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BACK NUMBER #528 2016.7.2 O.A.

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男子100m史上最高の対決!日本最速を懸けて男たちが激突
日本短距離界の歴史が大きく動いたのは、2008年北京五輪。日本男子100mで最速を誇っていたメンバーが、400mリレーで銅メダルを獲得。短距離界で始めて日本が世界に届いた歴史的瞬間だった。あれから8年…。現在、史上稀にみるハイレベルな争いが繰り広げられている。現役最速10秒01の記録を持つ、桐生祥秀(20)。もう1人はオリンピックレコードホルダーの山縣亮太(24)。そして今年、急成長を遂げたケンブリッジ飛鳥(23)。この3人が日本選手権で初めて激突。日本最速の座を懸けて大舞台に挑んだ3人の男たちは、大激戦を繰り広げた。
<9秒台の重圧を背負った男 桐生祥秀(20)>
2013年4月、17歳で日本歴代2位となる10秒01を記録した桐生祥秀。この瞬間から陸上界のスター選手へと一気にのぼり詰めた。日本陸上界、悲願の9秒台へ。このときから桐生は、想像を絶する重圧を背負うこととなる。陸上界きってのスター選手となった桐生は、常に注目を浴びた。日本人の悲願をいつ達成してくれるのか?桐生の走りは、いつも9秒台への期待と共にあった。しかし、その壁はあまりにも高かった。のしかかる重圧を誰よりも本人が感じていた。わずか100分の2秒。走るたびにどんな好成績を残しても、クローズアップされるのは、届かない9秒台のことばかりだった。高校生の桐生はその重圧とたった1人で向き合い続けた。2014年9月、大学生になった桐生に、突然アクシデントが襲い掛かる。ゴール直後、左太ももが肉離れ。全治2ヵ月で戦線離脱。更に2015年5月には右太ももを故障。そのため、桐生は世界陸上を断念。悔しさをこらえ、桐生は地道な練習を積み重ねた。その成果は今年6月の日本学生個人選手権に現れた。17歳で出した10秒01を再びマーク。悲願の9秒台へ17歳からその重圧を背負う桐生が日本選手権で挑む。
<桐生にエースの座を奪われた男 山縣亮太(24)>
3年前、桐生があの記録を作らなければ、山縣は間違いなく日本のエースだった。2012年のロンドン五輪。日本人のオリンピックレコードとなる10秒07を叩き出し、大舞台でその能力の高さを見せつけた。その年の最も活躍した選手が表紙を飾る陸上競技の記録集でも選ばれたのは山縣だった。しかし2013年、高校生だった桐生が現役最高記録を叩きだすと、山縣はエースの座を桐生に奪われた。さらに2015年3月、桐生が追い風参考記録ながら9秒87をマーク。実はこの時、山縣も同じレースに出場。桐生の走りを間近で体感していた。桐生に勝つためには何をすればいいのか?山縣はあることを徹底的に行った。それはスタートの精度を上げる。もともと得意だったスタートに更に磨きをかけ、先行逃げ切りを狙おうと考えたのだ。その成果が現れたのは、国内トップ選手が集う今年6月の布勢スプリント。絶対に負けられない相手、桐生と同じレース。好スタートを切り、10m地点で桐生を頭ひとつリード。見事、桐生に勝利。桐生からエースの座を奪い返す。その思いが山縣を突き動かしていた。
<急成長を遂げたダークホース ケンブリッジ飛鳥(23)」
リオ五輪を3か月後に控えた2016年5月。日本のトップ選手が参加する東日本実業団選手権・男子100mの予選でノーマークだった1人の男が注目を集めた。残り50mで加速すると、ライバルたちを置き去りにし、ぶっちぎりでゴール。10秒10のタイムで五輪参加標準記録を突破。いきなり代表争いに名乗りを上げた。彼の名はケンブリッジ飛鳥(23)。ジャマイカ出身の日本人だ。ジャマイカ人の父と日本人の母との間に生まれ2歳のときに日本に移住。中学1年生のときに学校の先生に勧められ陸上を始めた。そんなケンブリッジがある選手の走りに衝撃を受ける。それは、2009年の世界陸上男子100m決勝。ジャマイカ代表のウサイン・ボルトが9秒58の世界新記録を樹立。それ以降ボルトに憧れ、五輪出場という夢を頂き続けてきた。高校は陸上競技の名門・東京高校に進学するも圧倒的な強さを見せつけることはできなかった。その後、日本大学に進学したケンブリッジだったが、個人種目で全国優勝はゼロ。伸び悩んでいた。そんなケンブリッジに転機が訪れたのは、2014年2月。大学2年生の時に父の紹介で母国・ジャマイカに武者修行に出かけ、あのボルトも通っていた名門クラブに入門。生まれ持った身体能力を生かし肉体改造に取り組んだ。日本に帰国後も続け、2年で肉体改造に成功。スプリンターとしては異例、体重を5kg増やし、まさに鋼の肉体を手に入れた。この肉体改造が、ケンブリッジに大きな成果をもたらす。大学2年のとき、10秒33だった自己ベストを2年間で0.23秒も縮めた。急成長を遂げたダークホースは、虎視眈々と日本最速の座を狙っていた。

迎えた6月25日、日本選手権決勝。過去最高の2万3500人もの観客が見守る中、初めて3人が激闘する。気温20度、向かい風0.3m。降りしきる雨の中、ついにその時がやってきた。結果は、1/100秒の差でケンブリッジが激戦を制し、2位が山縣、3位が桐生という順位だった。2人に敗れた桐生は悔しさのあまり涙を流した。
史上稀にみる激闘の末、優勝したケンブリッジ。さらに、すでに五輪参加標準記録をクリアしていた桐生と山縣にもリオへの切符が与えられた。三者三様の個性を持つ彼ら。次なる戦いはリオ五輪。この夏最大の見どころだ。
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