古川 慎(鏑矢惣助役)
ーー『変人のサラダボウル』という作品の印象からお聞かせください。
古川:なかなかない切り口からくるコメディ作品だなと思いました。昨今流行りの異世界転生、メタネタや時事ネタといったところが多分に入りつつ、話としての本筋もある。
サラ(CV.矢野妃菜喜)の“異世界転移日常ライフ”と、惣助の探偵稼業から発展していく話がメインのラインとして続いていくのですが、本当におかしな登場人物ばかりで……(笑)。『変人のサラダボウル』というタイトルですけど、タイトルがこれほどしっくりくる作品ってなかなかないなと思いました。
ーー出てくる人、出てくる人、変人ですからね……。
古川:だいたい変人ですよね。比較的まともな人もいるんですけど、噂話のようなことを、そのまま現実でしているような人たちばかりなので。
ーー惣助は、まともなほうではないですか?
古川:惣助は、まだまともだと思うのですが、う〜ん……でも、事務所を飛び出して、ひとりで探偵になる生き方が、変というより“青いな”と感じました。
ーー確かにそうですね。でも真っすぐな人なんだなと思いました。
古川:真っすぐですし、理想を追うことを、まだ諦めきれていない感じがありますよね。
ーーバンドマンとかもそうですからね。
古川:そうですね。あとは、何故かホームレス生活をしている小説家とかもそうですよね(笑)。何でそんなことしてるの?っていう。普通に雲隠れすればいいのに…と思ってしまいました。
ーー今回はテープオーディションだったそうですが、惣助はツッコミの言葉が多かったのですか?
古川:オーディション原稿用に抜粋された部分は、しっかり探偵モノだったんです。自分の理想の探偵を目指すために熱いものを持っている青年の要素が多くあって。何かを諦めている現在と、熱かった過去の対比みたいなところが印象的な原稿で、結構やさぐれた感じで演じました。
原作を通して読むとまた違った印象を受けるんですけどね。
ーーそんなにやさぐれてもないですからね。
古川:もっと温かい人でした(笑)。原作を読んで、惣助が家族や自分の理想に対して、いろいろ抱えている気持ちがあることを知った上で、第1話のアフレコができたのは面白かったです。ディレクションで変化する部分はありましたが、これが1クール続くのは楽しそうだな!と思えたアフレコだったんです。
ーーディレクションがあった部分というのは、どういうところだったのでしょうか?
古川:「飄々とした感じで」ということと、より青さを出していくようなディレクションでした。
惣助は自分が思っていたよりも青くて、カッコ良さというよりも、真っすぐかつ振り回されて大変な人という感じでしたね(笑)。あと、第1話のアフレコで思ったのは、カロリーの消費量が、自分が想定していた以上に高い!ということでした。でもそれ以上に、サラ役の矢野さんとリヴィア役のM・A・Oさんが頑張っていたから、負けないように僕も頑張らないと、と思いました。
ーーオーディションから考えると、ツッコミはだいぶ増えたでしょうね。
古川:しっかり増えていましたね。ツッコミ方もいろいろ考えながら毎話やっているので、とても楽しかったです。一辺倒になってしまうと面白くないですから。テストだと、ありがたいことに、いい感じでツッコミが決まると、まわりがクスッと笑ってくれたりするんです。あれは本当に心強い。良かった〜、笑ってくれた!と思いながら、毎話やっています(笑)。
ーー本番は、卓のほうでは笑っているんでしょうけど、それはアフレコブースには聞こえないですからね。
古川:有線とかで返してほしいですよね。そうしたら「今のは、イマイチだったか」とか、わかるので(笑)。
惣助の魅力って、真っ当さと青さとツッコミスキルみたいなところに加えて、包容力があるんですよ。しっかりと誰かをサポートできる、誰かのために動ける人間なので、それが第1話の時点でわかるのは、いいなと思いました。サラが周りを振り回していく感じと、彼の面倒見の良さが噛み合って、このあとの物語を生んでいくんでしょうね。
ーー第1話は、サラが空から降ってくる落ちモノであり、逆転生モノであることがわかるところから始まりますけど、いかがでしたか?
