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第二四九回 ('09年4月26日放送)
  「動く世界の中で」
  〜迫る選挙の足音〜
  ゲスト: 加藤紘一 氏 / ジェラルド・カーティス 氏

― どうなる!?小沢代表の進退問題
御厨

「小沢代表の進退問題は、本当に深刻な状況になってきましたね」

加藤

「民主党の議員と議員会館のエレベーターの中でしょっちゅう会うんですね。すると顔を見合わせて『お互いに大変だね。色々親方問題で〜』と言って黙っちゃうんですけどね」

御厨

「そうですか(笑)」

加藤

「民主党が今、もう1つの自民党になりつつある。自民党というのは大人の政党ですから、色んな計算をして、発言をするわけですよ。ところが野党であり、新しい民主党は、一種のフレッシュな正義感が売りだったのに、それが時間ごとに消えていくような気がします」

御厨

「カーティスさんは、民主党のこの問題を検討する第三者委員会に出席したと伺ってますが?」

カーティス

「はい。委員会は4人の方々がやっていて、私は話をしに行ったのですが、検察は依然として、なんでこのタイミングで、小沢氏の秘書を逮捕したか、十分に説明責任を果たしてない」

御厨

「そうですね」

カーティス

「ただ、それと同時に問題なのが、政治指導者は、自分の行動について、国民に顔を向けて説明し、それで国民を説得する。これが民主主義政治の基本です。しかし、小沢さんが、全然その責任を果たしてないのは、大問題ですね」

御厨

「なるほど」

カーティス

「今、加藤先生がおっしゃったように、もう1つの自民党になりつつあるという面もあるけど、自民党の歴史の中で『今の党首は辞めるべきだ』と言う人が、誰もいない、ということは無かった。必ず、派閥の争いもあったし、言いたいことを言う政治家がいるわけですね」

御厨

「はい」

カーティス

「今の民主党の中には1人も『辞めなさい』と言う人がいないのは、いかにも『小沢党』という、民主党にとって、非常に損するイメージを強めるだけだと思いますね」

御厨

「なぜ小沢一郎という人には、『辞めろ』と言えないんですか?」

加藤

「威厳でしょうかね。それから小沢さんは、自分に批判的な人を遠ざけるし、近かった人でもちょっと諫言すると、さっとその瞬間ダメになります。だから意見を言わないようになってくるんですね。みんな『蛇に睨まれた蛙』みたいになっちゃってる」

御厨

「加藤さんは、著書『劇場政治の誤算』の中で『小沢氏は国会議員を怒鳴ったり、無視したり、時には自分に近づくように、仕向けたりするような、自民党的懐柔策をしっかり会得した人です』と書いておられますね」

加藤

「『無視する』って書いたのですが、ある日、突然呼ばれなくなるんですよね。昨日まで毎日、ずっと側近として話をしていた、そしたらある日、理由なく遠ざけられるんですね。そこがなぜか分からない。そうなると怖くなるんですね、付き合うことに」

御厨

「突然お呼びじゃなくなる?」

加藤

「そうです。そこで『いや、君がこんな事を言ったから、僕は君を遠ざけたんだよ』と説明しないのが、小沢さんで、これは極めて昔の保守政治家的です」

御厨

「そうすると、民主党の中に昔の保守政治家が乗っかっている状況ですね」

加藤

「そう、民主党はフレッシュな新人の集まりだから、大将がいない。だから小沢さんが、大連立をやった後も『この民主党は、政権を取っても上手く行かない政党なんですよ』と言っても、党首にしちゃう」

御厨

「小沢さんは、よく口下手だと言われますが?」

カーティス

「口下手は、言い訳にならないでしょ。昔の自民党だったら、党内の派閥の支持を得れば総理大臣になれるし、それを維持できる限り総理大臣でいられた。しかし、時代は変わった」

御厨

「はい」

カーティス

「21世紀の政治家は、国民を説得することが必要。口下手という方が、今の時代のリーダーの資格はない。やっぱり政治家は、コミュニケーション能力がないといけないですね」