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第二四一回 ('09年2月22日放送)
  「へろへろで」 〜今週ヤマ場〜
  ゲスト: 渡部恒三 氏 / 寺島実郎 氏

― 中川財務相 衝撃の「もうろう会見」に・・・
渡部

「これは本当にね。国民の皆さんにも申し訳ないですし、世界の皆さんにも恥ずかしい。私は議員生活40年になろうとしているんですが、こんなに残念なことは、初めてです」

寺島

「この1週間、世界の歴史がパラダイム転換するぐらい激しく動いているのに、日本は酩酊してるといいますか、その象徴みたいな話だと思いますね」

御厨

「でも、世界が注目しているところで、なんで?」

渡部

「だから、国内でだってこのようなことは許されませんよ。それを今、世界中がどうするかっていう非常に大事な国際会議の記者会見で、日本の代表の政治家が、こんなことをするのは考えらない。しかし、彼の酒癖が悪いというのは、昔から定評があったんですよ。ですから彼を大事な大臣にした麻生君の任命責任もあると思いますよ」

御厨

「なるほど」

渡部

「しかも、そのあとが〜。少なくともこの映像が報道された瞬間に、もう麻生君が彼を罷免しないと。それを辞めないと言ってみたり、今度は、予算が通ったら辞めますって言ってみたり〜」

御厨

「どうして、麻生首相は、最初、中川さんを庇ったのでしょうかね?」

寺島

「中川さんというのは、麻生内閣の政策論の機軸だったと思うんです。そういう意味もあって、瞬間、庇わざるをえないという力学が働いたんだと思います。しかし、それが逆に命取りというか、緊張感の欠落というか、要するに、僕はいつも思うのですが『陣中戯言なし』という言葉がありますね、侍の世界で陣中で戯言を言ってたら、即刻、責任を取らなきゃいけない。国会とか国際会議は、政治で飯を食っている人にとっては、陣中ですよね。その陣中で 戯言というか、このようなことで、国民に迷惑をかけるのは、本当にもうこれだけにしてほしいです」

御厨

「そうですね」

寺島

「それに、この話をこれ以上議論することがどうかなと思うのは、まさにこのことで意味のない空白が、日本の政治に起こっているわけです。何とか緊急経済対策を、与野党がそれこそ協議会開いてでも、日本としての緊急対応策を世界に向けて発表し、真剣に立ち向かっているんだということを示さないといけない瞬間に、国会もこれを追及することで、時間が空費されていくと。これを超えていかないと、この国は外から見た時に、愚かなる国というイメージをどんどん作り上げてしまうのではないかと思うんです」

― 小泉元首相の「造反」宣言に・・・
御厨

「そうとう小泉さんは、怒っていますね。元首相が造反というのも、相当な異常事態だと思いますが?」

渡部

「これは私が、たまたま予算委員会で、郵政民営化の問題を議論した中で、麻生総理に、あのときの国会には、100本ちかい政府の法律が出ていたのに、その中の1本が参議院で否決されたからといって、自分の党内事情で、あの解散したのは間違いだと思わないのかと質問をしたら、そのとき、麻生君が『あのひとは変人奇人ですから』なんて、僕が聞いてないことまで言って、小泉君を怒らせちゃったんだね〜」

御厨

「これも余計なことだったんですね」

渡部

「そうですよ。郵政民営化が良かったか、悪かったかという議論のところで、小泉君のことを、仮にも自分の先輩の総理大臣でしょ。それを変人奇人だなんて、予算委員会の席上で野党の質問に答えるなんてことも、常識はずれでしたね」

御厨

「寺島さん、どうですか?」

寺島

「モスクワでの小泉さんの記者会見を見ましたが、目つきが小泉さん独特の思いつめモードといいますか、目が据わったようになっていますから、欠席しないわけがないと思います」

御厨

「なるほど」

寺島

「でも私が申し上げたいのは、郵政民営化を小泉さん自身はどう総括しているのかということです。改革の本丸だということで、ぶち込んで『3分の2』をとったわけです。そのことから、これだけ時間が経って、結果、我々は、その一部を見始めている。例えば『かんぽの宿』の問題について」

御厨

「そうですね」

寺島

「小泉さん自身はどう思うのか。ありとあらゆる魑魅魍魎が郵政民営化に群がって、最初の志が、どうだったかは別にして、現実に、とんでもないことが起こっていて、世界中を今、経済混乱に陥れている主体のひとつである投資銀行のひとつの会社が、6億円のコンサルタント料とっていたということに、僕は本当に衝撃を受けるんですよ。そんな風にして郵政にまとわりついて、もうこの話を本当にボロボロにしてしまった人達がいるということについて、本来の志とそれがどうして捻じ曲がったのか、小泉さんは、責任をもって答えなきゃいけない立場にある思います」

― 麻生首相 初の日米首脳会談へ・・・
渡部

「私は、オバマさんが、大統領に就任して、最初に日本の総理をお招き頂いたのは、非常にありがたいことだと思っています。しかし、麻生君の状態を見ると、オバマさんに申し訳ないというか、オバマさんが気の毒だというか。だって明日辞める総理大臣とアメリカ国民から熱烈なる支持を受けてなった大統領と、全然ちがうでしょう。それが最初の首脳会談というのは、世界にとっても残念なことだと思います」

御厨

「ヒラリーさんもね、日本に来ているときに、ちょうど中川騒動が起こって、なんだか日本の報道は、ほとんどそっちにいかなかった・・・」

寺島

「クリントン国務長官が、まず日本に来たということとか、その際、日米首脳会議がどこよりも先の首脳会議として行われるということで、日本が重視されているんだという話で理解されがちなんですが、これは、まさにアメリカのオバマ政権が、日本に対する役割期待を高めざるを得ない構造になっているということを我々はよく理解する必要があると思うんです。例えば、アメリカの8000億ドルの緊急経済対策。これは必ずたいへんな税制赤字を招きます。で、それは当然のことながら、国債で支えなきゃいけない。では、国債は誰が買うのか?」

御厨

「なるほど」

寺島

「今までは、日本、中国、オイルマネーが支えた。でも、オイルマネーは縮んだ。そして、中国もしたたかに、警戒心あらわに、これ以上はアメリカの国債は〜というスタンスをとり始めた。要するに、アメリカの再生をかけて、国債という問題は、日本に役割期待を高めざるを得ない」

御厨

「そうなんですよね」

寺島

「したがって、今回、麻生首相がアメリカに行かれたら、仮に日本がアメリカの国債を引き受けるにしても、例えば円建て国債のようなドルの下落を招いても、日本の不利益にならないような条件をしっかり語るとか、そういうスタンスでいかないと、国債の引き受け問題、米軍再編問題、パキスタン、アフガニスタンへの展開。全部、日本に対して、よろしくという気持ちが、ものすごく高まっていますから、それに対するしっかりしたスタンスをもっていかないと、まずいなと思いますね」