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第二四二回 ('09年3月1日放送)
  「どうする・どうなる」
 〜さあ、スタート「ポスト麻生・自民党」〜
  ゲスト: 塩川正十郎 氏 / 片山善博 氏

― 初の日米首脳会談を終えて・・・
御厨

「オバマ大統領が、ホワイトハウスで行った最初の首脳会談だったわけですが・・・」

片山

「日本の総理大臣は、オバマ大統領には、いわば気楽に会える存在だったと思うんです。仮に日本の総理大臣が、国内で非常に支持率も高く、日米間の難しいことを突きつけるということだったら、準備も必要だし、協議もしないといけないけれど、まあ、こんな状況で、そんなに難しい話を持ち出すわけもないし、まあ気楽に、演説の前に会えるということで、日本が一番だったということではなかったかと」

御厨

「なるほどね。共同記者会見もなかったし、昼食会もなかったし、塩川さんは、どうお考えになります?」

塩川

「まるでなんか皮肉った見方ばかりしていますけども、日米関係の協力というものが、これからの経済の回復に、非常に重要だということじゃないでしょうか」

御厨

「アメリカが、大型の経済政策すると巨額の赤字が出る。そのための国債を買ってほしいと、頼まれたりはしていませんかね?」

片山

「実際には、よく分かりませんけども。アメリカは、日本に国債を買ってもらいたい。それから、今、日本が持っているアメリカ国債をむやみに手放さないで欲しいという意図は伝えてきただろうと〜」

御厨

「う〜ん」

片山

「私は、今回、一体、日本の総理が、アメリカに何を言いに行ったのか、ということに非常に関心あるんですよ。首脳同士が会うわけですから、やはりこういう時期にきちっと日本のメッセージを伝えなきゃいけないですよね。そのために、どういう準備をして、何を伝えたのか。ひょっとしたら伝えたのかもしれませんけど、わかりませんよね」

御厨

「あまり表には出てきませんね」

片山

「例えばね『Buy American』を、やろうとしているじゃないですか。あれは絶対やめるべきなんですよね。ブロック経済化しますから。1929年の恐慌以来、そういう轍をふんでますから。だから例えば「『Buy American』は、止めてください」とか「もっと、自由貿易をお互い進めましょう」とか、そういう話であれば非常に意味があったと思うのですが、そんな形跡もないし、ちょっと残念ですよね」

御厨

「外交日程が目白押しですが、内政の状況が、これだけ良くない時に、外で約束をしても、結局、内側の支えがないと、ダメな気がするのですが?」

塩川

「そこはですね。信頼関係というものがありますから。日本の国民のみなさん、よう承知してくださいよと。アメリカは、日本を相手にしているんですよ、ということじゃないでしょうか」

片山

「私は、もっと外交に行く前に、国内でよく固めなきゃいけないと思うんです。アメリカに行くなら、アメリカに何をぶつけるか、アメリカからいろいろ言われた時に、どうするか?国内の世論も、それから、政権の中枢も、やはりしっかりと意志を固めなきゃいけないと」

御厨

「なるほど」

片山

「なんか今回の場合は、一番乗りということで、ちょっとあせった姿が見えなくもない。日本によくありますよね、一番乗り。例えば『ハリーポッター』が発売になるというと、徹夜で並ぶとか。非常に無駄なところにエネルギー使う。それよりも、じっくり寝て、ちゃんと本を読むという方がいい。ちゃんと検討して、じっくり議論して、それからじっくり臨むという方が、よかったと思いますね」

― 給付金法案の採決はどうなる?造反宣言の小泉元首相は、どうする?
御厨

「今週の水曜の採決。小泉さんの『私は欠席する』発言。塩川さんは、どうご覧になります?」

塩川

「まあ、小泉自身の発言ですから、私がとやかく言うことではありませんけれども。この問題の奥には、郵政民営化の問題に対する麻生さんの態度といいますか、失言しましたね、国会の場で。『奇人変人だ』と。ああいうことはやっぱり言ってはいけないですね。ああいうことで頭にカチンときていた時の関連として、こういうことをやっているというような感じがしますね」

