インタビュー:日曜劇場『A LIFE〜愛しき人〜』

INTERVIEW インタビュー

vol.1 木村拓哉さん(沖田一光)
Q. この『A LIFE〜愛しき人〜』の話を受けて

お話をいただいた時、率直にやるべき内容だなと思いました。

今までに医療というテーマでつくられている作品はたくさんありましたが、どうしても偏ってドラマティックに描かれる内容が多い中、今回の内容を拝見してすごくフラットに医療の等身大を描いていたので「あぁ、やるべきだな」と思いました。脚本の橋部敦子さんが描いてくれたキャラクターの骨格がしっかりしているので、(台本を)読んでいても演じている沖田の発言や行動、気持ちの部分は頷ける部分が多く、演じている僕にとって非常にありがたいです。

Q. 台本を読んでの感想
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橋部さんが書かれた台本、というよりも脚本家さんは、一人のキャラクターを構築していくという責任感がすごくあるんだなと思いました。これもまた職人ですよね。「面白ければいい」ではなく、この人にはこういう時間が流れていて、でもこの人がいて…と一人一人に対する責任感。お話を作っていくということだけでなく、出てくるキャラクターの一人一人に責任をもって書かれている。手術シーンも精密に書かれていますし、作っていくうえで相当足を踏み入れないと、ああいった描写やワードは出てこないと思います。

それをドラマでカタチにするのはハードルが高いですが…高い分やりがいもありますね。

Q. 医者役としてどういう部分を大事にしたいか

スーパードクター"が求められがちだと思うけど、スーパーマンではなく、空も飛べない、怪力もない、だけど自分が向き合う命に対してどれだけ諦めずに向き合うのか。それにどれだけ足掻くのかをお話の中で描いていけたらと思います。

Q. 外科医を演じるにあたり、勉強していること

お医者さんたちの知識をそのままインストールすることは出来ませんが、自分たちがそのキャラクターになって、等身大の医療の現場を表現するときは、実際のお医者さんたちの思っていること感じていること、それくらいはインストールしてもいいんじゃないかなと思いました。

そして僕らがその現場に立った時に、リアルに見えるように動けないとダメですよね。撮影に入る前に「参考になるんだったらどうぞ」と言ってくださった方がいて、手術を見学させていただいたのですが、手術現場を実際に見て、すごく感動しました。見学する前は不安でした、ものすごく特別なことですし。でも、実際にお邪魔させていただくと、皆さんの温度や、進んでいくテンポ、行われている作業が特別なことではなく日常的なんです。その日常に至るまでに、ものすごい準備がなされてカンファレンスが行なわれているということを考えると、ドクターたちは、やはりすごい人たちなんだなと改めて思いました。

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実際に外科医の皆さんがなされていることは、すごいですよ!本当に!

僕が見学して体感させていただいて、個人的に感じたことですが、実際に身体を開いて、オペレーションを進めていくうえで、ベッドに横たわっている患者さんは手術中、もちろん命は宿っているけれど、どこか“物体”なんです。それでドクターが今度は処置を施して身体を閉じますよね。閉じていく段階を踏んでいくと、さっきまで物体だったものがもう一度“人”に戻っていくのを感じました。感動しました。

さらに心臓外科手術で体感させてもらって思ったのは、その方の心臓だけど、その方の“もう一つの生命体”のように感じた瞬間がありました。見学先のドクターたちがわかりやすいように僕たちに説明してくださった中で「一度心臓を眠らせます」という言葉を聞いたとき、「なるほど…」と思いました。ご本人の意識とは別に動いているところですもんね。僕らは意識で動いていますよね。手を曲げたりとか、動いたり。だけど、ここ(心臓)だけは意識とは別に動いているんですよ。あぁ、すごい場所だなと思いました。

Q. 医療練習をしてみて

術後の開いたところを縫い合わせる「多重結び」というのが、このドラマでの1つのキーワードになるのですが、手術にお邪魔させていただいたことで、いかに大事なことなのかがわかるようになりました。命を繋ぐための結びなんだなと。その手際が実際に手術時間にも影響してきます。現場でも「何ダラダラやってんだよ」って会話も本当にありました(笑)。それイコール心臓を止めて何分ということにも関係してきますし、しっかり結ばないともう一度開いてしまうので、すごく大事なこと。実際のドクターの皆さんもまだまだ練習を繰り返しているらしく、たぶんそういう部分が“クラフトマンシップ”というか、自分自身になかなかOKを出さない、職人気質なところなんじゃないかなと思います。

Q. クランクインを果たして
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クランクインをして最初の頃は、自分が扮するキャラクターの責任は背負っているけど、現場での居方までは考えないと思うんですが、クランクインの撮影現場で出演者の皆さんにお会いしてみると、現場の一部になっている感じが、自分と同じタイプだ、と嬉しかったです。

