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戦後70年の今、TBSヴィンテージクラシックスと日本ワインの名門サドヤが思いをひとつに「平和祈念ワイン、Chateau Brillant−TBS VINTAGE CLASSICS 1992」をつくりました2015.7.23

ボタン写真 戦後70年の今、TBSヴィンテージクラシックスと日本ワインの名門サドヤが思いをひとつに「平和祈念ワイン、Chateau Brillant(シャトーブリヤン)−TBS VINTAGE CLASSICS 1992」をつくりました。

至高の音楽芸術と芸術ワインの織り成す豊饒のひとときに平和のとうとさをお感じください。


ワイン名:「Chateau Brillant(シャトーブリヤン)(輝ける農場)−TBS VINTAGE CLASSICS 1992」
関連CD:「カザルスと平井丈一朗特別演奏会」ボッケリーニ:チェロ協奏曲 変ロ長調
TBS VINTAGE CLASSICS 26 ユニバーサル TYGE60021



ワインと平和、そこに至る物語(1)

写真 ■平和のとうとさを感じさせる音楽

カザルスの「鳥の歌」は、あまりにも有名である。

「20世紀の楽聖」と謳われ、チェロの大家だったパブロ・カザルス(1876-1973)。
音楽は、スペイン カタロニア地方の民謡である。4分ほどの小曲である。それをカザルスが編曲し、世界平和への念を篭めた。軍事政権を忌避し、亡命の途にあった老チェリストは、冷戦が過熱し、世界が核兵器のハルマゲドンに怯えていた季節(とき)、敢然と立ち、世界を巡った。「鳥の歌」を引っ提げて。

そして、慄く人々に向け 魂を削るように音楽を奏でた。
1961年、ホワイトハウスに招かれ、J.F.ケネディの前で弾いた。
10年後、国連総会でも「鳥の歌」を愛器のチェロにうたわせた。
その時、演奏に先立ってカザルスは、語った。
「空を飛ぶ鳥は、ピース、ピース、ピースと歌っています」と。
最後のことばは、むせび泣きだった。そして、イ短調の民謡をせつせつと弾いた。身体と精神を張って戦争に抗し続けてきた94歳の人生が見るものの脳裏に重なった。心は、トレモロに震え泣けた。その様子は、世界に中継された。カザルスは、地上の良心に訴えかけた。


■平和の音楽を受け継いだひと
平井丈一朗(1937−)は、カザルスの唯一の後継者である。音楽の神童としてスタートした音楽人生。高名な作曲家平井康三郎の長男である。作曲に秀でた。ピアノを能くした。チェロに転ずると若くして音楽賞を総なめにし、名声を得た。
19歳でカザルスに入門した。カザルスの亡命地プエルトリコで内弟子となった。4年にわたって技術だけでなく、人格と思想の音楽を受け継いだ。カザルスは、1961年4月、このように述べている。「この弟子は、私の愛情と、私が与えうる音楽とチェロについてのすべてのものを受け取りました。私は、今まで彼のような弟子を持ったことがありません。彼は、音楽家として、演奏家として、希に見る域に到達しました。」

写真 ■カザルス、平井丈一朗、TBS。
カザルスのお墨付きを得た。平井丈一朗は、23歳だった。4月、凱旋帰国することになった。カザルスは、どうするのか。カザルスは、生涯「日本の土を踏まない」ということを信条としていた。祖国スペインがフランコによって軍事政権化した際に、それを承認した国々を許さない。そう決めていた。しかし、後継者と指名した平井の帰国デビューを祝うため、カザルスは、生涯でただ一度、己の禁を破った。
1961年4月6日、午前6時40分、カザルスと平井丈一朗は、羽田の東京国際空港(当時)に降り立った。招聘したTBSは、ニュースをリリースした。見出しは、「20世紀の楽聖 パブロ・カザルス氏一行今朝来日」となっていた。演奏会は、4月14日。日比谷公会堂の客席には、皇太子ご夫妻(当時。現、今上陛下ご夫妻)をはじめ名望、名士が顔を揃えた。

鹿倉吉次社長は、プログラム巻頭の挨拶にこう書いた。

「東京放送創立10周年にあたって、ここに20世紀の不世出のチェロ演奏者でありすぐれた指揮者であるパブロ・カザルス氏とその愛弟子であり世界の桧舞台へデビューしようとする平井丈一朗氏を迎えました事は、弊社は勿論のこと日本の音楽史上にも特筆大書すべきことであろうと思います。
 (中略)
カザルス氏が人を魅了するのは、比類のない音楽の巨匠であるばかりでなく、その高潔な人となりです。不正義と暴力をにくみ人間の尊厳と自由を守り抜く人、物欲や名誉欲にとらわれない人、それがパブロ・カザルス氏であります。
この様な芸術的にも、道徳的にも、人間の誇りえる最高の人を迎え得ました事は、日本の音楽愛好家の皆様と共に、この上もない喜びであります。」

