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第五一一回('14年8月24日 放送)
 「景気はどうなっているのか」
 ゲスト: 増田寛也 氏 / 浜矩子 氏

御厨

「増田さん。人口問題で東京が一番深刻というのはどういう事なんでしょう」

増田

「高齢者の数がとにかく極めて急速に増えていくんですね。日本の経済をここまで作り上げてきた、地方からいっぱい集団就職で出てきた訳ですけども。その人達が皆、今60過ぎて定年を迎え、そして2025年にいわゆる団塊の世代が後期高齢者になっていくということで、これからが東京での高齢化問題の一番厳しいところ。地方はもう既にその段階に入っているか、その段階をやや通り過ぎているんですが。

実は舛添知事が発表してるんですが、東京での今現在でのいわゆる待機介護老人。待機している介護老人ですね、本当は施設に入って頂いた方が良いかもしれない。その人達が今日現在でもうすでに4万3千人いらっしゃると。地域包括ケアがなかなか難しい地域ですね。で、2025年、2030年にはですね、それが爆発的にやっぱりこれから増えていくんですね。ですから将来非常にやっぱり豊かな老後とはずっと縁遠い、そういう姿しかなかなか見えてこないと思います」

御厨

「まあ言われてみますとね、夏休みの朝、歩いてますと、あちこちのお家でデイサービスの迎えの車が来る、なんて風景はもう本当に良く目にするんですけど。浜さん、この東京の高齢化問題どうでしょう」

「そうですね、やっぱりものすごく知恵を要するんだと思いますけど。今、増田さんが言われていた地域包括ケアが難しいと、東京と言う場所の特性上。と言うそこをどう乗り越えるかっていう事なんでしょうね。だからやっぱり東京というひとつの地域、東京をひとつの地域として見ると本当に包括的な回答は出てこない。だからやっぱり東京をもっと小さな地域コミュニティーに上手く分割していくということが出来ないものかなという感じを持ちますね。かつてはそういう東京って言ったって色んなコミュニティーによって成り立っている訳で。それが今非常になくなってしまってる訳ですけれども。その辺の東京を改めて上手く細胞分裂させると言いますか、新たな内なる小宇宙を作り出していくという方向性はないもんなんでしょうかね。増田さん」

御厨

「老老介護の問題で言うと、考えてみれば夫婦共々年をとる訳ですよね。共々そうすると介護が必要になるという可能性が高い訳ですが。増田さん、これが東京で深刻な訳はなんでしょう」

増田

「結局ですね、東京の場合は経済を最優先してね、仕事にはものすごく適するようなですね、人を集積してそこで効率化をして経済の機関車にまさになってきたって言うことは、地価も何も非常に上がってですね。それでその時に、老老でもまだ一緒に両方とも健在でいればすごく良いんですけども、だんだん年をとられるとですね、どうしても病気にならなくても介護の世話にならなくちゃいけないと言うとこが増えてきますよね。

そうすると、地価が高いが故にですね、社会保障の施設だとか何かやるにしてもすごくコストが高くなる。見てますと、東京都は少子化対策にものすごくお金使ってますし、そういういわゆる高齢者全体に対する施策もものすごく使っているんですが、一方でコストが非常に高くなってますよね。

で、今浜さんがおっしゃったようにですね、コミュニティーとしての機能を東京で復活させるのは非常に難しくなる。要するに匿名性が高いってことが利点であって、犯罪などから言ってもなおさら情報を外に出さないような仕組みになってますから。ですから高齢者同士がいて、そこでなんとか自分達でやっていかなくちゃいけないとか。どちらかが亡くなるとですね、孤立した人々が他に頼る所がなかなかなくなる。私たち2人とも都立戸山高校出身なんですが、直ぐ脇にあった戸山団地。今もう惨憺たる有様ですよね」

御厨

「なるほど。浜さん、いかがですか」

「そうですね、今のお話でやっぱり東京と言うのは仕事をする場所であって、生活する場所ではないという状態になってしまっているというのは、この辺が問題の勘どころなのかなと思いますね。もうこの際、東京は解体するしかないんじゃないでしょうかね、思い切って」

御厨

「また危険な話を。増田さん、臨時国会は地方創生国会として人口問題が課題になりますけど、ポイントは何でしょう」

増田

「ひとつはですね、地域間でものすごくアンバランスになっている内の地方の経済を、前半の話とも繋がりますが、地方の経済をどういうふうに活性化させていくか。さらに言うと、地方に働く場をどれだけこれから作り出していけるか、そこがひとつの大きな問題ですね。それからふたつめはそもそもこの高齢化問題についても、東京の場合は担い手がとにかく足りない。先ほど2025年の数字でね、高齢者1.7倍って言ってましたが、2040年には本当に2倍近くまで増える訳ですよね。若い人たちは40%減りますね、少子化で。ですから、このいわゆる少子化ですとか、それから東京での一方で介護をはじめですね、急激に進んでいく高齢化問題。そういった問題をどういうふうに解決していくか、このふたつが大きなポイントではないかと思いますね」