手作りフリップ(10月7日放送)
「本庶教授にノーベル医学生理学賞」

ノーベル賞を受賞した本庶佑さんの発見から生まれたがん治療薬「オプジーボ」。
どういう仕組みなのかといいますと…通常「T細胞」という免疫細胞は私たちの体にウィルスなど異物が侵入すると攻撃して撃退します。

しかしがん細胞の場合、免疫細胞には表面にPD-1がついていますが、がん細胞はPD-L1と呼ばれるタンパク質を持っていて、この二つが結合すると攻撃を止めるよう信号が出されます。
免疫細胞が攻撃をやめてしまうことで、がん細胞が増殖して進行してしまいます。
「オプジーボ」はPD-1を「抗体」で塞ぎ、PD-L1がくっつかないように邪魔することで、免疫細胞ががん細胞を攻撃する能力を取り戻すという薬なんです。

オプジーボは今では胃がんや肺がんなど7種類のがんに対して治療が認められています。
しかし課題もあります。
市場規模が拡大したことなどから11月の値段改定で値下がりするとはいえ、年間に換算するとおよそ1000万円、自己負担は最高で年200万円程度とまだかなり高額です。
また画期的な薬として期待を集めていますけれども、一方で効果があるのは2割から3割の人で、誰にでも効果があるわけではありません。

本庶さんは細胞が自ら死ぬ現象について研究している過程で偶然PD-1を発見しました。
本庶さんは国に基礎研究への理解を求め「ライフサイエンス(=生命科学)に投資しない国には未来がない」と訴えました。
基礎研究とは「決まった応用や用途を直接に考えず自然世界の原理を追究する学問」のことで、研究をしている時点では具体的に何の役に立つのか分からないことがほとんどです。
そのため実用化を目指し利益に直結しやすい応用研究の方に予算が偏る傾向があります。 こうした風潮もあり、国立大学の運営費交付金は年々減少。 国立大学が法人化した2004年からおよそ1440億円減っていて、基礎研究への支援が不十分になっています。

サイエンスライターの竹内薫さんは「このままだと10年後、20年後には日本からノーベル賞を取る研究が出なくなる」と危惧しています。
基礎研究に光をあてることで、長期的な視野で多くの芽を育てることが求められています。
