日曜劇場『グランメゾン東京』

番組情報

最上の饗宴

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「グランメゾン東京」へレシピ提供をしてくださっている、レストラン「カンテサンス」岸田周三シェフ「gaku」へレシピ提供をしてくださっている、レストラン「INUA」トーマス・フレベルシェフ。各話に登場するお料理たちとそのストーリーを紹介。
最上の饗宴をお楽しみください。
最終回Quintessence

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雲丹のパンペルデュ
─ 雲丹のパンペルデュのストーリー
今回、「グランメゾン東京」にミシュランの審査が迫り、メニューを一新するということで、新しいアミューズとして選んだのがこの「雲丹のパンペルデュ」です。

パンペルデュというのは、いわゆるフレンチトーストのこと。卵と牛乳をパンに浸してバターで焼くのがフレンチトーストですが、その卵を雲丹に替えたのがこのアミューズです。雲丹もタンパク質でできているので、卵と同じように加熱すれば凝固します。なので卵の代わりに雲丹を使い、さらに牛乳の代わりに海水にしてミキサーにかけ、その雲丹の液を小さく焼いた食パンみたいな形のブリオッシュに浸し、中までちゃんと吸い込ませてからフライパンで焼きました。出来上がったものは、表面はカリッと焼けていますが、中までは焼かずにトロっとして、しっかりと雲丹の味がします。

僕が考案したのはそこまでだったんですけれど「見た目がちょっと地味だな」自分では思っていたものの、味として完成しているから、何もしない方がいいかなと思っていたのですが、劇中で木村拓哉さんが試作品を作るお芝居の中でご自身でキャビアを乗せたそうで、そのままキャビアを使おうという話になりました。それを受けて僕も盛り付けの際にキャビアを足して、少し可愛らしくしてみました。いわゆる木村さんとの合作という作品になりますね。
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温かい手長海老のスープ
(ドラマのためのオリジナル)
─ 温かい手長海老のスープのストーリー
第1話で手長海老を使ったエチュベという料理がありましたが、過去の料理を回想するために、1話と同じ手長海老を使った料理を考えて欲しいというテーマの上で考えたお料理です。殻付きの手長海老をぶつ切りにして、エチュベと似たような方法ですが、海老の殻でとったスープにお野菜とかを入れて、仕上げの段階で手長海老を入れ、一瞬だけ火を入れたらすぐに盛り付けます。第1話を思い出していただけるそんなスープを考案してみました。
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タルト ブーダンノワール
─ タルト ブーダンノワールのストーリー
これは「カンテサンス」では10年以上前から作られているスペシャリテです。

ブーダンノワールというのは、豚の血を使った真っ黒なソーセージのこと。フランスではすごく伝統的な食べ物ですが、実を言うとフランス人でもブーダンノワールが苦手で食べられないという方がたくさんいらっしゃいます。日本人でもお寿司を食べれないという方がいるように、豚の血を使っているのでそれなりにクセがあって、苦手な方がたくさんいらっしゃる料理でもあります。

なので、フランスではリンゴをソテーしたものと一緒に食べるというのが伝統的な食べ方になっています。クセがあるものなので、フレッシュなものを食べて一度リセットをするような形ですね。

そこで僕はこのブーダンノワールを、「もうちょっと食べやすい食べ方はないか」と思って考案したのがこのお料理です。最初にパイ生地の上にスライスしたりんごを綺麗に並べて焼き上げ、りんごのタルトを作ります。そのりんごのタルトの上にブーダンノワールを全部ほぐしてペースト状にし、左官屋さんのように塗っていきます。そしてそこにちょっとフォアグラも乗せます。ここで何がしたいかと言うと、先ほど言ったようにブーダンノワールは、すごくクセのある食べ物なので、りんごと一緒に食べるんですけれど、ブーダンノワールと交互に食べていくと、人によって量のバランスが出てくるんじゃないかと思いました。
ブーダンばっかり食べてしまうと「クセが強いなあ」と思ってしまったり、りんごばっかり食べてると「甘くて何だか分からない」となってしまいます。僕が考えたブーダンノワールは層になっていて、この比率は、僕が思う完璧な黄金比率になっているんです。

どこから切ろうと比率は常に僕が思う完璧な比率。お客様がどんな食べ方をしても必ず完璧な比率で食べられるというのを目指して作った創作料理です。
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ハタのロティ ソースノワゼットグリエ
─ ハタのロティ ソースノワゼットグリエのストーリー
「カンテサンス」の魚の焼き方の特徴として、大きな塊で魚を焼いてから切り分けるという「カンテサンス」の代名詞となる調理法があります。以前の鰆もこの焼き方でしたが、今回のハタもやはり同じで、大きな塊でそれを切り分けることによって焼き面の量を減らし、しっかり焼けてはいるけれど、断面には焼き目は一切存在しないので、香ばしさが和らぐと同時に素材の味や香りがちゃんとわかるというのが 一つテーマになっています。

真ん中が半生になっているのですが、これは魚は火を入れすぎると水が出て旨味がなくなってしまうので、完璧な焼き加減を目指すと、こういう焼き方が正しいと思います。

ソースについては、ノワゼットグリエというソースを使っています。

ノワゼットというのは、ヘーゼルナッツのこと。グリエというのは、香ばしく茶色くなるまでローストしたことを指します。アンチョビと茹でこぼしたニンニクを合わせてペーストにした後に、それをカリカリになるまで焼いて、その粉末とノワゼットをローストしたものを合わせて絡めたものをソースにしています。香ばしいナッツの香りがするソースを作ってみました。