指揮台には、パブロ・カザルス。84歳は、肘掛椅子にもたれての指揮となった。東京交響楽団がいかめしく構える。その前に平井丈一朗。若武者は、背筋を伸ばしてチェロを抱えた。
この日、平井丈一朗は、二つのチェロ協奏曲を弾いた。円熟期のシューマンの作品を平井は、美しくも深玄にうたいあげた。カザルスは、それをスケール大きく豊かに高めた。ラロのチェロ協奏曲は、情熱と夢だった。異なる二曲だが通奏していたのは、カザルスの平和を思う心である。平和を欲するおだやかで高邁な気持ちがうまれてくる。カザルスの指揮とはそういうことだ。3日後の14日、東京での最後の「パブロ・カザルス指揮 平井丈一朗特別演奏会」が開催された。この日は、別のチェロ協奏曲の二曲が用意された。イタリアのボッケリーニとドボルザークのそれである。ボッケリーニは、第9番である。かもし出されたのは、明るさと郷愁と感情と情熱。平和の心に加えて、密度の高い師弟愛が響いた。絶賛の拍手のうちに2日限りの音楽会は終わった。


【幻のボッケリーニ、第9番のゆくえ】
カザルス指揮、平井丈一朗の師弟は、東京でつごう4曲のチェロ協奏曲を演奏したことになる。この中で、最も有名な通称ドボコン、ドボルザークのチェロ協奏曲が4月17日、夜7時、TBSテレビで放送された。ゴールデンタイム。ヤマハ提供の特別番組だった。4月23日午後1時にTBSラジオで同じくこのチェロ協奏曲が流れた。その後、時を経て、1996年、当時の東芝EMIから4つのチェロ協奏曲のうち、ラロとシューマンのチェロ協奏曲がCDとして発売された(世紀の巨匠 ジャパンライブシリーズ。廃盤)こうして、4曲のチェロ協奏曲の美しい音楽記録は、ボッケリーニの9番をのぞいて演奏会後、なんらかの形で世に還った。しかし、ハイドンと同時代で、ののびやかでロマンティックなボッケリーニのチェロ協奏曲第9番は、その後、TBSの社内においてもずっと行方不明だった。
 2013年、TBS社内で本格的な音源確認作業がはじまった。バックハウス、ケンプ、ハイフェッツ、ロストロポーヴィチ、グリュミオー。錚々たる名匠のライブ記録が次々に見つかった。探し求めたボッケリーニの9番が見つかったのは、翌年のことだった。

写真 【音源発見の報、世界を巡る】
 2015年3月5日 東京新聞、毎日新聞などで相次いで以下のニュースが報じられた。
東京新聞 朝刊
「カザルス指揮の音源 演奏者宅で見つかる。1961年の来日公演
スペイン出身の世界的チェリストで指揮者 作曲家のパブロ・カザルスが半世紀前に行った来日公演の録音テープが、カザルスに師事していたチェロ奏者、平井丈一朗さん(76)の東京都内の自宅で見つかった。カザルスを招いたTBSがこのほど発表した。TBSによると、公演は、4月14日に東京・日比谷公会堂で開催。テープの音源は、カザルス指揮のボッケリーニのチェロ協奏曲第9番で、平井さんがソリストを務め、東京交響楽団が演奏した。当時、TBS主催の演奏会では、4曲のチェロ協奏曲が演奏されたが、このボッケリーニ9番だけが行方がわからなくなっていたという。演奏を聴いた音楽評論家の林田直樹さんは、『カザルスの火のような意思が浸透しているのが生々しく感じられる』とコメントした。この音源を含むCDがTBS VINTAGE CLASSICSの26枚目として3月19日に発売される。」

実際に発見したのは、その年の1月23日だった。その後、録音内容の確認などを経て、3月にニュースとなった。この日のTBSテレNEWS23では、「20世紀の楽聖 音源が見つかる」として膳場貴子キャスターが報じた。ニュースは、世界を巡り、スペインのEl Mundo紙は、“Aparece una grabacion inedita de un concierto de Pau Casala en Japon”(パウ・カザルスの日本公演の音源が発見された)と大きな紙面を割いた。

音源調査がきっかけとなり半世紀を経て、TBSと名チェリストの縁が結びなおされた。喜寿を迎えた平井丈一朗の音楽芸術は、熟成の度を増した。カザルス由来の社会意識、使命感は、平井の心中でさらに高まっていた。TBSとの語らいの中から、昨年、「平和祈念の調べ」という音楽会が新潟で実現した。今年、10月15日には、盛岡で「震災復興チャリティコンサート 明日ありと…愛弟子平井丈一朗が楽聖カザルスに捧げる特別演奏会」が岩手県民会館で開催される。


【そして、「平和祈念ワイン」へ】
そして、平和祈念ワインが、どのようにして生まれたのか。ワインと平和、そこに至る物語の続編は、TBS iShopのHPにてお読みいただきたい。


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