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過去の放送 出演者 時事放談「サロン」 テレビプロデューサーの日々
 
 
第二三九回 ('09年2月8日放送)
  「国会論戦は始まったけれども・・・」
  ゲスト: 加藤紘一 氏 / 増田寛也 氏

― 麻生首相 定額給付金 もらう?もらわない?
御厨

「麻生さんが、給付金を『オレはもらわねえよ』と、党役員会で言った、言わないと騒ぎが大きくなっています。そもそも麻生さんは、去年は『もらわない』と言って、今年に入ってからは『高額所得者も、もらうべきだ』と、そこには多分、ご自身も入ってると思っていましたら、ここにきてまた『もらわない』と、二重三重に迷走している感じがしますね」

増田

「年初めに、政府与党で協議して、高額所得者も含めて、景気対策でどっと使おうと論争があって、それで大体集約したと思っていたんですがね。総理の本心としては『さもしい』とか『矜持の問題』とまでおっしゃったので、もらいたくない、という気持ちがあるのでしょう。しかし、一度この政策は、景気対策ということで整理をされた訳で、そこに改めて、総理が、個人の感情や気持ちを持ち込んではいけないと思います。各自治体も手続きに入っているんです」

加藤

「この論争は、もうそろそろ打ち止めにしたらどうかと。私は政策が打たれた原点は、石油も上がったし、パンも上がった。生活防衛の為に、公明党さんが低額収入の人に、何らかの手をと。ですから、そういう原点に返って、私はもらいません。そうすると自分の住んでる鶴岡市の収入になるのかと思ったら、国に帰るんですね。だから、これで国家の為に貢献というつもりもないんですけど、やっぱり政策の原点に戻って、遠慮します」

御厨

「そもそも、定額給付金には、世論調査では国民の7割が反対している状況ですが」

増田

「右に行ったり、左に行ったり、迷走しましたしね。ですからそういう所が影響してるんじゃないでしょうか。また、社会が今、厳しい中で、殆どの方がもらうと思うのですが、またそれに大変期待してる人もいます。逆にそういう方から見ると、1万2千円か、という気持ちも、一方で、あると思うんですよね。もっと大きな額を!とか。それは財政的に無理なんですけど、だからそういう気持ちがあって依然として釈然としない気持ちがあるのじゃないでしょうか」

加藤

「これは所得制限を行政的に入れて、一定の水準以下の方だけに、更にもっと厚くして、上の方は出さないんだよ、という風にすれば良かったんですが、そのためには税をとるための税務署のデータを使って良いという法律を直さないと出来ないんだそうですよ。個人情報保護法で」

御厨

「なるほど」

加藤

「それが、野党の反対で法案が通らないだろうという事で、所得制限を出来ないというところから迷走したんだと思います。じゃあ、みんなに配らなくちゃならない。そうすると、その時に『消費税を3年後に上げる』という話が出たもんだから、『もらえといった挙句、3年後、取り返すのか。そんなのは愚策だね』という話になって、不幸な経過を辿ったわけですから、原点に返るべきだと思いますね」

― ひどい!公務員の『天下り』『渡り』問題のポイントは?
増田

「私も役人やっていましたしね。今出ているのは、実は、まだ氷山の一角かもしれないですね。はっきり言いまして。今、ちょうど各省の人事課長とか、あるいは官房長などの最大の仕事というのはOBの就職をどうするかなんですよ。人事課長の仕事は、8割ぐらいそれじゃないでしょうかね」

御厨

「そうなんですか」

増田

「戦前は、高等文官試験で、本当にごく一部の人間が大学に行って、その中で限られたエリートを養成するような仕組みだったのでしょうけれども、もう世の中が随分変わりました。だから公務員試験に通ったからといって、まだこういう事がずっと続いていることは、国民から見て、あまりにもかけ離れてますよね」

加藤

「これからは、官僚もちゃんと60歳まで役所で働くべきだと思いますね。同期が、局長になっても、次官になっても、世間の常識から考えたら」

御厨

「そうですね、官僚の場合は、同期が局長や次官になると、あとの人たちは辞めなければならない。このシステム自体が、時代に合わなくなったという事でしょうか?」

増田

「そうですね。同期の中から1人トップである次官を出して、そして、その人がピラミッドシステムの中で頂点になるとすれば、今の仕組みでいえば、その他の人たちの働き場所として、天下りは必然的なものとなってしまう。だから、今度の公務員制度の改革の要点というのは、60歳まで、定年まで、キチンと役所で働く。同期が、次官、あるいは局長になっても、同期のその他の人達も、専門的な職として、違う分野でその専門性を活かすような部署で働く」

御厨

「そうですね」

増田

「それから、実は、今度の公務員制度改革の前に、私の持論は、入り口つまり採用の段階でも、各省庁の作業じゃなくて、本当はもっと広い採用にすべきだと思うんです。要はマスコミだって、政治部とか、経済部とか色々分かれていますが、会社として一括で採用していますよね。中央省庁の場合には、新聞社でいえば、政治部長が採用したり、経済部長が採用する。そういう仕掛けになっているんでね。やっぱり、一本で一括採用するとか、入り口のところから、官僚の養成システムを全部見直す必要があると思いますね」

御厨

「なるほど。そして今、麻生さんが進めようとしているのが官民人材交流センターを中心とした公務員制度改革です。とにかく内閣府に人事を一元化しようという話ですけど。人事院の谷総裁は、人事院の独立性を主張して、対立をしているわけですね。最初の会合には出てこなかったという事ですけども」

加藤

「やっぱりあんな騒ぎにならないように、担当大臣がちゃんと説得して、出てこい、と根回ししておかなきゃいかんと思います」

御厨

「政治家が、なめられてる感じがするんですけど(笑)」

増田

「確かに人事院総裁、人事官ですね、最高裁判所の罷免のときに弾劾手続きがじ必要なんで、基本的には完全な独立機関であるんです。また労働基本権との関係ありますから、議論は必要だと思うんですが、少し殻に閉じこもり過ぎているのではないかと。どうも見ても今回は、結局、政権が短命に終わるとかですね、この問題は延ばせば延ばすほど、消えていく問題だと見限って、徹底的に時間を延ばそうと思っているんじゃないでしょうか」