最終話は、倫子さんが作った魚料理と尾花さんが作ったマグロの料理の二つを対決させるお話になっているので、どちらの料理も考えなきゃいけないのがとても難しく、さらに最終的には倫子さんが採用されるというバランスがさらに難しく…二つとも料理は完成させるんですけれど、視聴者の皆さんが「ハタの方がいいよね」と思ってもらえるようなものにしなければいけないのが難しかったです。
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鮪とチュロス
(ドラマのためのオリジナル)
─ 鮪とチュロスのストーリー
11話、今までお手伝いさせてもらってきて、一番難しかったのはこの料理です。

そもそもマグロをフランス料理で作るというのは非常に難しい。「マグロだけはやっちゃいけない」と言われてきた食材で、僕も10年以上前からマグロという食材に取り組んできて、結局完成をしたことがなく、「カンテサンス」で出したことはありません。マグロというのは、それだけ難しい食材です。日本にはマグロの文化が昔からありますが、僕は特にお寿司が好きなんです。お刺身も好きですけど、お刺身よりもお寿司のマグロは素晴らしく、マグロというのは寿司になるために生まれてきた魚といってもいいくらい、そのくらいお寿司との相性がよく、料理としての完成度も高いと思います。

僕が言っている「マグロを使っちゃいけない」というのは、要するにマグロのお寿司ほどのクオリティをフランス料理で作ることができるかと言ったらそれは無理で、出した時にお客様に「やっぱりお寿司で食べたかったな」「お刺身で食べたかったよね」と言われるような料理を出すわけにはいかない。それは食材に対しても申し訳がない。「お寿司よりもこっちが好きだな」と言ってもらえるような料理を作れたなら、フランス料理でも提供するべきだと思うんですが、そうでないのだとしたら作るべきではない、という意味です。

マグロの最大の問題点は”加熱することができない”という点です。加熱すると触感が悪くなり、繊細な香りも失われて味もチープになりがちです。劇中でもお話をしていますが、 マグロの美味しさは、やはり”血”。鉄分であり酸味。加熱するとその魅力は失われてしまうんです。フランス料理が他の国の食文化よりも優れているのは加熱の技術だと思うのですが、その加熱の技術が使えない事とフランス料理の基本的な考え方として色々な食材と組み合わせて複雑な新しい味を生み出すという考えがマグロには必要ないと考えるので「わざわざフランス料理である必要があるの?」と思ってしまいますよね。なのでフランス料理で取り扱うというのは非常に難しいです。その中で考えたこの料理は、チュロスの生地を使ってその上にマグロの「脳天」という頭のお肉を乗せています。

チュロスと聞くと甘いお菓子を想像されるともいますが、それは周りにグラニュー糖やシナモンシュガーなどをたっぷりまぶしているから甘いのであって、チュロスの生地自体は砂糖が入っていませんので甘くはないんです。その甘くない生地を素揚げして使えば料理にも使えるし、マグロの味を損なわないだろうと思い合わせる事にしました。

脳天を使っている意味は、”筋の美味しさ”。熱々に揚げたチュロスの上に脳天の肉を乗せているんですけれど、そうすると余熱で少しだけマグロが温まるんです。そうすることによって、加熱はしてないけど温めることによって、食材の香りは立ちます。
実はお寿司のシャリもマグロの時はシャリの温度一番高いのをご存知ですか?逆に青魚はシャリの温度は低い。一流のお寿司屋さんはそうやってコントロールしているんです。そうすると、やっぱりマグロには熱が必要なんだけど、火は通しちゃいけないという難しさが再び立ちはだかります。

マグロの中には食べることができないぐらい硬い筋と加熱すると美味しくなる筋、その2種類が存在します。脳天の間には筋が入っていて、その筋は加熱すると溶けてもちっとした食感を生み出します。加熱すると美味しい筋なんです。僕は筋と肉を全部バラバラに剥がして、身は生で出していますが、筋は炭火で炙ってからシブレットと一緒に和えて乗せています。

そうすることで火を入れていない身の美味しさと熱々に焼いた筋の香ばしさが同居します。そして下には熱々のチュロス、ほんのり温まっているマグロはマグロの香りはするんだけども火が入りすぎず魅力が失われていないところが、今回の料理の狙いです。

そして木村さんからアイデアを頂きまして2種類のソースを添えることにしました。
赤ワインとバニュルスのソースとマグロの皮で作ったソースです。
※ 劇中で尾花が披露していた包丁を熱する工程ですが、通常の包丁を熱すると曲がることがあり危険です。
劇中使用の包丁だからなせる技ですので、真似はしないでください。
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木更津産リコッタのクレームダンジュ
─ 木更津産リコッタのクレームダンジュのストーリー
木更津ですごいモッツァレラチーズを作っている竹島さんという方がいらっしゃるんです。
そのモッツァレラチーズを作る時に副産物として、リコッタチーズができます。それが僕はすごく大好きなんです。モッツァレラももちろん好きですが、こんなにおいしいリコッタが日本で手に入るなんてすごい事だと思います。
リコッタチーズは劣化がすごく早く、鮮度が命。イタリアの物もすごく美味しいですが、日本に輸入する過程で何日も時間がかかってしまうと、やっぱり最高の状態では食べられない…。その点木更津だったらその日に作ったらその日に手に入ってしまう。距離的なアドバンテージも本当に素晴らしい。リコッタは「冷蔵庫入れる前に食べきるのが理想」というのが生産者の言い分。一回でも冷蔵庫に入れてしまうと味が変わってしまうと言われていて、理想は冷蔵庫に入れる前に食べてもらう。じゃないと本来の最高の状態ではないんです。
そのリコッタを使って今回クレームダンジュというのを作りました。
というのも元々クレームダンジュというのはフロマージュブランという酸味のあるタイプのフレッシュチーズを使って作るお菓子なんですが、日本では最高のフロマージュブランが手に入らないような気がしていて、その中でどうしたらいいか…と考えたときに、「最高のリコッタが存在するんだから、リコッタチーズでクレームダンジュを作れば最高のものが作れるんじゃないか」という思いで今回クレームダンジュを作ってみました。そこにパッハリート種という貴重なカカオの豆を散らし、カカオの香りとリコッタの香りを楽しんでいただけるデザートというものを作りました。

