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第二五七回 ('09年6月21日放送)
 「かんぽの宿。そしてこれから…」
 〜緊急政局〜
 ゲスト: 野中広務 氏 / 鳩山邦夫 氏

― 日本郵政・社長人事問題 ドキュメント!鳩山大臣更迭まで
御厨

「西川社長の後継者リストがあったと?」

鳩山

「私は総理から手紙を頂いて『西川後継でお悩みでしょう。例えばこんなのは、あくまでも参考ですけど。どうですか?』と。公表したわけじゃないけど、そういう話をしました」

野中

「麻生さんも、それなりの情報が入っておったから、西川さんでは無理だということで。『かんぽの宿』をはじめ、もう深い深い底の見えないような事がありますよ。だからそういう事で『この際は』という気があったと思うんですよ」

御厨

「後継者リストをもらったのは、いつごろですか?」

鳩山

「私が、3月31日に、日本郵政の今年の事業計画について『かんぽの宿をきちんとやれ』と、そういう条件付きで認可をした。しかし、疑問点がいっぱいあるんで4月3日『業務改善命令』を出した。その頃ですね」

御厨

「どんな風に渡されたのですか?」

鳩山

「後継者リストというのは『この中から選べ』ってことじゃなくて『あくまでも参考だけども、こんな人はどうですか?』ということで。僕は『総理は、暖かいな』と思って、すぐ事務方に検討するようにと申し上げたんです」

御厨

「では、途中まで西川社長を代えるつもりだった麻生さんは、いつ頃から変わられたのですか?」

鳩山

「まぁ、『とにかく西川さんを再任しなければダメだ』と脅しをかけられたのか、どうだかわからないんですけどね。急に変わられましたよね」

野中

「小泉さんがフランスからか、どっからか帰ってきましたね。あの辺りからですね。麻生さんの発言が、やや変わってきたんじゃないかなと、私は思いましたね」

鳩山

「補正の予算委員会ですか、その頃は『どうするんだ』と聞かれて『総務大臣が適切に処理すると思う』と、繰り返しておられたのですが、その頃は、大分いろんな圧力が掛かっていたのかなと」

御厨

「野中さん、麻生さんはどうすれば良かったと?」

野中

「それは、総務大臣に任せるべきですよ。円滑な日本郵政の発展を考えるべきだった。もう民営化したんですから、その中で不透明なところをキチンと改善をしていく。そういう日本郵政にする努力をすべきだった」

御厨

「鳩山さんは、辞任の日、総理と2回お会いになってますよね。1回目は、どういうお話だったんですか?」

鳩山

「最終確認みたいな話しで『西川の続投は飲めませんか?』と。『絶対飲めません』。『そうですか』という事で『じゃあ午後もう一回お話をしましょう』という事でした」

御厨

「なるほど」

鳩山

「あまり悪口は言いたくないが、私は、今の総理官邸というところは、総理の周りがどうしようもないと思います。変な案が、いっぱいあるんですよ。例えば『西川さんを社長から会長にしたら良いでしょう』とか。冗談じゃないですよね。社長の上に君臨する話だ」

御厨

「そうですね」

鳩山

「取締役を認可するのが総務大臣の権限なんですが、だから、私は社長を決めたり、会長を決めたりする権限はないんです。私が『認めない』と言うと、西川さんは取締役から外れるんだけど、それでも代表執行役社長は出来るわけですよ」

御厨

「なるほど」

鳩山

「結局、色んな案があって、色んな事を言われましたよ。最終的には西川さんが、詫び状のようなものを書いて、総務大臣室に来て、私に頭を下げて『色々不備があったけど、これから頑張る』と言って、頭を下げる。『土下座論』なんですよ」

御厨

「そうですか」

鳩山

「私は『それは絶対にダメだ』と。だって私は西川さんと喧嘩をしてるんじゃなく、日本郵政の汚れた部分と喧嘩してるのだから、謝るべきは国民に対して謝るべきであって、私に謝って済む話ではない」

御厨

「2回目の会談は?」

鳩山

「『辞表を書いてください』と言われて、書きました」

野中

「辞表が、用意してあったのとちゃうんか?」

鳩山

「はい。用意してありました。私は、最後に言ったかな?『株主総会の6月29日まで、待てませんか』と。株主総会で9人の取締役で留任になるのかな、それを財務大臣というか、与謝野馨さんが『OK』したとしますね」

御厨

「はい」

鳩山

「それを私が『認めない』と。『その総務大臣の権限を行使して、内閣不一致で、私が辞任するのはダメですか?』と言ったら、総理は『ダメです。待てません』と」

― 「かんぽの宿」の闇
御厨

「『かんぽの宿』は、何が一番問題だったんですか?」

鳩山

「まず『かんぽの宿」というのは、私は、氷山の一角だろうと思うんです。表面に現れた、誠に不祥事というか、国民の共有の財産を掠め取ろうとした事件で、本当は私は巨悪は色々潜んでると思います」

御厨

「なるほど」

鳩山

「『かんぽの宿』は、税金じゃないんですよね。簡易保険に加入した人達が、爪に火をともすようにと言うか、積み上げてきたお金。それで『かんぽの宿』を作り過ぎたという議論は、別にして、2400億円の価値があると。実際に売買すれば、1300億円とかになっても良いものが、マジックなんですよ」

御厨

「と言いますと?」

鳩山

「『もっと下げろ。もっと下げろ』と言うのを、日本郵政が内部でやってますから、いずれ証拠物件が出てきますよ。もっと下げて、要するにオリックスに、不動産に少しでも安く売るために『下げろ〜、下げろ〜』という指示が出てるわけですよ」

御厨

「そうなんですか」

鳩山

「宮内さんは『公的な宿泊施設とかは売却しろ』という規制緩和の政府でまとめた方でしょ。まとめた方が『じゃあ、自分で受け取ります』というのは、李下に冠を正さず、じゃないですか。そういうことは、絶対やるべきではない」

御厨

「はい」

鳩山

「ありとあらゆるところに問題があるんだけど、重要なのは、税金の無駄遣いをして良いとは言いません。だけれども、簡易保険で積んだお金が、そういう形で国民共有、あるいは簡易保険の入っていた人の共有の財産が、特定のところに、濡れ手に粟で渡すなんて、絶対に認められない、と言うのが本質ですね」

御厨

「野中さんは、いかがですか?」

野中

「今回は、始めから利権ありきなんですね。あるいは外国の金融資本をなんとかしようとする、そういう接点から動き出してる。そこに郵政民営化の根本的なものがあると私は思いますね」

鳩山

「あのね、こういう紙にですね、アメリカとの打ち合わせ、無数にやってるリストがあるんですね。全部、黒で印を付けてあって、名前を消して。これを総務省が委員会に提出しておったんですよ」

御厨

「そうですか」

鳩山

「私は委員会に『この黒をオープンにして出し直せ』って言ったんですよ。それからどうなったという事は、私は検察じゃないから何とも言えないけど。何で郵政民営化に関して、徹底的にアメリカと話し合わないといけないのか、疑惑は疑惑を呼びますよ。ねぇ、野中先生そうでしょ」

野中

「そうですよ」