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BACK NUMBER #644 2018.11.17 O.A.

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小さな村のチームが実業団を相手に執念の下剋上!
雑草軍団の挑戦[前篇]
下剋上。それはスポーツの世界で稀に起こる醍醐味の1つ。それを虎視眈々と狙うチームがある。VC長野トライデンツ。見渡す限りのどかな田園風景が広がる人口1万5000人の長野県箕輪村を本拠地とし、村人や中小企業に支えられながら活動する市民クラブチームだ。専用の練習場などはなく、トレーニングは住民たちも通る道路。バレーの練習は中学生が部活動をしているような村の体育館で行う。所属選手は18名。実業団チームからは声がかからなかった選手たちばかりだ。クラブチームである長野トライデンツは給料の支給がない。その全員が仕事を持ちながらバレーボールを続けている。さらに大企業の後ろ楯がないためにチームの活動費の一部は選手自らが負担。1か月2000円の部費を支払い、練習着代などに使われている。チームから支給されるのは試合用のユニフォームやウェア、合宿の経費などに限られる。こんな厳しい環境の中で彼らを突き動かしているものこそ、打倒実業団という下剋上の精神だ。そんな選手を束ね、チームに人生のすべてを捧げているのが、監督。笹川星哉(33)。チームを指導するだけでなく、チームを運営する会社の社長も務めている。事務所は地元企業に無償で借りた倉庫を改造したもの。社員はわずか4人で、朝10時から練習が始まる夜7時まで様々な仕事をこなしている。運営資金は主に地元企業からのスポンサー収入とサポーター会員からの会費。しかしそれは、試合の遠征費や社員の給料などで消え、笹川の手元にはあまり残らない。そんな中、笹川は1年前からあることを続けている。それは選手たちの食事のサポート。昼はそれぞれの仕事、夜はバレーボールと疎かになりがちな食事面でも選手をサポートしたいと始めた。そのため笹川帰宅は深夜になることも珍しくない。
笹川は、南箕輪村の隣、伊那市で中学時代から将来を嘱望された選手だった。3年生の時アタッカーとして全国大会で優勝。その後、長野県の私立高校にスポーツ特待生として入学すると1年生からレギュラーを掴み取り、チームの中心選手となった。しかし、全国制覇を夢見る笹川の熱意が空回りし、次第にチーム内で孤立するようになった。さらに試合中に先輩の2年生部員を叱責すると、同じ学年の部員が試合中に退部を申し出るという事件が起きてしまった。笹川はこの出来事がきっかけでバレーを辞めてしまった。高校卒業後は南箕輪村の電子部品を扱う会社に就職。しかし、バレーへの気持ちは諦めきれずにいた。そんな彼に声をかけてくれたのが、地元の実業団チームNEC長野だった。再びバレーボールをすることとなり、充実した日々を取りもとしたように見えた。しかし入部から4年後の2007年、会社の業績が悪化し、突然バレー部が廃部となってしまった。再び戦う場所を失った笹川は、ある思いが芽生えた。自分と同じように戦う場所を失って苦しんでいる選手がたくさんいるのではないか?そう考えた笹川は一世一代の行動に出る。勤めていた会社を辞め、自らチームを作ることにしたのだ。無謀な挑戦に思えるこの決断に周囲は猛反対。それでも笹川は突き進んだ。バレーボール協会に加盟するチームは約1100チーム。V1と呼ばれるトップリーグにはわずか10チーム。笹川はV3のさらに下のチームを作らなくてはならないのだ。地域密着にこだわった笹川は、まずチームを支援してくれる地元・長野のスポンサー集めに奔走。資金繰りがある程度見えた所で、スカウト活動を開始。長野を駆けずり回り、大学卒業間近の学生に声をかけて回った。狙いをつけたのは『無名だがバレーの情熱を持った選手』。就職先なども笹川が企業に頼み込み、斡旋した。そして見事、後の長野トライデンツの母体、『VC長野』というクラブチームを立ち上げた。現在所属する18名の選手全員が笹川の情熱に心を動かされてこのチームにいる。
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