デザインは前回のモンブランに引き続き、徳永シェフにデザインをお願いしました。
というのも、あくまで萌絵ちゃんが作った作品なので、僕が作ってしまうと僕の作風に全部なってしまいますから。今回も素敵なデザインにしていただきました。

コンセプト自体はリコッタチーズとカカオというのがテーマ。敢えて複雑にし過ぎないようにしています。
マグロ と水産資源

普段レストランでシェフをする傍らで、水産資源の保護活動をしています。
というのも、日本の水産資源というのは徐々に減り続けていて、現在は枯渇している状態です。皆さんはスーパーなどに行けばいつでも魚が売っているので、あまり気づいていらっしゃらないと思いますが、実はどんどん国産の魚が海外の輸入品に入れ替わっています。

こうして水産資源が減っている状況で、それに伴って本当に良い品質の魚が減ってきています。僕は毎日魚を注文して魚を触っているからこそ、どんどん悪くなっているなというのを実感しています。なんとかしなくてはいけないという思いがあり、水産資源の保護活動を、30人ほどのシェフ達とジャーナリストの方と一緒にNPO 法人を作って水産資源の保護活動をしています。

日本で長く食べられてきた太平洋クロマグロは現在、1960年頃に比べて12-3%にまで減っています、衝撃的な数字ですよね?

マグロは今は、本当に最高のものが獲れなくなってきています。この前「すきやばし次郎」の次郎さんにお話を伺ったんですけれど、ほんの2〜30年前の3番手4番手ぐらいのマグロが、今の1番手ぐらいの品質になっているんだそうです。

今回「マグロ」のテーマをいただいたとき、「僕はマグロを守っている身なので、そのテーマは辞めたい」と言い続けてきました。けれどドラマのストーリーにおいて、それをどうしても取り上げたいという番組側からのアプローチを受けて、「マグロの事に触れないよりも作中で一言でも二言でもこの事を取り上げて頂く事で皆さんにこの状態を知っていただける事の方が良いのではないか?」と思いました。なので、劇中でもマグロについて尾花さんは「太平洋マグロ(いわゆる日本の近海のマグロ)は使わずに、大西洋マグロ(ヨーロッパやアメリカ、インドなど遠洋にいるマグロ)を使う」とおっしゃっています。大西洋マグロは水産資源の保護をしっかりとしてきた結果現在は資源回復をし始めています。だから日本も同じように資源保護をしていけば、太平洋マグロも資源回復をすることができるのではないかと思っています。
最終回INUA

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帆立のムース、スモークした帆立のだし
帆立のムースは、北海道産の帆立を、豆乳と昆布だしとブレンダーで合わせ、滑らかなピューレ状にしておく。帆立のだしは、まず、帆立をピューレ状にしたものを薄くのばし、次に、タンパク質がキャラメライズされパリパリになるまでゆっくり乾燥させる。このシートを6 時間スモークし、温かい昆布だしに浸す。帆立のムースを火がちょうど通るまでポシェし、帆立のだしに浮かべる。最後にスダチの皮を軽く散らす。
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生の白エビと炭火で焼いた麦麹ケーキ
生の白エビを麦麹で香り付けしたバターで温める。一口サイズにカットして炭火で焼いた麦麹に、ハマナスの花びらのピクルスで作ったペーストとマリーゴールドの葉、そして白エビを重ねる。
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枝豆、かぼちゃの種、発酵させた鹿肉のポトフ
枝豆は生のものを炭火で焼き、薄皮まで剥く。かぼちゃの種は生のものに麹菌をつけて発酵させる。ポトフのスープは、酒粕、味噌、しぼりたてのかぼちゃの種のオイルで作る。仕上げに、セリなどの野草と松で香り付けした酢とチリオイルを加える。盛り付ける器の脇に、お好みで味を調整できるように2つの薬味を添える。1つはハーブのブーケ、もう1 つは、発酵させた鹿肉のソーセージを皮から取り出し、中の詰め物をほぐした後、フライパンで火を入れキャラメライズさせたもの。
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タラバガニ、
昆布と炭火で焼いたバラの花びらのパイ
昆布をベースにしたパイ生地を作る。パイ型に入れて焼き、1 人分を三角形にカットする。
蒸したタラバガニをパイに乗せ、炭火で焼いたバラの花びらを散らす。
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香草で香りづけしたエノキのステーキ、
黒トリュフと卵黄ソース
─ 香草で香りづけしたエノキのステーキ、黒トリュフと卵黄ソースのストーリー
ヴィーガンのお客様のために、お肉料理に代わるメインディッシュを考えていた時に、この料理ができました。
様々な食材を試してみたのですが、脇役になりがちなエノキの、廃棄されがちな軸の部分が、密度の高い繊維質で、焼いたお肉に一番近い食感を持っていました。
また、米麹で香り付けしたオイルの「うま味」、炭火調理によるスモーキーな香り、仕上げの卵黄と燻製バターによって、お肉料理を味わっているような満足感を得る事ができる一品です。
エノキの軸の部分をバナナの葉とレモンタイムで包む。その包みを米麹で香り付けしたオイルと一緒に真空し、30分間寝かせる。真空パックから取り出し、炭火でタレを塗りながらゆっくり焼く。卵黄ソースは、まず、卵黄を舞茸醤油に2 時間ほど漬け、次にその黄身をくずし、スモークしたバターを溶かし加え、仕上げる。そのソースをエノキのステーキに塗り、最後に黒トリュフをのせる。
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野生の鴨の胸肉、
カヤの実と昆布オイルのプラリネ
羽根つきの鴨を掃除し、2 週間熟成させ、その後、丸ごと炭火で焼く。胸肉にちょうど火が通ったところで、胸肉だけを切り、スライスし、元あったように鴨の胴体の部分へ盛る。カヤの実と昆布オイルのプラリネをソースとして召し上がって頂く。
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ななつぼし、野生のブナの実、
青山椒、松の新芽、鴨脂のクリスプ
炊き立てのななつぼしに、ブナの実、青山椒、松の新芽を散らす。鴨脂で作ったクリスプを、お椀の淵全体を覆うように乗せ、その上へごはんを盛り、クリスプを割りながら召し上がって頂く。
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鴨の盛り合わせ、
ナツハゼとハイビスカスの小包、サルナシ
鴨の胸肉を召し上がって頂いた後に、胸肉以外の部分を骨付きのまま、部位ごとに切り分けて盛り合わせたもの。きれいに骨が取られたお肉を食べるのではなく、骨付きのお肉を手づかみでがぶりと食べるという楽しさがある。小包の中身は、ナツハゼ、ハイビスカスと松の新芽をベースにしたコンポート、小包の皮は、加熱熟成でメイラード反応させたビーツと洋ナシをピューレ状にして薄くのばして乾燥させたもの。小包の上に数種のハーブの酢漬けをのせる。凍らせたサルナシを、カシスの葉で香り付けしたオイルとカシスの新芽で味のアクセントをつける。サルナシは、鴨を食べながら、または食べた後の口直しに。
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ココナッツミルクのパルフェと白トリュフ
あん肝のテリーヌと同じ方法で作ったココナッツのパルフェ。表面に隠し味としてグラニュー糖と昆布塩を散らす。甘さと塩味が加わるだけでなく、粒のカリカリとした食感も楽しめる。最後に白トリュフのスライスをのせる。
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豆乳のムース、
セミドライのサルナシ、カタバミ
豆乳をベースにしたムースを作る。スポンジケーキをウワミズザクラで香り付けしたオイルで風味付けし、その上に、カシスの葉で香り付けしたオイルと和えたセミドライのサルナシをのせ、さらに豆乳のムースを重ねる。カタバミ草で全体を覆って完成。
第10話Quintessence

