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BACK NUMBER #641 2018.10.27 O.A.

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空手界の五輪金メダル候補・植草歩 最大のライバルとの対決
2018年10月14日、東京で空手の世界大会が行われた。立ち見客が出るほどの盛り上がりを見せる中、観客がヒートアップしたのは、彼女が姿を見せた時だった。日本代表・植草歩(26)。彼女が出場するのは“組手”という実践形式種目。植草は、自分より背の高い相手の懐に一瞬で入り込み、低い重心から突きを放つ“中段突き”が武器。トップ選手でも防ぐのは容易のことではない。2018年の世界ランキングは1位。トップ10のほとんどを海外の選手が占める中、2年間、女王の座を守り続けている。彼女の強さの秘密、それは圧倒的な練習量。母校・帝京大学の道場を拠点に猛練習に励み、空手界の女王にまで登り詰めた。しかし、彼女のこれまでの道のりは苦難の連続だった。
植草の名が世界に轟いたのは2013年。大学3年生で出場した4年に1度、五輪の種目ではない競技を集めて行われる世界大会、ワールドゲームズ。IOCが後押しする第2の五輪とも呼ばれる大会だ。そこで当時、世界的には無名だった植草が世界王者となった。突如、空手界に現れたニューヒロイン。強いだけでなく、その愛くるしい笑顔からマスコミは『空手界のきゃりーぱみゅぱみゅ』と呼び、注目した。しかし当時空手は、五輪競技になるべく立候補していたが、2012年のロンドン、2016年のリオでは落選。2020年に向けても採用されないことが決まっていた。しかし、そんな状況を180度変わる出来事が起こった。2020年の五輪開催地が東京に決定。開催都市には、追加競技を提案する権利があり、落選が決まっていた空手が正式競技に選ばれたのだ。これを機に空手に専念すべく、3年間勤めた会社を退社。大手企業とスポンサー契約を結ぶなど環境を整えた。全日本選手権3連覇中を果たしていた植草は、一躍、東京五輪の金メダル候補に名乗りを上げた。
そんな植草には因縁のライバルがいる。武道大国・イランの選手・ハミデ(28)。身長180cm、植草より12cmも上回る。初めて対戦したのは2013年、アジア空手道選手権の決勝戦だった。このとき植草は、ワールドゲームズを制した世界王者。一方ハミデは、国際大会の経験が少ない無名の選手だった。しかし、ハミデの高い位置から繰り出される技に苦戦。植草は何も出来ないまま完敗した。この敗戦以来、2人は一進一退のせめぎ合いを続けている。ハミデに勝つためにはどうしたらいいのか?新たな技を身に着けるべく植草は、ハミデとほぼ同じ身長の男性選手との練習に励んだ。その新しい技とは蹴り。最大の武器である中段突きをフェイントとして使い、中段蹴りを放つというのだ。互いを知り尽くすハミデに絞った秘密兵器。蹴りが決まれば突きの倍、2ポイントを稼ぐこともできる。力強い蹴りを身に着けるために、植草は徹底的に下半身を鍛えた。素早く間合いを縮め、蹴りを繰り出すには、土台になるお尻と太ももの筋肉が重要。鍛えぬいた太ももの周囲は63cm。成人女性のウエスト並みのサイズになっていた。
2018年8月、ジャカルタで行われたアジア大会。世界ランク1位の植草に対し、ハミデは5位だが、前回のアジア大会の覇者。2人は準決勝で激突。試合は2分。ポイントを多く取った方が勝ちとなる。試合は素早い上段突きの打ち合い。ハミデが強烈な上段回し蹴りを放つのに対し、植草は防御するので精一杯。何とか攻撃に転じるもポイントは付かず、残り時間は17秒。誰もがハミデの勝利を確信していたが、植草だけは諦めてはいなかった。上段蹴りのフェイントからすかさず中段蹴り。打倒ハミデのために何度も練習した作戦が見事的中した。残り12秒で逆転、勝利した。決勝でも中国の選手に5-3で勝利した植草は、アジア大会金メダル。日本に20年ぶりの快挙をもたらした。
ライバルとの死闘でレベルアップし続ける空手家・植草歩。2年後、最高の笑顔が東京で花咲くことを期待する。
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