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日本最古のテレビ映画『ぽんぽこ物語 』修復版 Paravi(パラビ)初配信記念コラム(4)2022.2.7

写真 テレビ・アナリスト 吉田正和

■私感4【物語】
続くことで人はそこに思いを馳せ、物語を紡ぐことができるのか。

「ぽんぽこ物語」は雑誌「少女ブック」に漫画連載されたことから子供番組だと考えられるが、全73話すべての脚本を担当した川内康範は、子供にもわかりやすい物語の中に、人生にかかわる岐路の選択、困難に立ち向かう力、出会いの大切さなどを巧みに投げ込み、大人の鑑賞にも耐えうるよう、しかも国産初のテレビ映画として人気が出るよう、ファミリーで楽しめる連続性を持たせたストーリーを組み立てた。

10分枠の帯ドラマだった「ぽんぽこ物語」は国産初の「テレビ映画」であり、初の「連続ドラマ」だった。DVD(2020年2月)ではパッケージングと修復可否話数の関係で12話にセレクションされてしまったので、転生した子だぬきの成長物語である過程が追えないのは致命的だった。これでは全体像が把握できない。

今回のParaviでの配信では修復できなかった話数をダイジェストにして物語を追えるようにしている。より高画質になった映像に加え、物語が追えるようになっていることがParaviで視聴することへの最大の訴求ポイントである。全体像が把握できることによる作品の印象度はあまりにも違う。各話が短編コメディー作品と感じた「ぽんぽこ物語」が感動的な連続物語であったことを認識するだろう。

2018年のフィルム発見から2020年のDVD化を経て、今回の「Paravi配信版」で、当時のスタッフがテレビという、当時の新しいメディアの新しい視聴者に向かって制作した「ぽんぽこ物語」が、現在のシステムで再生されることを目的として、未来の視聴者へも感動を与えられるように修復が完成したといえる。

最新のフィルム修復と、どうしても修復できなかった話数の物語を補完することによって、国産初のテレビ映画という資料的価値だけでなく、ドラマとしての面白さを現在の視聴者に提示する。

「Paravi」は過去の視聴者へのノスタルジーを未来の視聴者へのエモーショナルに変化させた。

《おわり》


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吉田 正和(よしだ・まさかず)テレビ・アナリスト
1964年、大阪市生まれ。86年、芸能事務所で俳優マネージメントに従事。「火曜サスペンス」「土曜ワイド劇場」など2時間ドラマ企画に携わり、プロット、脚本、キャスティングを担当。トーク・バラエティー、ラジオ番組の構成、放送作家をつとめる。また子供番組音楽のパッケージ化を提案。『人造人間キカイダー/01』『スケバン刑事』などのテレビ映画サウンドトラックCDの企画、構成、解説に加え、80年代アイドルCD、アニメCDの構成も行う。『快傑ズバット』『大激闘マッドポリス'80』などのDVD、Blu-rayのパッケージ・プランニング、映像演出など、過去作品のアーカイブ作業を推進している。「ぽんぽこ物語」ライナーノーツでは取材と執筆を担当した。

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