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真鱈の白子のポッシェショーフロワ
(ドラマのためのオリジナル)
─ 真鱈の白子のポッシェショーフロワのストーリー
私が実際に飲んで、ワインが本当に素晴らしいと感じた北海道の平川ワイナリーさんのケルナーという品種のワインをイメージして作った一品です。(劇中ではワイナリーの場所は山梨でしたが、、)
北海道という土地に食材を合わせ、さらに季節は冬だったので、真鱈の白子を食材にチョイスしました。
白子は野菜のお出汁を使って一瞬だけポシェ(湯通し)し、半生の状態にしています。温かくなった白子は一度冷やして、それから香箱ガニというセイコガニ(松葉ガニのメス)の身と内子(卵)・外子(内臓)、その3つをほぐしてあわせたものを白子の下にソースとして敷いています。白子の上にはシャンパンビネガーと少量のオリーブオイルを混ぜている刻んだお野菜を。白子の食感はふにゃっとしているので、水菜、セロリ、ロケット、パセリ、フィーヌゼルブ(ハーブをミックスしたもの)をのせて、食感を出しています。
一番のポイントになるのはピーカンナッツをスライスしたものを熱々にローストして、最後にふりかけるということ。白子はあったかいと生臭さが出てしまうので、冷やしたほうが臭いを抑えられていいのですが、ワインとのペアリングとして考えるとやや温度はあった方が良い。

「冷たく提供したいけど温度が欲しい。」

一見矛盾していますが解決方法はあります。
白子に乗せたらジュッて音がするくらい熱々のピーカンナッツを振りかけることで、一緒に食べてもらうときに口の中で一瞬だけ温度があがり香ばしさやナッツの存在を感じられますが、咀嚼するとすぐに口の中は冷たくなり白子の臭みは抑えられます。
冷たいものと温かいものを同居させながら1つの料理にしたのが、この料理です。
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キジバトのドゥミ・アンクルート
(ドラマのためのオリジナル)
─ キジバトのドゥミ・アンクルートのストーリー
キジバトともヤマバトとも呼んだりするのですが、猟師さんの高齢化も進み、獲れる人がいなくなった貴重な食材です。日本は世界的にみても非常に高品質なジビエが獲れる国。
日本の誇れる食材だと思っているので、今回こちらをメインに使おうと思いました。
キジバトは非常に小さく火入れの難しい食材ですが、これを一羽まるごとゆっくりとローストしてから捌いてスネ以外の骨は全て取り除いています。捌いた断面にパイ生地を貼り付けもう一度焼いています。片面はローストした肉が剥き出しになっていて、もう片面は生地が付いている状態です。2回焼くので逆算して火を入れながら焼き過ぎに注意します。
フランスの古典料理に「アンクルート」というパイ包みの料理があります。素晴らしい料理ですが、パイ包み焼きの問題点として中のお肉が蒸されてしまい香ばしさが失われるという問題があります。今回は片側しか生地を付けていないので、半分だけパイ包み焼きにして、裏面はローストの香ばしさが残ったままの状態。ローストとパイ包み焼きのいいとこ取りをしたいと思って作ったお料理です。
ソースはザクロとオールドカンパリ。赤ワインのソースの仕上げに1970年代に流通していた古いカンパリを使っているのですが今のカンパリと全然違い素晴らしい味と香りです。
さらにザクロと一緒にキジバトの内臓を炒めたものも添えています。
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リ・ド・ヴォーを入れたクスクスのサラダ
─ リ・ド・ヴォーを入れたクスクスのサラダのストーリー
峰岸さんが素晴らしい芹を採ってきてくれたので、それを使った料理ということで考えた料理です。冷製で食べるクスクスのことを「タブレ」と言いまして、様々な野菜の角切りと合わせたパスタサラダのような物ですが、クスクス自体はお湯で戻すのが一般的です。
ここでは芹や色々な香草と野菜を使ったスムージーのような物でクスクスをもどしたために、緑色になっています。これを型に詰めていきますが、その中に子牛の胸腺肉をいれています。焼肉屋さんでいうとシビレと呼ばれる部位の肉で、僕たちは「リ・ド・ヴォー」という呼び方をしているのですが、牛のこどもがお乳を飲むために使う内臓で、大人になると退化してなくなってしまう部分でもあります。そのリ・ド・ヴォーを熱々に揚げて、クスクスと交互に型の中に詰めていきます。一見冷たい料理に見えるのですが、食べていただくと熱々のリ・ド・ヴォーが入っていることで、お客様が驚くところが面白いお料理だと思います。

