御厨 |
「カーティスさんは、選挙戦の参謀の1人だったと伺っていますが、オバマさんはどんな人ですか?」 |
カーティス |
「オバマさんの魅力は、難しい事を誰が聞いても分るように、非常に分りやすく、正直に丁寧に喋ること。国民に顔を向けて喋る。説得力がある。それでいて、冷静なんですね。今は不況で、戦争を2つもやってるし、パニック状態になりやすいんですが、その中でもオバマさんは、非常にクールで落ち着いている」 |
御厨 |
「武村さんは、どこに注目を?」 |
武村 |
「彼は、白人と黒人の両親から生まれたし、インドネシアというアジアの一角でも子供時代過ごしている。色んな事を彼は経験してきて、そこから学ぼうというか、そこから彼の新しい考え方が浮かび上がってきているようだ。合衆国は1つだ、と盛んに強調しましたが、今度の演説でもアラブの事を言ったり、貧しい国の事を言ったりしている。世界は1つだと、そういう考えでやってくれるかなぁと期待を持ちます」 |
御厨 |
「就任演説なのですが、カーティスさん、どこがポイントでしたか?」 |
カーティス |
「まず、この演説は歴史に残るような名演説ではありません。しかし、特別なキャッチフレーズを使ったりする必要はなかった。黒人が大統領になったのを見るだけでも歴史的にものすごい事だということです。また、大変な時だからとにかく真剣に真面目にやりましょうと。その中で非常に重要だと思ったのは、今、アメリカがこういう風な状況になっているのは、我々みな国民にも責任がある。厳しい選択をしなかった、その失敗のつけが回ってきた、
と言ったこと」 |
御厨 |
「なるほど」 |
カーティス |
「もう1つは、小さな政府か、大きな政府かの問題ではなく、政府が適切な仕事をして、機能を果たすかどうかだと言ったこと。この8年間のブッシュ政権では、あまりにもその事をしなかったから、これからやるべき事をやる。それでみんなが責任をとって、やらなければならない、というメッセージが大きかったと思います」 |
武村 |
「選挙の時は、Yes We Canとか、Changeとか、盛んにおっしゃって、みんなを引き惹き付ける演説の上手い人だなという見方をしていたんですが、今回はそういう意味では落ち着いた、格調の高い、深みのある演説なんで、あれ?と思いました」 |
御厨 |
「そうですね」 |
武村 |
「自己犠牲とか、どこかケネディの演説に似ている内容が、強調されていて、共通の目標に向かってアメリカを再生していこうと呼びかけている。また、建国以来のアメリカを振り返って、我々は大きな危機を乗り越えてきた。だから今、目の前にある危機も国民と一緒に乗り越えていけるし、いこう、と呼びかけているなと思いました」 |
御厨 |
「黒人の大統領ですが、白人の支持率はどうなのでしょう?」 |
カーティス |
「それも圧倒的に高いですね。今は共和党の人からも支持があります。僕の感じでは、今、アメリカ人の多くは、オバマさんを見るときに顔の色なんか意識しない。彼が大統領になった意義は、黒人がなった意義ではなくて、21世紀にふさわしい問題意識があって、説得力があることだと。彼は、国民に『大変だよ』と言いながら安心感と希望を与える」 |
御厨 |
「なるほど」 |
カーティス |
「ですから、どこまで上手くやれるか分りませんけど、白人も黒人も、ヒスパニックもアジア系アメリカ人もみんな応援しているんですね。成功して欲しいと」 |
武村 |
「私個人としても、非常に期待しています。アメリカはブッシュ政権の時に、京都議定書をはじめとして、地球温暖化に対しては世界にブレーキをかけてきた。全然前向きじゃなかったですね。そういう意味では、環境問題にアメリカがポジティブになって基本的な姿勢がチェンジすることを期待します」 |