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第四九八回('14年5月11日 放送)
 「さあ、終盤国会突入…」
 ゲスト: 高村正彦 氏 / 藤井裕久 氏

御厨

「さあ、これまでは憲法で実は禁止されていたというふうに言われてますけど、集団的自衛権とは一体どういうことなのか。藤井さんはいかがでしょう」

藤井

「私はですね、ずっと歴史的にこれ見ていますとね、もともと集団的自衛権と個別的自衛権は併記して書いてある訳ですよ。だからそこいらのことはね、日本が占領されてた頃はもう誰も問題にしてなかったんですよ。

初めて問題になったのは岸内閣だと思うんです。私は岸内閣の一番末席の官邸にいたんですよ。そしてね、岸さんはこう言われたんですよ、土地を提供するのが集団的自衛権かどうかは色んな意見のやつがいると。それはそれで良いと。しかしながらですね、集団的自衛権と言おうが何と言おうが、海外派兵は絶対にいかんと。これは今の憲法の精神であると。これは明確に言っておられます。それは言っておられますよね。

それと今、高村さんが言ってるのが矛盾してるかどうかという話なんだけれども、今おっしゃったように必要最小限と。そこは海外派兵はないよと、おそらく言っておられると思うんだけど。ところがですね、これが一番怖いのがですね。一部の相当自民党の偉い人が、いずれはこれは拡大するんだよと、こういうことを言っておられますね、これが怖いんだよね、一番怖いのがね。それで今の話はグレーゾーン的な話なんですよ。僕はグレーゾーンって言葉あんまり好きじゃないけど。

公明党さんがそこは僕、同じ意見なんですがね、これは個別自衛権の話で片付くんだと。例えばですね、小渕さんの時、僕ら連立だったんです。その時周辺事態法をOKしたんですよ。ただし私たちが修正を求めて直して頂いた。そのまま放置すれば日本国の安全と平和に関わるということを入れて頂いたんですね。つまりその事を大体おっしゃってるんだと思いますよ。思いますよ、思いますが、そこでそれは個別自衛権で僕らは説明してきた訳です」

御厨

「その点いかがですか」

高村

「あのね、周辺事態法の時、私外務大臣なんですよ。私が一番多く答弁したんですよ。ですからね、あの時の事は良く知ってるんですが、あの周辺事態法の時もね、もうすでにね、もういっさい武力を使っての同盟と言う事をしなくても良いよと言う意見もあったんです。

だけど憲法解釈がこうだから後方支援に徹しましょうと、そういうことでやったんですが、やっぱり時代が段々変わってきて、変わってきたと言うのは相対的にアメリカの力が弱くなってきてんですよ。相対的にアメリカの力が弱くなってきている、世界の警察と必ずしも言えなくなってきている。アメリカに土地さえ提供していれば、基地さえ提供していれば全部守ってくれるという時代ではなくなってますねと。

そうすると同盟を守るためには安全保障条約上の義務より一歩進んでやらなきゃいけないんじゃないですか。周辺事態法もまさにそういう事だと。あれ、安全保障上の義務じゃありません。あの後方支援ですね、たださらにもう少し進んでやらなきゃいけないんじゃないですか。

例えば、朝鮮有事の時に、日本人を含む、主として日本人の避難民が日本に逃げてくる。その時に救援を米艦に頼んだと。アメリカの輸送艦で帰ってくる。そういう時に第三国がその米艦を襲った。それは常識的に守らないといけないでしょう。だけどこれ米艦ですからね、そこに日本人がいるからと言って日本国に対する攻撃とは言えませんよね。そうすると国際法的には集団的自衛権と言わざるを得ない、だけど守らざるを得ないでしょう。そういう必要最小限度の事をやりたい。

なにもイラクに行って米軍と一緒に戦えと言う事を言っている訳じゃないんです。限定容認論というのはそういうことです」

御厨

「今言われているやつですよね。いかがですか藤井さん」

藤井

「もう一度繰り返しますけどもね、結局一つの考えでそれは理解しますよ、だけれどもですね、どんどんこの集団的自衛権という概念を大きくすると、どんどん増やしていくという人がいる訳ですよ。自由民主党の幹部の中にね、それが一番怖いと言う事とですね、もうひとつ観点を少し変えて言いますけどね、憲法をね解釈で始まったのは事実なんですよ。

伊東正義さんが1981年に、憲法のこの解釈論で集団的自衛と個別自衛に分けて、集団的自衛権はダメだと、と言うのを決めたのも憲法解釈なんですよ。それは閣議決定してますよ。だけれどもね、この何十年続いた解釈もですね、そう簡単に直しちゃいけないし、もう高村さんは基本的に言ったときには憲法改正だと言われたので誠に結構な事だと思いますよ。

だけれどもね、解釈をそう安易にやりますとね、たとえばですね、憲法18条なんですよ。これはですね、苦役と言うものをやっちゃいけない。それが徴兵制の否定になってる訳ですよ。しかし徴兵制を肯定する人はいる訳ですよ。あれも憲法解釈なんですよね、だから徴兵制良いじゃないかと、そういうふうにどんどん解釈においても拡大していく可能性がある。

これ、ちょっと今の面と違いますけどね、つまり憲法の解釈を、長年続いたものを解釈で直す事の弊害ですね、それを今あわせて申し上げた」

高村

「憲法9条2項を見るとですね、文字通り読むとね、これ個別的自衛権だって有してないんじゃないのと思えるような文言なんですよね。

だけれども今までの政府解釈で言うと、9条2項だけじゃなくて、前文の平和的生存権とか13条の幸福追求権だとか、そういうものを持ってきて全体的に見れば、日本の平和と安全を維持し、そして国の存立を全うするための必要最小限度のものはできますよと。こういうことを今まで言ってた訳ですね、そこまでが憲法解釈の法理なんですよ。そこから法理をどうあてはめるかって時に、個別的自衛権は良いけど集団的自衛権はダメですよと言っちゃったんですね。

これはね、ちょっと法律の専門家ではあっても安全保障の専門家でない悲しさでそう言っちゃったと。政府全体としても法律の専門家がそう言うんだし、政府としても当面困らないからとそれを追認してきたと。それは間違いだったんですけども、まさにその間違いをそのまま受容できないような国際情勢になってきてると。だから必要最小限度って言うのはちゃんと法理だからおさえなきゃいけないけども、その当てはめの中で、十把一絡げに集団的自衛権がダメと言うんじゃなくて、集団的自衛権の中に一部必要なものがあるでしょ。と言う事をいってるんで、ご理解ください」