フランス料理は温度感のない料理が多いのですが、今回のこの3つの料理の共通点は温度に非常に気遣ったと言う点です。
温度を大切にする料理は、仕上げるタイミングが非常に難しくそれぞれの料理人がいろいろなパーツを担当しているので全員の息が合わないと料理が完成しないチームワークが試される料理でもあります。
第7話Quintessence

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ミニオムライス
(ドラマのためのオリジナル)
─ ミニオムライスのストーリー
相沢さんのお嬢さんのアメリーちゃんがご飯を食べにくるということで、コースの中で一品だけ、お子様用のお料理を考えることになりました。お子様にとって馴染みのあるもの…大好物であるだろうと、一口オムライスを作りました。 普通のオムライスだと、薄焼きの卵の中にケチャップライスが入っていますが、あの大きさを作るというのは意外と難しいんです。 全卵にチーズ、バターを入れて、マヨネーズくらいの粘度になるまで加熱をして、その加熱したものをフライパンの角っこに置き、その中にケチャップライスを巻き込んでというよりも、埋め込んでいるというほうが近いですね。見た目はオムライスですが、卵の中にチーズやバターが通常のオムライスよりも入っていることで、フランス料理らしさを忘れずにお出ししています。
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ガレットシャンピニオン
(ドラマのためのオリジナル)
─ ガレットシャンピニオンのストーリー
キノコを使って、新しい一品を作ろうということで考えたお料理です。今回は、フランスのブルターニュ地方の定番料理で、そば粉を使ったクレープ、「ガレット」をイメージしました。 本来フランス流のガレットは、丸い円盤状の生地の中に思い思いの具材を入れて、四方を畳んで正方形にして、ナイフとフォークで食べていただくのですが、そうすると具材の水分によって、生地がふにゃふにゃになってしまうという問題があって、そこを解決したいと思ったのが今回のテーマです。海苔巻きの海苔を想像していただくと、どうしても海苔のパリパリ感は減って、ふにゃふにゃになりますよね?それをどうにか食感を残したまま、そのまま美味しいクレープが食べたいなと思い、クレープを巻かないことにしたんです。焼いたままのアツアツの状態をそのままお皿にのせて、具材も生地に乗っていますが、巻いてはいません。ギリギリまでふにゃふにゃにならないように、巻くのはお客さまご自身にやっていただくという”手巻きのクレープ”にしました。そうすることで生地のパリッとした食感がなくならずに、食べることが可能なんじゃないかと思います。
その生地の上には、8種類のいろいろな調理法のキノコが乗っています。ソテーしたものもあれば、コンセルヴという酢漬けのピクルス状になったキノコ…そして卵黄を付けて焼いたものなど。いろんな種類のキノコをそれぞれの調理法に施し生地の上に 一列に並べ、お客さんご自身で巻いていただきます。お話の設定では、相沢さんの奥様のエリーゼさんは、ブルターニュの出身ということで、彼女の郷土の料理を作り、日本の食材を使い手巻き寿司のような日本の文化とフランスの文化、両方がうまく組み合わさった料理となっています。
岸田シェフから番組をご覧の皆様へメッセージ

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岸田シェフ
─ ミシュランガイド2020発表会にて、
三つ星を13年間維持した岸田シェフから番組をご覧の皆様へメッセージ
グランメゾン東京の監修を引き受けた段階ではあまり深く考えていなかったのですが、毎週放送している最中にミシュランが発表しますので、今年星を落としたら凄い恥ずかしい事に途中で気が付いたのですが後の祭りでした。
そういう意味でも、無事に三つ星を維持することが出来てホッとしています。

このドラマを観て、料理の世界に興味を持ってくれる方が増えてくれたら嬉しいなと思っています。
第6話Quintessence

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鰆のロースト 水晶文旦のソース
(ドラマのためのオリジナル)
─ 鰆のロースト 水晶文旦のソースのストーリー
6話で、尾花さんが「グランメゾン東京」の魚料理を見直すと言ったことで用意したお料理です。

今回は、冬においしいお魚ということで、鰆(サワラ)を選ばせていただきました。
魚へんに春と書きますが、鰆の本当においしい時期は、秋から冬にかけて。”寒鰆”が一番おいしい時期だとされています。
「カンテサンス」では6〜8キロの鰆を使っているのですが、「グランメゾン東京」でも同じくらいの大きさの鰆が使われています。大きいものが美味しいとされていて、それ以下のものを使うことはあまりありません。
このお料理の最大の特徴は、火入れ。大きな塊のままで肉も魚も焼いて、焼いたあとに切り分けていくのが「カンテサンス」の代名詞にもなっている火入れの特徴です。
1枚ごとに切り分けたお魚を焼くと、焼き目ができる表面積が増えますよね?そうすると、香ばしさが付くことで美味しさは生まれますが、香ばしさが前面に出すぎるために、何を食べているかわからなくなってしまうんです。鯛(タイ)を食べていても、鱸(スズキ)を食べていても、どちらも同じように香ばしくて美味しいという感覚になるために、素材の良さをどこまで引き出したか、疑問がうまれます。けれど、大きな塊を焼いたあとに切り分ければ、断面の部分には焼き目は存在しないのでより素材の味や香りを楽しんでいただくことができます。
また、火の入り方も大きな塊で焼いた方が良い状態で仕上げることが可能です。

