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第二六一回 ('09年7月19日放送)
 「混迷自民党・混迷政治」
 〜なぜ駄目になったのか?〜
 ゲスト: 中曽根康弘 氏 / ジェラルド・カーティス 氏

― 「東京都議選」の惨敗に…
中曽根

「時代の推移と言いますか、今まで政治が鬱積しておって、それで国民の皆さんが『もう交代だ』という気分に流れて、そういう風が吹いているんですね」

御厨

「風ですか」

中曽根

「衆議院選においても、その風は止んでませんね。そういう意味で、今度の選挙はどちらが天下を取るか?天下分け目の選挙になる。ですから、私は関ヶ原合戦『関ヶ原選挙』だと言っているんです」

御厨

「自民党は、都議会で、野党になってしまいました。どうご覧になっています?」

カーティス

「千代田区でも、26歳の無名な民主党の候補者が当選したでしょ。それは実力があるからじゃなくて、今の流れとして『自民党は、もう十分だ』と、チェンジを求める国民の声の強い表れだと思いますね」


― 麻生首相の異例の「解散宣言」に…
御厨

「中曽根さん、こういう解散の告知は、あり得るんでしょうか?」

中曽根

「あり得ますね。任期が9月10日までですから、その間に解散をしなければならんという、そうすると解散を決まってるんですよね。いつやるかの選択が総理大臣に任せられてる。そういう意味で目を凝らしながら時代の流れ、世論の顔色の変化を見ながら、総理大臣が決めると」

御厨

「カーティスさんは、麻生さんの動きをどうご覧になりました?」

カーティス

「解散権を持ってるから、タイミングを自分で選べる。でも、タイミングが無いんですよ。どうせ9月10日までにやらなくちゃないし、早くやらないと『麻生降ろし』がどうなるか分からない。それで決めたと思うんだけど〜」

御厨

「思うんだけど〜」

カーティス

「麻生さんの行動よりも、麻生さんに反対する自民党の人達の行動の分かり難さというか、勇気の無さ。『麻生さんに反対だ』と言いながら、内閣不信任案の時に、麻生さんを支持したでしょ」

御厨

「そうですね。非常にわかりにくい」

カーティス

「自民党結党以来、一番の困難な時期だというけど、昔もあったんですよ。しかし、その時には『自民党の生き残る本能』が働いたんですよ。色んな意味で、政治家が動いた。今は動かない。動かないで文句ばっかり言っている、そういう感じですね」

御厨

「中曽根さんから見て、一連の『麻生降ろし』の動き、どうご覧になりますか?」

中曽根

「今の話のように、言葉はあっても行動が無い。そういう状況では、行動がないと駄目ですね。ですから20人でも30人でもたむろして、実際の行動で見せる。言葉だけじゃ国民が信用しませんね」

御厨

「そうですね」

中曽根

「昔も、総裁の考えと逆の方に投票する場合もあった。みんな決心してやるわけですよ。自分が次の選挙で、当選するかしないか、選挙民がどう思ってるか考えながら自分の将来の運命を賭して、自分の行動を決める。大変な決心をして、みんなやった」

御厨

「そうすると、中曽根さんからご覧になると、今の人達は、決心の度合いが薄いということですね」

中曽根

「昔よりは行動が伴わない。言葉はあるけれども、行動が不十分だと思いますね」

カーティス

「自民党は、今、パニック状態で、どうしたら良いかも分からなくて、やる事、やる事が、自分たちの人気を落とし、国民の反感を呼ぶようなことばっかりをやってるのを見ていると『呆れる』としか言いようがないですね」


― どうして新しいリーダーが生まれないのか?
中曽根

「今のところ後継者が見えないですね。ですから色々集団が出てきたり、議論してたりしてますけど『誰が良いんだ』と、答えが出てない。だから迫力が無い」

御厨

「ですから『麻生降ろし』も、不発に終わる。どうして自民党は、リーダー不在で、数で固まって動くことが出来なくなったのでしょうか?」

中曽根

「これは自民党のみならず、今の時代というものが、そういう時代で。昔はやっぱり政治でも、経済でも他のなんでも、皆たむろしたもんですよ。今、たむろしないですね」

御厨

「交通や通信が便利になった。やっぱり人間が、人間臭く固まる習性がなくなって、合理主義になって、それでテレビでも何でも、物事が早く過ぎ去っていく。そういう時間帯の変化もあって変わってきたんですね」

御厨

「ということは、自民党だけでなくて、日本の社会そのもののリーダーを選び出す時の素地が変わったということですか。いかがですか、カーティスさん?」

カーティス

「そのとおりだと思うのですが、自民党のリーダーとか、政治家らしい政治家が少なくなったのは、僕は小選挙区制の影響が非常に大きいと思います」

御厨

「なるほど」

カーティス

「昔の中選挙区制度だったら、自民党内でも3人ぐらい候補者が出て、同じ選挙区で、争いがあった。自分が上手くやらなければ、新人に負ける。そういう緊張感があった」

御厨

「はい」

カーティス

「でも、小選挙区制になってから、公認されれば、選挙区に、自民党の候補者は、自分一人。公認さえとれば、選挙は大丈夫だろうと、緊張感が全く無くなって、勉強もしない。国民に耳を貸すようなこともしない」

御厨

「なるほど」

カーティス

「その間に、日本の社会は非常に変わってきて、組織票は動かない。票をまとめる力のある人がその力を失う。今度、自民党が惨敗する可能性が出てきたのは、そういうことじゃないかなと思うんですね」