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BACK NUMBER #493 2015.10.17 O.A.

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独占密着!中山雅史48歳 現役復帰の舞台裏
48歳の中山雅史が再びユニフォームを身にまとい、現役復帰することを宣言した。2012年に重度の変形性ひざ関節症という故障で、歩くだけでも激痛が走り、ユニフォームを脱いだ中山。あれから3年。膝の故障や長期間のブランクがありながら、中山はいかにしてピッチに戻ってきたのか?この現実離れした現役復帰には、驚くべき真実が隠されていた。中山を現役復帰まで導いた1人の男。トレーナー中村和睦。彼は中山をピッチに立たせることに全てを捧げてきた。中山雅史とトレーナー中村の人生をかけ戦いの日々。その舞台裏を一挙公開する。
2014年7月。ある小さなオフィスの一角で黙々とトレーニングを行う元日本代表FW中山雅史。中山はユニフォームを脱いでからも毎日のように続けて来たという。今から3年前の2012年。コンサドーレ札幌の退団が決まった中山に対し、各メディアは「引退」と大きく報じた。当時、中山は重度の変形性ひざ関節症という故障で、歩くだけでも激痛が走り、日常生活ですら支障をきたしていた。事実、2年もの間、試合から遠ざかり、ほとんどがリハビリ生活。年齢は45歳。引退と報じられても仕方のない状況だった。しかし、それでもなお中山本人は、退団会見の場で「引退」という言葉を口にしなかった。激痛で歩くことさえ困難だった男がそれでも現役にこだわり続ける理由、それは、
「痛みのない状態でサッカーをやりたい」
そんな中山に1人の男が救いの手を差し伸べた。トレーナー中村和睦(37)。中村は、大きな故障で選手生命が脅かされた選手をこれまで何人も救ってきたという実績を持つトレーナー界屈指の手腕を持つ男。その手腕には医学界も注目している人物で、スポーツ医学の総合誌で特集されるなど、多くのアスリートが中村のもとに集まる。中村は、中山の退団会見を見て自らリハビリを任せて欲しいと名乗り出た。知人を通じてすぐに中山に接触し、何度も話し合いながら、中山もリハビリを中村に任せることを決断した。
中村は中山のひざがどういう状態なのかを自分の目で確認するところから始めた。その状態は、想像以上にボロボロだった。中村はひざの痛みを無くすための解決策として、ひざへの負担をどこまで減らすことができるのか、という点に絞った。まず行ったのが、お尻の筋肉の強化。中山は他のサッカー選手と比べても臀部の筋力が極端に弱いことが判明していた。そこを強化できれば、ひざへの負担を大きく軽減できるため、多くの時間を臀部の筋力強化トレーニングに割いた。力の入れ方も細かく指示。しかし、お尻の筋力強化だけでは、どうしても補えない動きがあった。それがひざの屈伸運動。ひざに直接負担をかけると痛みが出てしまう。そんな状態がひざへの負担を減らす次の一手を打った。凝り固まった両足すべての筋肉や腱、靭帯をほぐし、柔らかくすること。さらに足首と股関節の可動域を広げること。
中村は、ひざの痛みを無くす最良の解決策を様々な角度からいくつも考えている。しかし、その施術を全て自らの手では行わない。それは、トレーナーにも細かな分野があり、中村はその道のスペシャリストと同時に問題点を解決することで、これまで何人もの選手を復帰させているのだ。最もふさわしいと思われる人物を選び抜き、実際に施術を行わせるのだ。
リハビリを始めて1年。実践的なトレーニングが出来るまでリハビリが進んでいた。練習前には、ひざへの負担を減らすためにテーピングで補強。ひざの状態を確認しながら練習を進める。次にボールを使ったトレーニング。1年前は歩くだけでひざに激痛が走った中山が、走りながらボールを扱うまで回復した。そして実戦練習の1か月後、中山はチャリティーマッチに出場。ひざの痛みへの恐怖感など全く感じさせないプレーを見せ、およそ30分、全力で走りきった。その後も慎重にリハビリを行いながらより実践的なトレーニングメニューを増やしていった。一歩進んでは二歩後退する、そんなような時期が続くことも多かった。そんな2人に突如大きな光が差し込んだ。それは、リハビリ開始から2年がたった今年(2015年)7月。参加したチャリティーマッチで、指揮をしていた元五輪代表監督の山本昌邦から声をかけられたのだ。
「テストを受けてみないか?」
2か月後、中山はテストを受けるため山本が会長を務めるアマチュアチームがある静岡県沼津へやってきた。このチームは、J3よりさらに下のJFLに加盟するアスルクラロ沼津。中山にとって現役復帰へのチャンスだ。テスト時間は1時間。プロを目指す若手選手に混ざり全力でボールを追った。多くの医者やトレーナーが走ることさえ奇跡と言われるひざの状態から本気でサッカーに取り組む。予定されていた全てのメニューを消化し、中山のテストは終わった。そして9日後、中山は沼津への入団が決定。45歳でユニフォームを脱いでからおよそ3年。常識では考えられない挑戦を中山はやってのけた。
トレーナーの中村は、既にその先を見据えていた。50歳目前での現役復帰という奇跡を実現した中山雅史とトレーナー・中村和睦。二人の挑戦はこれからも続いていく。
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