付け合わせにしているのは、水晶文旦(鰆と同じく旬の果物)。水晶文旦は身をほぐすことができて、1粒ずつバラバラになります。そこに少量のニンニクとセロリのみじん切り、フヌイユ、天然の茸(チチタケ、ナラタケ、ショウゲンジ)
それからフィーヌゼルブという香草を4種類くらい刻んだものと、文旦の果汁とオリーブオイルを混ぜて作ったソースを下に散らして、魚と一緒に召し上がっていただきます。
そして、付け合わせはラディッキオ・タルディーボというお野菜。芯の部分をさっと炒めて、トマトとケッパー、赤ワインビネガー、フュメドポワソンと上に水菜。それが付け合わせになっています。

「カンテサンス」では秋から冬にかけて、旬の魚である鰆の料理をお出ししています。
第6話INUA

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レモンタイムとバターで焼いた骨付きあんこう、鮟肝のポシェ、昆布、味噌のソース
(ドラマのためのオリジナル)
─ レモンタイムとバターで焼いた骨付きあんこう、鮟肝のポシェ、昆布、味噌のソースのストーリー
魚料理というお題をもらったとき、旬の魚で作れる新しくて面白い料理は何かと考えたのですが、ちょうどそのころ質の良いあんこうが市場に出回りだしました。そこで試しに一尾仕入れてみることに。新鮮な肝があるものを選びました。すると、尾の部分に弾力があり肉のような食感で、肝との相性が非常に良いとわかりました。クリーミーな食感と脂の濃厚さが加わるからです。尾と肝の食感の違いを引き立てたかったので、他の要素は最小限にとどめ、味噌、きのこ、昆布など、深みと旨味を補いつつも魚自体の風味をかき消さない素材を使って仕上げました。
第4話Quintessence

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メレンゲのアイスクリーム
─ メレンゲのアイスクリームのストーリー
カンテサンスには2つスペシャリテがあります。
前菜は山羊のバヴァロア。デザートは、メレンゲのアイスクリーム。この2つはカンテサンスでは必ず出る料理です。これもオープンしてから毎日作り続けている一品。

フランスで修行していた頃、僕が驚いたことの1つに、すごく大きなメレンゲのお菓子がフランスの至る場所で売っていたことでした。日本だと小さいメレンゲを焼いたお菓子はありますが、フランスは本当にびっくりするくらい…野球帽くらいの大きさのものが、山積みになって売っています。「フランスの人って一人でこれ食べるの?」と驚いたのを覚えています。というのも、メレンゲの半分は砂糖作っているんです。勉強のために一回食べたことがあるのですが、覚悟はしていましたが、想像以上に甘かった!美味しいものがたくさんあるフランスで、なぜあるのだろうと僕は本当に理解が出来ず、好きになれないものが「メレンゲ」。実は大嫌いな食べ物なんです(笑)。この大嫌いなメレンゲを美味しくすることが出来ないか…というのがこのアイスクリームを作った最初のテーマ。
僕が思う嫌いなものは、改善点がたくさんあるもの。自分が嫌いなものをテーマに料理をつくることが好きです。なぜならそこにはたくさんの伸びしろがあるから。みんなが大好きで昔から愛されているメレンゲのお菓子があり、そこに伸びしろがあるのであれば、僕がそれを改善すれば、今よりもはるかに美味しいものを作ることが可能じゃないかと思いました。

メレンゲには課題がたくさんありました。1つは甘すぎるということ。けれど、焼いた香りは、他にはない、いい香りがします。メレンゲを形成するために、砂糖をたくさん使うことは避けられない、でもこの香りは伝えたい…でも甘さは控えたい。そう考えたとき、僕はこのメレンゲを通常どおりに作ってから、粉々に砕いて、その粉をアイスクリームの生地の中に入れることを思いつきました。アイスクリームには、牛乳や卵も入っていますが、砂糖も当然入ります。そのメレンゲを砕いた粉を砂糖代わりにしました。
アイスクリームの種類は世の中にいっぱいあって、種類は出尽くしています。新しいアイスクリームを作るにはどうすればいいかと考えると、自分が一度作ったお菓子を原材料として使うことで無限の可能性が出て、メレンゲのアイスクリームという、今まで世の中に存在しなかったアイスクリームを作り出すことができました。
嫌いから始まり、いい部分を取り出し、嫌な部分をなくしている。
このアイスクリームが僕、大好きです。
そして、カンテサンスで一番人気があるのは、このアイスです。