今は現場でお芝居をしていて1つ1つのセッションがすごく楽しいです!
監督はどんな気持ちで撮っているのだろうと思いますよね。カメラ前にいる自分たちがこんなに楽しいので。タッド(浅野忠信さんの愛称)がいろんなアイデアをくれて、僕も応えてあわせる。だけどそれに監督は「ちょっといいですか。そこをまったく沖田を見ずに言ってみるとどうですか」と新たな提案もしたり…。それで「そんなの理解出来ない」とか、通していいエゴもあるかもしれませんが、そこに必要のないエゴはないです。

Q. 実際に共演者とお芝居して

竹内結子さんは、10年以上ぶりの共同作業になります。そこから自分も彼女もいろんな時間を過ごして、久々に一緒の時間を過ごしたけれど、変わらず安心できる方。タッドこと浅野忠信さんとは、ここまで現場で密にご一緒するのは初めてですし、彼自身テレビドラマというスペースに存在してくれるのが、久しぶりなのではないかなぁ。この間、撮影を始める前段階で、お互いに思っていること、撮影に関して思うことをテーブルの上に出し合って相手を理解し合う時間をいただきました。すごく嬉しかったのが、あれほどの表現者が、今回の作品に対してものすごいモチベーションでいたこと。さらにクランクイン後に、タッドと実際にお芝居して、僕は沖田一光として台本を読んでいるので、壇上壮大の読み方が浅すぎたなと感じさせられました。彼は壇上壮大として台本を読んでいるから、台本に描かれてないところまですごく考えていて、コンプレックスやちょっとした不安や引け目だったり、僕が全然読んでないところまで読んでいる。タッドの中の時間を惜しまない気持ちというか、「面白くなるんだったら魅力的になるんだったら、やろう!

という姿勢、それは自分も同感できましたし、ありがたいと思いました。松山ケンイチさんも役への向き合い方がハンパないじゃないですか。“スゴイ奴らが集まっているドラマ”という感じは非常にあります。冷静に考えると「俺もその一人じゃん!」って、その中に自分がいるってことを一瞬忘れそうになりますが(笑)。

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彼ら(ほかの出演者)からすると自分とかタッドは先輩だし、テレビ、映画のなかに必ずいた人だったらしくて、ケンケン(松山ケンイチさんの愛称)が初めて会った時に「木村さんと浅野さんが一緒にいること、これ事件なんですよ」って言ってくれたり(笑)。タッドは、自分と同世代で映画の世界の中で存在し続けて、お互いの存在は認識しあっていたんですけど、「俺らがこうやって座っているのって事件なの!?」って自分たちでは思っています(笑)。

本当に1つ1つ、丁寧に発掘して撮影をしています。監督をまず信じるということも大きな要素だし、それは壮大を演じているタッドだったり竹内さんだったり『A LIFE〜愛しき人〜』に登場する全員が同じ。

本当に皆の本気度がハンパない現場です。

Q. 沖田一光を実際に演じて

回想シーンは、台本では回想シーンとして描かれているから、ドラマを観ている皆さんには共通の認識としてわかっているんですけど、シアトルに沖田が行くことになった理由、壮大と壇上院長が話していたことなんてドラマの中では沖田は知らないですよね。竹内さんが深冬として本を読んで感じて、壮大は壮大、沖田は沖田…それぞれがキャラクターを取り込んだうえで現場で会うと、竹内さんを通じて深冬から「なんであのとき言ってくれなかったの!」っていう不平不満(笑)を言われたりすることもありました。「いやいや、そういう表現に富んだ人間じゃなかったわけだし」って僕も自分を通じて沖田の代弁をしていたり(笑)。チラリと「コレ、(壮大と)おそろいの時計なの」って「私たち指輪もしてるし、時計もおそろいだし…ね?」って言われると「うわっ…」ってちょっと思いますよね。結構そういうことを言ってくるんですよ結子ちゃん…やはり女性のハートは強いんでしょうか(笑)。

脚本の橋部さんがつくりあげた人間関係、すごいなぁとつくづく思います。自分の中だけで構成出来るのは、よくて7割。残りの3割は間違いなく、自分以外の誰か。その誰かが沖田と向き合うことで、沖田が形成されていきます。プログラミングは各々出演者がして撮影に臨んでいると思いますが、3Dプリンターで立体として出てくるのはやはり現場。台本があるので、毎回言うこともわかるし、相手が言ってくる言葉もわかっている、だけど、一日に何度もあります、「ぞわっ」と鳥肌がたつ瞬間。このドラマで1テイクでOKが出ることはあまりなくて、2〜3テイク重ねることが多いんですが、2テイク目でも3テイク目でも「ぞわっ」とします。重ねることでもっと具体的になるし、リアルになっていく、そんな作品です。

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