御厨

「片山さんどうでしょう?」

片山

「私は、ちょっと苦笑したんですが。『3分の2』を使ってまで、成立させなければならない法案だとは思っていないと。郵政民営化法案というのは、大半の人はそうだったと思うんですよ。でも、あえて小泉さんは、自分の意志で『3分の2』を使ってやったんですよね」

御厨

「そうですね」

片山

「今回、自分は、定額給付金には反対で『3分の2』は使わなくてもいいと言っていますが、実は、前回の裏返しで、結局、自分に振りかかってくる問題だと、私は思いますけどね」

御厨

「でも、なぜ、定額給付金のことまで言っちゃったんでしょうか?」

塩川

「これはね、私の見方によりますと、小泉さんの援護するわけではありませんが、要するに『3分の2』というのは、総理大臣として非常な決意する時に、行使するべき権限であると。そうであるのに、その『3分の2』を定額給付金という制度のために使うのかと。こういう『ばら撒き』は、そんなにまでして、しなきゃならない問題か、という意味だと、私は解釈しているんですが」

御厨

「なるほど」

塩川

「要するに、政治的価値判断の問題だと、そう、見ておるんです」

御厨

「なるほど。本当に欠席するんでしょうか?」

塩川

「それは、わかりませんよ。本人に聞いてもらわんと(笑)」

御厨

「欠席した場合、小泉さんは、やはり処分されるんですか?」

塩川

「それはまずいな、という社会的制裁の方であって、党内規則によって法律的にするということは、できないんじゃないですか」

御厨

「う〜ん。処分したら、小泉さんは離党しますかね?」

片山

「いやどうでしょうかね。一時の小泉さんの人気というのは、今、国民の間に、もうないですからね。それはいろいろ理由があって『三位一体改革』とか『構造改革』とか、負の面が、今、いっぱい出てきていますので、それに対する反発がありますよね。あともうひとつ決定的に小泉神話が崩れたのは、やはり、息子を後釜に出すというあの一件だったと思うんですよ。あれは、本当に効きましたね」

― ついに、麻生内閣 支持率10%代!不支持率80%!
御厨

「不支持率が、80%というのは、通常考えられないと思うんですが」

塩川

「だいたい不支持率と支持率というのは、裏表になっていますね。私は、過去をずっと見ましてね、支持率が30%代になった場合は、秋の空ですね。たぁーと暮れていきますね。もう落ち込むのは早いと思います。それは空気ができちゃうんですね。この内閣は駄目だ、という空気ができてしまう」

御厨

「なるほど」

塩川

「ですけれども、そこでうろたえてしまって、内閣が方向を間違ってダッチロールなったらいかんと思うんです。麻生首相には、いろいろ道はあるけれども『任期満了』。ここに腹を据えてやるべきだと思うんです。そして、予算関連法案、重要な税制だとか、ソマリアの関係法案ですね、それから公務員の問題、このような重要な政治問題は、これこそ『3分の2』を使ってでも、自分の責任できちっと法律的な決着をつけておくというようなことが大事だと思うんですがね」

御厨

「片山さんは、いかがですか?」

片山

「私が思うのは〜我々のこの社会の約束事である『間接民主主義』『代理性民主主義』つまり、代表者によって政治を行うというこの仕組みには、ひとつ条件があるんですよね。それは、選んだ側、つまり国民の側と為政者の間に信頼関係があること。信頼関係があれば大概のことは、まあいいかなと収まるわけです。しかし、これがないと、為政者がやることに対して、国民は心服しませんよね」

御厨

「そうですね」

片山

「今、かなり危機的な状況です。もう9割というか、1割の人しか、信頼していないということですよね。あとは、信頼していないわけですから。独裁国家でも一割近い支持はあるかもしれません。ですから、私は、今、日本の民主主義は、かなり危機的状況に陥っていると思いますね」