メレンゲのアイスはそれで完成しますが、そこに最後にひと手間。
能登のお塩屋さんで、海水を濃縮して5倍くらいになったものを霧吹きにいれて、アイスにかけています。
塩キャラメルやスイカに塩をかけて、塩分をほんのちょっぴり感じると、甘さを際立たせる効果があると思います。僕、塩キャラメルもそんなに好きじゃないのですが(笑)、なぜかというと、お菓子なのに最後までずっと甘じょっぱい塩分を感じ続けるから。塩味は後に残るんです。デザートなのに塩分が残るのは嫌ですよね。
それに対して、スイカに塩をふる行為。あの調理法には意味があり、スイカの中に塩分があるわけじゃなくて、上から振っていることで、最初の一口は塩分をたくさん感じるけれど、二口目、三口目と、塩分は減っていく。最後の後味は甘さだけ。だから、メレンゲのアイスクリームも中に塩を加えるのではなく、できあがったアイスクリームに、霧吹きで塩分をかける。そうすると単調なものではなく、塩分にグラデーションが発生していく。デザートとして、最後は甘さで終わることが出来るんです。そこがすごく大事だと思っています。
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山羊乳のバヴァロア
─ 山羊乳のバヴァロアのストーリー
山羊のバヴァロアは、カンテサンスのオープン当時からずっと出し続けている、いわゆるスペシャリテと呼ばれる一品です。
このお料理は、山羊のミルクを使ってゼラチンでかためているバヴァロアの部分に、マカデミアナッツと百合根が乗っていますが、このお料理で食べていただきたいのはそこではありません。この料理で食べていただきたいのは、お塩とオリーブオイルです。
それを食べてもらうため、バヴァロアやマカデミアナッツ、百合根の食感は、それぞれ個性はあるけれど、味は優しいものばかり。だからこそ、このお料理を食べていただくと、まず最初に感じるのはお塩でありオリーブオイルの香りなんです。
料理は材料が主役であって、そこに調味料で味をつける…という主従関係が本来のスタイルですが、このお料理では主従関係が逆転しています。調味料が主役であり、主材料があくまでも縁の下の力持ちであるということ。その逆転が、すごくおもしろいお料理です。
この料理を思いついたのは、当店の名刺代わりになる料理が作りたいというところからでした。当店の前菜の一番最初に出てくる品であり「これから始まる料理は、こういう味付けでこういう調味料を使っていきます」と、知ってもらうための「アントレ(前菜)」です。フランス語で前菜はアントレと呼びますが、この語源は玄関をさします。これがこのコースの入口になる、店の名刺代わり、という意味を込めています。
このお料理は、一年中出しているメニューで、材料は基本的に一年を通して手に入ります。しかし、ミルクを作る山羊の食事は、季節によって変わっていきます。春は青々とした牧草。冬場になるとそれが乾燥した牧草に。そうするとミルクの味も変わっていきます。
スペシャリテとして毎回出ているお料理ですが、季節によって味の変化を感じてお楽しみいただくことが出来ます。
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雲丹のグラティネ
(ドラマのためのオリジナル)
─ 雲丹のグラティネのストーリー
「グランメゾン東京」のためのオリジナル料理です。
スタッフからのお題があり「第1話で雲丹の殻を使った料理があったと思いますが、お話の流れで、あの時と同じように祥平さんが尾花さんを手伝って、2人で料理を仕上げていくようにしたい。殻を使った料理を考えて欲しい」というお題をいただきました。
前回の雲丹の殻は、蕎麦の実の香りと雲丹の前菜でしたが、メイン料理の前のあたたかい料理ならではで、もう少しボリュームがあり、熱々なものにしようというのがあって、殻にほかの魚介類も詰めて表面をグラタン状に焼いています。
前回はスープのようなものでしたが、今回は熱々のグラタン。これらグラティネというのはフランス料理としては古典的なお料理です。洋食のようだと感じられるかと思いますが、昔からフランスにある料理で、ここでは「サヴァイヨン」という、卵黄を泡立てたものを使う、比較的クラシカルで、いわゆる正統派のフランス料理というイメージで作りました。
雲丹の掃除はすごく大変なんですよ。僕もフランス時代にやっていましたが、ちくちく刺さりながら、きちんとホールドしないと殻を開けられないし、でもちゃんと持てば持つほど、痛い。本当に大変な作業で、僕も雲丹の掃除は嫌いな作業の1つでした(笑)。
今回も改めてやっていただきました。申し訳ないなと思いつつ……
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モンブラン・アマファソン
“焼き栗のモンブラン”
(ドラマのためのオリジナル)
─ モンブラン・アマファソン “焼き栗のモンブラン”のストーリー
この作品は新しい形のモンブランをテーマにしています。
鬼皮を焼いた後に水で煮出してから濾して水分をギリギリまで煮詰め、焼いた栗の香りを抽出しました。栗の香りには何種類かありますが、実の香りと鬼皮の香りは別のものになりますので、栗の香りを強く感じながらも今までに感じたものとは違うモンブランになったと思います。
しかし、鬼皮には強いタンニンがあり、煮詰めたエッセンスは渋くてとても食べられません。このタンニンを緩和するのは糖分になります。糖分を大量に入れることでタンニンは感じにくくなり、デザートに使うことが可能になります。けれど、このエッセンスを加えたマロンクリームが甘くなりすぎないように、糖分を逆算して減らすのがポイントです。

パリで働いていた頃、街中でドラム缶に炭を燃やし、上の蓋に小さな穴を開けて”マロンショー”という焼き栗を売る人が秋の風物詩でした。今回のこのモンブランは、”マロンショー”をイメージして作りました。

この作品は、作中の萌絵さんが考案したものという事で、作風が同じにならないように、(萌絵の)盛り付けやデザインについては「ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ」の徳永純司シェフに考案していただきました。
とても素晴らしい作品に仕上げていただきました。有難う御座います。
第3話Quintessence

