどん痛めつけられて悪循環、好循環じゃなくて悪循環に入っている。これはやっぱり政策不況だというふうに判定すべきではないかと思いますね」

御厨

「今の点、武村さんいかがですか」

武村

「今おっしゃることに関連するんですが、日銀の黒田さん、総裁。非常に意欲的で結構なんですが、私がちょっと皮肉っぽく見ると、日本銀行は財務省のためと言うか日本の国債のために一生懸命頑張っていると、こういう見方が出来るんですね。なぜかって、要するに国債の金利を上げない、この一点に全てを集中してるような感じがしてね。確かにそれは成功してるんですね、もう0.5も割ってますからね。これひとたび国債の金利が上がれば日本財政はもう破綻になりますから、そのために力を入れておられるのは分かるんだけれども、その時に様々な歪みというか犠牲も伴っていると思いますね」