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第二三六回 ('09年1月18日放送)
  「なぜ通るのか?」
  〜政権の正統性〜
  ゲスト: 塩川正十郎 氏 / 片山善博 氏

― どうなの!?「定額給付金」
御厨

「7割の国民が『NO』と言ってる給付金ですが?」

塩川

「もうこれ2ヶ月前から言ってるでしょ。去年の10月末から。最初は『消費を拡大する』という事を一番に言いましたね。『そのためには低所得者に配るんだ』と。でも、その後『いや、これは経済効果を狙うんだから、高所得者も』と、2転3転。その度に変わってきてる」

御厨

「そうなんですよ」

塩川

「もう、国民はうんざりしちゃったんですね。年末を過ぎてしまったんで『もう、どっちでもいいわ』と、国民はそんな感じじゃないですか。それで『どっちでもいい』となったら、今度は『こんなもったいない金の使い方をするなよ』と。こういう具合に変わってきたと、私は認識しておるんです」

片山

「やはり2兆円もの大金を使うのに『何のために、誰のためにやるのか』という政策の理念が、本当にぶれてますよね。そうすると国民も、結局『どうでも良いんだな』と『本当は最初に結論ありきで、2兆円配ることが目的ではないのか』と、こういう胡散臭さに対する疑念が出てきますよね」

御厨

「なるほど」

片山

「もう1つは、この問題をめぐって『議会制民主主義』の一番の基礎のところがかなり空洞化してると思うんですよ」

御厨

「と言いますと?」

片山

「『議会制民主主義』と言うのは、議論をして、なるほどなと思ったことがあれば、変えていく可能性があるから議会が成り立つわけで、今回、議論してみると色んな矛盾も出てきて『国民も批判的だ』と分かるわけですよね、そうすると与党の方も『ちょっと軌道修正しないとまずいな』と。これがあってはじめて『議会制民主主義』が成り立つ」

御厨

「なるほど」

片山

「しかし『何があってもとにかく最初に決めた事は、変えない』のでは、まるで法廷の弁護士を見てるようです。弁護士は『なるほど、あなたの言うとおりだ』とは言いませんよね。ただ、裁判の場合はお互い言い合っても、裁判官というアンパイアが、いるわけですよ。でも、政治は自分達がアンパイアですから、やっぱり言いっぱなしでは、済まないですよね」

― また、支持率が下がった!不支持は70%を超えた!
御厨

「不支持が70〜80%もあるというのは、大変な事態ですね」

塩川

「私はこの不支持は70〜80%というのは、風が吹いてるような感じがするんですね」

御厨

「と言いますと?」

塩川

「本当に不支持率という考え方に基づいているのは60%ぐらいだろうと。後の上澄みの10%と言うのは風の部分で『何となく、そういえば不支持だな、良くないな』という事で、そんなにきつい、厳しい不支持率ではないと私は思うんです」

御厨

「そうですか。一方で、支持が20%ぐらいはずっとありますね。これも、ちょっと不思議な感じがしますが?」

片山

「やっぱり、どこにも自分の支持を持って行きようがない人達がおられるんだと思いますね。例えば『民主党が嫌だ』とか『共産党が嫌だ』とかね。自民党支持のコアの支持層があるんでしょうね」

御厨

「なるほど、そういう部分もありますかね。しかし、麻生さんは、過去の首相に比べて、支持率の下落カーブ大きい。塩川さんは、さきほど『風の部分もある』とおっしゃいましたけど、不支持の60%と言うのは相当強いんじゃないですか?」

塩川

「強いですね。根っこはきついと思います。支持率がコトンと落ちたのは、やっぱり2兆円の給付の問題ですね。あの扱いがゴタゴタしてると、ちょっとだらしが無いじゃないかと」

― 世界同時不況!でも「仏・サルコジ大統領」も「英・ブラウン首相」も、支持率UP!
御厨

「例えばイギリスのブラウン首相は、昨年初め、20%台だった支持率が、迅速な経済対策が評価され40%にまで回復。経済危機を逆手にとって人気回復に成功したわけです。フランスやイギリスで出来たことがなぜ日本で出来なくて、麻生さんは低迷してるんでしょうかね」

塩川

「1つは、自民党・与党が、ハッキリと総理をおしていく一体感がない。そこに何となく『水が漏れてるじゃないか』という失望感がありますね」

御厨

「なるほど」

塩川

「それともう1つは、政府自身がしっかりと行動するということ。フランスも英国もそうですが、すぐに対応してますね。行動してますね。行動することが大事なんで、いくら口で言ってみても、国民は、納得しませんよ」

片山

「やっぱり、英・仏は、臨機応変にして果敢ですよね。これが今の日本の政府には見られませんね」

御厨

「そうですね」

片山

「結局、政策は、政治家がキチンと何をすべきか、本来決めなきゃいけないんですが、それが今まで官僚機構に丸投げになってきた。そして、その官僚機構が実はもうゴタゴタして、国全体のことを考えられなくなっている。その結果、それに乗っかってきた政治家集団もうまく機能しなくなったという事だと思いますね」

― そして「解散」は…?
塩川

「私はずっと申しているんですがね。解散なんか出来ませんよ。だから、腰を据えて任期一杯まで務めて、冷静に国民の審判を待つ姿勢に出たら良い」

御厨

「なるほど」

塩川

「その代わり9月までの間に政治課題を勇猛果敢に、3分の2を使って処理したら良い。その方がかえって支持率は、上がってきますよ。何にもしないから、さっきの英国、フランスもそうじゃないですか、死中に活を求めて、やったから上がったんでしょ。それは腹を決めることですよ。ウロウロしたら駄目」

片山

「自民党の中で、国会議員の皆さん方、自分の選挙は大事ですから、その人達がどう、これから動くか、動かないか、これが私は麻生内閣の命運を決めると思うんですね。今のままずっと、今まで通りのやり方で行くんだったら、党そのものが国民の支持を失っていきますよね。私はやっぱり議員の皆さんがうごめいてきて、麻生内閣が中から立ち往生する時期が来るのではないかという気がしますね」