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鹿肉のロティとコンソメ
(ドラマのためのオリジナル)
─ 鹿肉のロティとコンソメのストーリー
第3話で登場した鹿の料理は、ドラマのために考案したオリジナル料理です。
この鹿のお料理は、監督や脚本家さんとお話する中で「鹿を無駄なく使う料理を考案していただきたい」とお願いがあり、オリジナルで考案しました。
さらに、ストーリー的に良い部位のお肉が使えず…おいしいお肉ですが、”スジ(筋)”がたくさんあって硬い部位しか使えなかった。そこで”スジ”を取り除き、その”スジ”を使ってコンソメにすれば、余すことなく使えるんじゃないかと考えました。
コンソメは、本来クリアな色をしていますよね?フランス料理というものは、昔は王様が食べていた料理なので、味だけでなく美しさもとても大事にしています。
この澄んだコンソメをつくるのに、本来は卵白を使います。
卵白には”清澄作用”があり、濁りを吸着する力を持っています。フランスはワインの生産地としても有名ですが、ワインはなぜあんなに綺麗に澄んでいるかといったら、ワインも卵白で汚れを吸着し、ブドウの濁りとワインを分離させています。卵白はそのあと取り除かれ、ワインに入っているわけではありませんが、クリアな色にするために卵白で濾しているんです。これを”清澄作用”と言っていて、卵白に入っているタンパク質が、濁っているものを綺麗にする作用のことをいいます。
今回は卵白ではなく、”鹿を丸ごと綺麗に使い切る”というテーマに則って、熱をいれたら凝固する、同じタンパク質の血液、鹿の血を使うことにしました。それによって、鹿も無駄なく使いきれて、鹿の野生的な香りをコンソメに付けることができました。
コンソメに卵白の代わりに血液を使い、水の代わりに赤ワインを使っています。鹿の料理で赤ワインのソースを使うのは、フランス料理の古典において、定番の組み合わせです。
僕は古典をとても大事にしているので、第2話の”ナスのプレッセ”で”モレ”を冷製にしたのと同じように古典を現代風に、より進化したものにすることをテーマにして、料理を作っています。
今回は赤ワインのソースではなく、赤ワインのコンソメにして、そこには鹿の香りをさせるというのは、新しくもあり、王道の料理ではないかなと思って作らせていただきました。
第3話INUA

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麹漬けの鹿肉のタルタル、ゆっくりキャラメライズしたビーツ、マリーゴールドとローズゼラニウムのペスト、生セップ茸とヘーゼルナッツ
(ドラマのためのオリジナル)
─ 麹漬けの鹿肉のタルタル、ゆっくりキャラメライズしたビーツ、マリーゴールドとローズゼラニウムのペスト、生セップ茸とヘーゼルナッツの
ストーリー
日曜の朝に霧のかかった森の中を散歩していると、あたりにはきのこが生えていたりナッツの実がなっている。木々の間から遠くの方を見ると、野生の鹿が顔をのぞかせている…そんな幻想的な情景をイメージして考案した一品です。
第2話Quintessence

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ナスのプレッセ
─ ナスのプレッセのストーリー
2話の料理は秋ナスをテーマにしています。
ドラマの物語は、秋から冬にかけてのお話なので、秋ナスをおいしく食べられる料理を考案しようと始まり、この料理になりました。
ナスには春ナスと秋ナス、2回の旬があり、春ナスは皮が柔らかく、水分が多いので滑らかで柔らかいのが特徴。対して秋ナスは、皮が固く、身もしっかりしていて、加熱しても身が崩れないのが特徴。秋ナスの良さ、秋ナスでしかできないことを活かそうと考えました。また、野菜だけだと物足りなさがあったので、ホロホロ鳥のレバーとカカオ(甘くないチョコレート)をパリパリとおせんべいのようにして、ナスとホロホロ鳥をサンドイッチ。この組み合わせは、南米のお料理”モレ“をヒントにしています。”モレ”は、同じくカカオを使っている、本来は煮込み料理なのですが、僕はそのレシピで冷製の料理を作ってみようと考えました。ナスを加熱したあと冷製にするため、14ミリにスライスしたナスをオリーブオイルで焼いて、シェリービネガーと数種類の調味料をいれてマリネし、ホロホロ鳥のレバーと一緒に層を作ります。この層にするのが春ナスではできない、しっかりした秋ナスならではです。
最後に、自分のレシピにあと足りないものは何かと考えたとき、水分が足りないと感じたのでサラダを乗せ、それから香ばしさと焼いた香りが欲しかったので、紙よりも薄くつくったナスのチップで完成させたのが、この”ナスのプレッセ”です。
この料理は、今年は出していませんが、去年は僕の店で出していたお料理で、当店のいわゆる「スペシャリテ」と呼ばれる、得意料理です。
第1話Quintessence

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クスクス
─ クスクスのストーリー
フランスで修行していた頃の話ですが、フランスは陸続きで様々な文化が混じっているんです。色んな国の方がいるので、純粋なフランス人は人口の1/10位しかいないんです。
「クスクス」は元々南の国の方々の食文化。それがフランスでは自然に溶け込んでいました。レストランの”まかない”でたまに作るんですよ。それが出ると知ると、テンションが上がって「早く”まかない?の時間にならないかな」とか、「今日は一体どんな作り方をしたんだ」みたいな話をしていました。”まかない”は、当番制で回って来るんですが、”まかない”の作り方によって、シェフに対してアピールすることが出来ます。「僕はこういうアイディア持っています」と。ただ食事を作るのではなく、シェフに対してアピールが出来る場でもあるんです。それでシェフからコメントいただいたり、褒めてもらったりすると、それは次の仕事のモチベーションになったりするんです。”まかない”はすごく大事なことですね。その中でも、クスクスはご馳走の日というイメージです。
Quintessence -1
Quintessence -2
Quintessence -3
第1話INUA

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ラムショルダー(肩肉)の蒸し煮
(ドラマのためのオリジナル)
─ ラムショルダーのストーリー
イメージしたのは…仔羊が草原にいて好きなことを一日中やって、草花を食べている…という風景です。その仔羊をお皿の上で草原に戻してあげたと言えばよいでしょうか。葉野菜を乗せたのはそこから来ています。
イメージだけではなく、実際に羊肉が苦手な方もいらっしゃるし、脂っこさもあるので、美味しく食べるためには酸味、苦味、辛味も必要。そういう意味でも葉野菜やソースを添えています。
INUA -1
INUA -2
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INUA -4
INUA -5