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第四六三回('13年9月1日 放送)
 「突入、決断の9月」
 ゲスト: 塩崎恭久 氏 / 玄葉光一郎 氏

御厨

「ここに来て分かったのはタンクを作ってから検査を一回しかしてこなかった。急いで作ったからボルトを繋いじゃったと。そのタンクから漏れちゃったと、いうことですけども。こうしたある種の緊急対応、これと長期的な対策をどういうふうにうまくやっていったら良いんでしょう」

玄葉

「そうですね、こと汚染水に限って簡単に申し上げると、今おっしゃった緊急対策。これ、元々1000基作ったタンクの中で、300基くらいは急ごしらえだったんですね。元々耐久年数は限られているって言われているものだったんです。ですからそれをリプレイスする、置き換える、パトロールを多くするとかですね、そういう緊急対策は緊急対策で必要だ。

でも、いづれにしても汚染水が、どんどんどんどん貯まり続けます。つまり循環する水だけじゃないんですね。地下水が一日400トン流入しているんです、建屋に。一日400トンですよ、それが全部汚染されているというのが今の状況なんです。

それをどうするかという抜本策について、海側に遮水壁をつくります、陸側に凍土壁をつくりますと。地下水バイパスで綺麗なまま建屋に行く前に流しますとか、色んな策を今講じようとしているのが現状なんですけど、ただ根本的、本質的な話をさせて頂きますとね、これはやはりさっき申し上げたように国家の危機管理に相応しい仕組みを作るべきだと。つまりは深刻なトラブルが出て初めて国が出てくる訳です。そうではなくて深刻なトラブルを未然に防止する仕組みを作らなくてはいけない。

私は3・11の時に直接の担当ではなかったんですけど、閣僚でしたから原子力のこの災害対応の会議に出たことがありました。その時に私が申し上げたのは、電源車をもっていかないと冷却できないと、こう言ったんです。確かにその通りなんです。でも、あの時に私は電源車だけではなくて、もしダメだった場合の事を考えて、事前の策、次の策を一緒に走らせてくれって言ったんです。記録に残ってると思います。危機管理の要って代替案とか複数案を並行して走らせることだと思うんですね。例えば先ほど申し上げた凍土壁、リスクあるんです。失敗すると相変わらず増え続けるんです。

ですから、そういう仕組みはどういう仕組みなのか。簡単に言うと、複数案走らせるっていうことはコストがかかるんですね。毎年毎年東電は債務超過の心配してるんです。そういう状態の中で、廃炉、人類初の挑戦、国家の威信をかけた戦いができるかってことなんですね。ですから今予備費でね、その場しのぎで対応してますけれども、そうではなくて、もちろん国民の理解が必要なので東電も負担をしていかなくてはいけませんけれども、やっぱり廃炉の費用については当面心配ないのだという仕組みを知恵を出して作り上げるべきだと思うんです。それがなければね、これから4号機の使用済み核燃料の取りだしとか色々始まるんですけど、常にトラブルが続くと思うんです」

御厨

「玄葉さんはそうおっしゃいましたけど、塩崎さんいかがですか」

塩崎

「おっしゃるとおりでね、今回のこの問題については、汚染水問題についてはですね、独立委員会である原子力規制委員会と、エネ庁、経産省が一緒にやるということで、もちろん東電は当たり前ですけども。今は予算の中の予備費で今年度中はやらざるを得ないから、それはやむを得ないですけど。大事なことは国がちゃんと税金を使ってでもやるんだという責任を負うというとこが、今までと全く変わった訳ですね。

やはりこれ全てが、今玄葉先生が言ったように新しい事なんです。全くやったことがないことばかりです。その凍土方式も、ガラスで固めていくやつも全部そうなんです。300トン400トンの水が地下水で流れてるっていうようなことがね、これを止めるっていうことをこの規模でやったことなんてないんですから。

そうなるとやっぱり、いかなる知識も全部集めて総力戦で立ち向かっていくということが大事なんで、我々としてはこの原子力安全基盤機構という独立行政法人に実は博士号を持ったり専門家達が沢山いたんですけど、下請けだったんですね。ですからやや責任が一義的には無くて、それを今度は一緒にするという法律を菅官房長官との話もつけて、臨時国会に出すということにしてますけど。これはまさに体制として国家としてちゃんと組んでいくんだという事を今やっている訳ですね。

イギリスにはですね、廃炉庁という役所があります。私は前々から日本も廃炉庁を作るべきだと3・11の後から唱えてるひとりなんですけども。特に事故が起きてこのような状態で、炉心が溶け出してしまっているというようなものを廃炉するっていうと、イギリスでやってきた廃炉よりさらに難しい事をやる訳です。

ですからこそ国が責任を持って、元々イギリスで作ったのは、どうも民間に任せるとコストも余計なコストをかけてやってるんじゃないかと、そうすると結局それが国民に負担となって返ってくるので、それで国が管理するということにしてるんです。ですけど今回の場合はあまりにも問題があるのでまさに私はそういう仕組みと言うものをですね、ひとつの考え方として検討するように政府の方にも投げてるところであります 」