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第二九〇回('10年2月21日 放送)
 「大丈夫か、鳩山丸」
 〜景気はどうなる〜
 ゲスト: 武村正義 氏 / 浜 矩子 氏

― なぜ?実感なき「GDP4.6%成長」
御厨

「GDP4.6%成長。この数字どう思われます?」

武村

「実感からすれば、不況は続いているし、モノは売れないし、物価は下がっているし、所得や雇用も、マイナスが続いてる中で、なんでこういう数字だけプラスなんだろうと、違和感を感じますね」

御厨

「浜さん、なぜ今、こんなにGDPが上昇したのですか?」

「これは非常にやっかいというか、今の世の中でこれがプラスになればなるほど、経済の実態は悪いという風に言ってもいいと思いますね」

御厨

「と、言いますと?」

「単純に言えば、ものすごい安売りをしているからモノが売れる。だからGDPの数字は高く出ちゃう。これは『出血景気』ですね」

御厨

「出血景気?」

「もう本当に企業は損をしながら、労働者は賃金を買い叩かれながら、血を流しながら、何とかモノの生産を伸ばしている状態で、本当に極端な言い方をすれば『死に至る経済成長』みんなが辛くなっている」

御厨

「このデフレ状態を分かりやすく説明した浜さんの記事の中の一節です」

『ある若い主婦が、徹底した安物買いの追求で、家計防衛に頑張っていた。するとある日、夫がリストラされて、うなだれて帰宅した。夫を解雇した会社は、その主婦が喜んで、安物買いに日参していた小売店への納入業者であった』

御厨

「浜さん、もう少し詳しく説明して頂けますか?」

「これは、若い奥さんが投書された実話なんですけども。要するに、一生懸命少しでも安いものをと思って、若い奥さんが、今日も節約出来たなと思っていたら」

御厨

「はい」

「夫が帰ってきて、クビになっちゃったと。よくよく聞いてみると、その若い奥さんがまさに買った安いもの、その安いものを、お店に納入していたのが夫の会社で、より安いものを納入することを、夫が勤めてた会社は求められていたわけですね」

御厨

「はい」

「その会社がコストを削減していくために、人員を整理してさらにコストを安くすると。そういうプロセスの中で、結局、夫がクビになってしまった。自分の節約行為が、夫から職を奪ったという事になってしまったわけですね」

御厨

「つらい話ですね。どうしたら、このようなデフレ状況から脱却できるんでしょう?」

「これはすごく難しいのですが、1つには今、労組が賃上げ要求をやめていますね。賃金はいいから雇用というようなことで。これでは全然このような話は止まらないから」

御厨

「はい」

「労働側もあえて今賃上げを要求すると、それで企業側もあえてそれを受け入れる。受け入れてもらったら労組側は、一致団結して、安物買い止めるとか。そういう風にお互いに、支え合うと」

御厨

「なるほど」

「だから今は、労組と企業が対峙している場合じゃないんですね。両方で力を合わせて、デフレをとめる工夫をしようという発想を持たないといけない」

御厨

「武村さんどうでしょう?大変な感じがしますが」

武村

「私は、民主党政権になって、東南アジア各国と自由貿易協定を、積極的に結ぶような姿勢を出して欲しいと期待しているんですが、一向に進んでいませんね」

御厨

「そうですね」

武村

「こういう事も、もっと真剣に対応して欲しいし、私は、もうちょっと、金利を正常化できないかなと思うんです」

御厨

「と、言いますと?」

武村

「あまり超低金利で、お金がじゃぶじゃぶ余っている状況が続くと、国債をいくら発行しても売れるわけです。国債を買ってもらえるものだから、国も安易に国債にあぐらをかいてしまう」

御厨

「なるほど」

武村

「借金財政の背景にも、ゼロ金利とか超低金利がある。早く正常化すべきだと私は思うんです」

「おっしゃる通りだと思いますね。武村さんが、金利についておっしゃった事は、完全にその通りで、もう1つあえて言うならば」

御厨

「はい」

「あまり金利が低いと、その中でみんな何とか儲けようとするから、結構、危ない橋を渡るリスクをとるような事をして、それが結局、金融暴走をもたらすという問題もあるんですよ。また同じ事を繰り返す事になるという」

御厨

「武村さん、こうしたデフレ脱却のリーダーシップを鳩山首相は、とれますかね?」

武村

「鳩山さんにあまり経済政策まで、もともと期待をしていなかったんですけども、頑張って欲しいと思いますね」