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過去の放送 出演者 時事放談「サロン」 テレビプロデューサーの日々
 
 
第四六二回('13年8月25日 放送)
 「猛暑の中で」
 ゲスト: 武村正義 氏 / 浜矩子 氏

御厨

「武村さん。頼みの綱だったタンクからの大量の汚染水漏れ。これをまずどうお感じになりました」

武村

「とにかくどう感じるかっていうか、もうしょっちゅうこの水漏れ、水の汚染のニュースが続きますから、聞いてる方も頭がこんがらがってきて整理が出来ないんですが、今回は地上のタンク、1000くらいあるタンクのひとつが大きく漏れたんですね。

ちょっと前は、春ごろは地下貯水槽というのがですね、もっと大きい奴。そこからも漏れたと、だからその水を汚染水を汲み上げてタンクに入れ変えてる最中。で、タンクも漏れ出したと。その他にトレンチから漏れてるとか、地下水が建屋に流れてるとか、色んな水の複雑な状況が段々知らされてきて、我々も知れば知る程こんがらがってくるんですが。

でも、福島原発事故そのものが国際評価基準でレベル7という最高の酷い状況。その上に水漏れというレベル3の異常事態がプラスされて、いよいよこれは非常で、しかも異常な重大事態に立ち至っているというふうに認識せざるをえません。これはもう、私に言わせれば21世紀の人類文明が直面している科学技術の異常事態なんで、これはひとり東電だけの責任でですね、済む話でもないし。国を挙げて政府も全面的に乗り出していかないといけない。それどころか世界の英知を集めるぐらいの努力をしてもうまくいくか分からないくらいに複雑で難しい事態だと思いますね」

御厨

「なるほど、浜さん、ズバリどうでしょう」

「そうですね、これ120リットルが実は300トンだった訳でしょ。こういうアバウトさっていうものが許されていいテーマではないですよね。これって一体どういう事なのかと。よっぽどいい加減なのか、或いはよっぽどここに携わっている人たちの性格が悪くて隠ぺい体質がものすごく根をおろしてしまっているのか。いづれにせよこんなに恐ろしい技術を扱う人々の心構えというのが一体どうなっていたのかと。危機管理と言う言葉を聞いたことがないのかと、思いますね。とんでもない話だと思います」

御厨

「武村さん、さっきもおっしゃいましたけども。これまでも汚染水漏れは何度か発見されたわけですよね、ここまでしかし大量のものが起きちゃったと。しかもそこに至るまで分からないと。これ、どういうふうにお考えですか。やっぱり発見できない」

武村

「私はよく分かりませんが、現場のみなさんは必死でやっているんでしょうけど。まあ報道もありますから、その時その時起こった事に必死で取り組むと、かまけると。で、もうちょっと先の事、5年10年先の長期的な連事で対応するっていうことが少し緩んでいるんではないか。その日の対応に追われて、それでもこんな失敗が続くと。現場のみなさんの責任論はもちろんあるんだけども、原子力の廃棄と言う大きな仕事から見れば入口の話ですね。汚染水をどう管理するかと言うのは、そこでこんなにモタモタしてる。ましてや廃棄物をこれから取りだして、どうするかという重大な問題が残っている訳でね。これはいよいよ大変になってきます」

御厨

「浜さん、どうでしょう」

「そうですね、こういう問題も含めて、なにかとこう不測の事態は起こらないとか、悪い事が起こることを想定してそれに対して準備をするというのは縁起が悪いとかですね。むしろ問題を呼び込むことになってしまうと、潔くないとか、色んな変な発想から最悪の事態を見据えて万全の態勢を取るという発想が特にこの原子力をめぐってはそうですけども、色んなところにそういう体質があると思うんですね。そういう現実を見据えない、現実を直視しない、嫌なことは見ないで済まそう、頑張りで何とか切り抜けられるんではないか、そう言うような発想がこういう問題を次々と起こしていくんだと思います。すごくやっぱりこれは未熟で幼い対応の産物だと言う気がしてしょうがないですね」