まちカドまぞく 2丁目

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Interview

スタッフインタビュー
音響監督 岩浪美和×音響効果 小山恭正

『まちカドまぞく 2丁目』Blu-ray&DVD第二巻のブックレットに掲載される岩浪さんと小山さんの対談。今回は特別編として、そこには掲載できなかったこぼれ話をお届けします。

——『まちカドまぞく』は、セリフと声によるSE、効果音、さらに音楽が絶妙なバランスで聞こえてくる作品だと思っています。劇伴の入れ方について、どのようなこだわりがありますか?

岩浪  『まちカドまぞく』の1話に流す音楽って、通常のアニメの2〜3倍になるんです。原作が4コマ漫画で、コマとコマとの落差で面白さを出していくことがあると思うんです。たとえばそれまでシャミ子がはしゃいでいたけど、次のカットになると落ち込んでいるとか。その感情の変化を、通常だと愉快な音楽のままでいったりするんですけど、『まちカドまぞく』に関しては、感情のラインを音楽で全部補足してしまうんですね。そうすることによってテンポ感が出るというのと、見ている人に、ここは喜んでいるんだ、ここは悲しんでいるんだと、意識することなく伝えることができるんです。
ただ、こういうやり方は特殊な手法で、僕以外でやっている人は見たことがないんですけど、音楽編集の技術はもちろん、セリフと音楽のバランスを厳密に決めていくことがすごく大事になってくるんです。セリフと声のSE、そして効果音の調整をした上で、さらに音楽もという意味で、『まちカドまぞく』は音響的にものすごく高い技術力が必要な作品になるんですよね。まったくそうは見えないでしょうけど(笑)。

——小山恭正さんは、声以外の効果音のすべてを手掛けていますが、『まちカドまぞく 2丁目』の作業は、どのようなものでしたか?

小山  喫茶「あすら」が出てきてからは、キャラクターが増えたので音数はかなり増えたというのはありますね。監督の桜井さんは、音がいっぱい付いているのが楽しいと思っているので、動いているところには全部音を付けていくんです。それが楽しくもあり、大変でした(笑)。

——音響的に、作品のイメージからは想像もできないようなたくさんの作業をしているんですね!

岩浪  どの作業も実は大変なんですよ。毎話音楽を選曲するたびに、ゴールが遥か彼方にあるんです。台本を見返して、どう物語の流れを音で構築していこうかと考える時間が、ものすごく長いんです。その時間も通常のアニメが2〜3時間ならば、倍以上かかってしまうから、一瞬憂鬱になるんですよ(笑)。だから毎話数、大変でした。

——第2期なので、継続している方がほとんどですが、キャストに関してはいかがでしたか?

岩浪  おっしゃる通り、ほとんどが継続している方だったので、何の問題もありませんでした。コロナ禍で一斉に収録することはできなくなってしまったけど、制作の方が、なるべく同じシーンで掛け合っているキャラクターは、同じ枠で録れるようにスケジュールのパズルを組んでくれて、役者さんが演じやすいようにしてくださったので、かかる時間は増えましたけど、特にアフレコで苦労することはありませんでした。あとは、みんな人気者になってしまったので、結構スケジュールがタイトなときはありましたね(笑)。
白澤店長とリコさんが新キャラクターとして出てきたんですけど、初回の収録は伊藤いづも先生も来てくださったり、来れないときもリモートで見てくれていたので、原作者ならではの的確なアドバイスをいただくことができました。桜井(弘明)監督が先生と相談しながら、原作と齟齬がないように作らせていただいたので、そこも良かったですね。創造主が直接意見を言ってくださるのなら、それで正解なので、なるべく伊藤先生のイメージに近づける作業になりましたし、そのコミュニケーションもしっかり取れていたので、そういう意味で苦労はなかったです。

——『まちカドまぞく』特有のものといえば、声の効果音ですが、これはどんな基準でOKを出していたのでしょうか?

岩浪  特にはないですね(笑)。シャミ子や桃は毎度のことなので、だいたい一発でOKを出していますけど、それ以外は、法則性があるようでないじゃないですか。アフレコ台本を見ても、これまでやったことがないような電車の音を入っていたりするし。

小山  そこは結構適当というか、ノリですよね(笑)。台本表記があるのに録っていないときもあるし、法則性はゼロなんですよ。電車の「ぷわーん」って書いてあるのが1カットだけあって、それをほかのカットでも流用するのかと思ったらしないんです。桜井さんに聞くと、「あの話数だけでいいよ」って言うんです。意味不明なんですよ(笑)。

岩浪  そういうのも桜井監督が即興でやっていたりするんですよね。警笛入れたら「ドアの開く音も入れたほうがいいんじゃないか」とか。何でこんなに凝らなければいけないんだろうと思いながら、ゲラゲラ笑いながらやっていたりするんです。それでいうと、当初の狙いと一番違っていたのは、第7話のゾンビ映画のアバンです。台本上はナレーションはデスボイスと書いてあったんです。ガラガラした怖い声でしゃべるみたいなのがホラー映画の定番なので、台本もそのイメージで書いていたと思うんですけど、ナレーションを担当した役者さんが、デスメタルのボーカルの演技で持ってきたんですよ(笑)。これには監督と2人で大笑いをしてしまって。これはこれで面白いからいいか!って。ホラー映画とはかけ離れたんですけど「あり!」ってことになったんです。そしたら音楽でもそういう感じの曲を付けないといけないかなぁとか。メインのキャラ以外の部分では、本当に面白ければいいってところはあったかもしれないです。

——役者さんからも、どんな基準でOKが出ているかわからないという話もあったんですよ。

岩浪  確かに「よくわからないけど、こういうことにします」ってよく言っていましたね(笑)。「いいね!OK!」とかじゃないんです。面白かったからOKなんです。

(特別編:対談本編は、『まちカドまぞく 2丁目』Blu-ray&DVD第2巻に封入されるブックレットをお楽しみに)

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