古川:展開を把握しやすいので、初めて見る人でも、踏み込んできてくれそうだなと思いました。異世界から美少女が転移してきて、探偵の惣助と出会い、協力して事件を解決していくので、これは探偵のバディモノか?となる導入なのですが、第2話以降、探偵モノが始まるわけでもないという(笑)。それが主軸ではあるものの、それ以外の話もやっていく。で、それ以外の話が、またミソなんです。
第1話のアフレコですごく面白かったシーンがあって。アバンでリヴィアが敵に追い詰められたときに「姫様は絶対に守ります!」と姫だったことを敵にバラしちゃうんですね。そこでM・A・Oさんが「しまった! バレた!!」を全力のギャグでやっていたんです(笑)。僕はそこが第1話で一番好きなんですけど、ツカミとして最高なんですよね。
探偵バディモノかと思わせておいて、しっかりと「しまった! バレた!!」のお姉さんがホームレス生活をしだしている……。そして、その奮闘記が、もう1本の別のラインとして、ずっとあるのが面白いんです。
ーー実は、サラとリヴィアのラインが、2つ同時に走り出すんですよね。
古川:コメディ群像劇として、いろいろなところに視点が切り替わっていくんですよ。だから毎話まったく違うお話を楽しめる。先週こうだったけど、今週はどうなんだろうと、まったく予想できない展開が待っているので、ぜひぜひ第2話以降も見ていただきたいです。
ーーパロディもあるし、コメディとしても幅広いんですよね。
古川:サラが魔術を使えるので、現実ではありえないようなことも起こるし、リヴィアのサイドでは、結構際どいこともやっていくんですよね。それもメタ的な笑いとして面白いんです。かなりスレスレのネタもこのあとありますけど(苦笑)。
ただ、決してお笑い一辺倒でやっているわけではなく、ちゃんとした問題があって、その問題をどういう風に解決していくのかという部分も描いているので、本当にいろんな表情を見せてくれる作品だと思います。だからあとは、いろんな表情を見せるキャラクターを自分たちがどう演じていくか。そこで真実味も出てくるんじゃないかなと思います。
ーー第1話では、岐阜推しなところもありましたね。
古川:そうですね。アニメを見ると、うっすら岐阜に詳しくなれる気がします(笑)。とりあえず、僕も台本で出てきたところを調べてからアフレコに行くんですよ。僕は非岐阜県民だから、いろいろ知れるけど、岐阜県出身の方や今住んでいる方は、あそこね!って思ったりしていると思うと、面白いですよね。僕としては、このあと出てくる場所で、行ってみたいところがいっぱいあります。
ーーどんな場所が出てくるのかはお楽しみに!というところですが、第1話では飛騨牛を食べていましたね。
古川:アフレコ期間中に誕生日を迎えまして、そのときにプレゼントとして飛騨牛を使ったレトルトカレーをいただいたんです。それが僕の初飛騨牛でしたけど、非常に美味しかったです。ほろっほろで、これが飛騨牛か!と思いました。
ーーあと、第1話で印象的なシーンはありましたか?
古川:ジャングルジム爆破の3回繰り返しですね(笑)。やっぱり面白かったです。あれを目の前でやられたら逃げますよね。でもちゃんとサラを抱えて逃げるあたりが、惣助の優しいところだと思いました。
ーーこの作品の魅力が詰まった第1話でしたね。
古川:情報量は多かったですが、それがこのあともずっと続いていくので、笑ってもらえたら嬉しいです。完成映像も見させていただきましたが、キャラクターの絵柄とか色使いが、重くなりすぎない、ライトに見られるような演出になっていたのも魅力的でした。1日の最後に、クスッと、もしくはガハハと笑ってから寝られるような作品でありたいなと思っています。