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 第七十回 ('05年9月25日放送)
  「後藤田さんが言いたかったこと…」

  ゲスト: 野中広務 氏 / 御厨貴 氏

時事放談のレギュラーゲストである後藤田正晴さんが亡くなりました、91歳でした。「カミソリ」と言われて、大変鋭い恐い方でありましたけど、一面で茶目っ気のある優しい方でした。後藤田さんにゲストで来て頂いたのは17回。今回はその印象に残る言葉をまとめてみました。


― 2005年はどうなる(時事放談・新春特番で…)
後藤田

「今年はね、干支で言うと乙酉(きのととり)ですか。この、ものの本によりますとね、この年回りっていうのは、この、最新の注意を持ってね、そして物事取り組んで行けばね、だいたいまあ、いろいろ曲折があっても、何とか進展をすると…。まあ、こういう年なんですけどね、やっぱりそうでないとね、これはその曲がりくねったままでですね、発酵のガスが、悪いガスがね、爆発する年だとそう言われているんですよ」

― 年金問題
後藤田 「私はこの年金の問題だけはですね、そんなに時間のゆとりありませんよと是非ともこれはなんとか解決してもらいたいと」

― 少子化
後藤田 「これ、日本の国全体の活力が無くなるわけでしよね、それを一体どうすれば良いんだといえばですね。今あなたね男女2人がかりでね、平均の出生率がですね1.3を割ってるんですよね。1.28ぐらいになってるんでしょ、これはこのまま放置は出来ません、なんとかあなたねもっと生まなきゃあかんですよ、(小島アナに)あんた何人おるですか、(小島:今一人で、今お話を伺ってもう一人と)あかん、あかん」

― 政府がやるべき事
後藤田

「雇用の問題とか財政改革とか税制改革、これこそが今日本がやらなきゃならんね、これこそが国政の基本的な改革の問題であります。これに取り組んでもらいたいというのが僕の気持ちなんですね。郵政改革は結構だけども、これはね、枝葉の一つの、花の問題なんです。根っこの問題じゃありません」

― 今の日本は
後藤田

「今、議会制民主主義の危機なんですよと。それから日本という国自身がね内政外交共にね行き詰まってますよと。これを頭に置いて打開してもらいたいなと」

― 北朝鮮の拉致被害者について
後藤田 「しかし、国家ってのは本当に非情だなあ、もう少し国民のね、命と財産、幸せというものを考えてもらわなきゃ本当の意味での国じゃないよと」

― 強者と弱者
後藤田 「今は強者の論理が強すぎると。やはりどんな時代になっても立場の弱い人、気の毒な人は出ている。ならばそういう人に対して政治の光をどう当てるかということは、政治を担当する者の大きな責任だと思う」

― イラク戦争
後藤田

「この戦そのものがね、間違った戦だったと思いますね。それにまあなんと言うか、いち早く支持して自衛隊派遣と、いう決定をなさいましたけどね、これをまた私は間違った判断だったなあと、こう思いますね、いわば」

「まあ、過去の歴史をみますと、やはり他に方法がなかったがなかったとかね、何とかなるといったことで始めるんですよ。ところがね、どういう出口にするかというね、兵を退くと、いう決断をなかなかできないんですね」

「戦後60年振り返ってごらんなさいよね。アメリカぐらいね、戦争している、あるいは海外派兵している国はありませんよ。これにね、いつまでもあんたお付き合いできますか?だからやはりね、ここは日本というのはもう少し、自主的なね、日本であってほしいなと。本当にそう思いますよ」

― 米軍再編
後藤田 「日米安保、日本はまた強化をしてですね、兵力を減らすということもきかんしね、それから基地も縮小せんというんでしょ。おかしいじゃないかと。韓国でさえね、後2年たったら1万2500縮小するって言うんでしょ。日米安保というものはね、これはその、軍事力を強化するのでなしにね、政治的な関係の方に重点を移していくと。そのきっかけにね、今度のアメリカの戦略変更に対応して日本も対応していく必要がある。逆じゃないかと戦後に出てんのは」

― 世界の中の日本
後藤田 「世界の中で日本が平和に生きていくと、いうことを考えますとね、それはアメリカの関係ってのは重要ですよね。だけれども同じようにですね、それはやはり日本はアジアの中の、日本なわけですね、動くことはできないんですね。やはり中国との関係、あるいはまた朝鮮半島との関係、そして日本との関係、東アジアの安定という事をはかる…」

― 日本が誇るべきこと
後藤田 「戦後60年の間ですね、日本のこの自衛隊によってですね、他国の人間殺したことないんですよ。それからまた他国の軍隊によって日本人が殺されたこともない。先進国でこんな国はね、日本だけですよね。これは本当にね、誇るべきことだと思うね」

― 最近、腹立たしいこと
後藤田 「腹立たしい・・・。それは、この世の中が少し国家主義的な傾向が強くなってきている。しかも強者の論理、全てがね。これはちょっと心配だなと、気をつけてもらわないといかんなってそんな気がしている。ただこういうときには、やはりこの年になると時間がないということですよ。時間がない。これが一番つらい。だってやらないといかんなって個人的に思うことがいくらでもある。調べないといけないこともあれば、本も読まなければならない。時間がない。ここが若い人とは全然違う」

衆議院解散の直後の8月21日放送の番組で、事前の打ち合わせの時に
後藤田さんが「どうしても言っておきたい事がある」と、「これは僕の遺言だよ」
というような事を仰いました。
悲しい事にこれが事実になってしまったわけですが、その言葉を遺しておきます。

― 官から民へ
後藤田

「今のね官から民へという時にね、私は是非言いたいのはね、一体官が担当しなければならないですね境界点はどこまでだ、それから利潤というものを美徳としておる民が引き受ける事が出来る限界はどこだと、そこのですね分解線を明示しないままにですね、官から民へそれは私は少し乱暴だと議論である。

もう少しそこのですね定義をしてもらいたいと、そうでないからこそ現在イラクで何が起きてますか、軍事会社じゃないですか、株式会社がですね大変な高い値段で戦の一部を引き受けてやっている戦なんてのはこれは国の役割ですよ。それが民間会社会社になっている。こんなねべらぼうな話があるわけがない。

しかしね、うっかりすると官から民へと何でも境界なしに言うことは私はね非常に危険性がある、これはもう少し真剣に分解点を示してですね、ここまではこれは民に任していいではないかと、ここまでは官がやらなきゃいけないんだとそれのないままのでは政治じゃありません」

― 各政党に
後藤田 「自由民主党というものはですね、あまり非常な政治はやってもらいたくない。それから民主党に対してはですね野党第一党というものはどういうものだと、自由民主党とあなたどこが違うんですかと、そこをはっきりしてもらいたい。あるいは公明党に対してはですね、やはり福祉を平和の立党の精神これをいつまでも守ってもらいたい。あとは共産党と社民党ですね、共産党はマルクスレーニン主義はやめて当面はね共産党という党名を改めてですね日本の政治の中でですね、社民党と一緒になって、そして社会主義的な政党としての柱を一本立ててもらいたいと、こんな気がしますけど」

― ご冥福をお祈りいたします。



 
   
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