手作りフリップ(8月5日放送)
「3Dプリンターで銃が…」

そもそもこの問題の発端は、銃を持つ自由を主張するアメリカの団体が2013年に3Dプリンターで製造できる銃の設計データを公開したことでした。
3Dプリンターの技術は、ものづくりに画期的な飛躍をもたらし、幅広い分野で活用されています。 こちらのバイオリンや、車、このバス停や住宅も3Dプリンターで作られたものなんです。
さらに医療の分野でも利用されています。頭蓋骨などの骨の代わりとなるパーツの作製や、臓器の模型を作り、手術のシミュレーションをすることなどにも使われています。

今回はその技術が銃を作ることに使われました。
アメリカでは銃の所有には年齢や犯罪歴の有無などがチェックされますが、3Dプリンターで製造された銃はプラスチックでできているため、金属探知機で検知できない上、誰でも製造、所有することができることから、幽霊のように見えない銃=「ゴースト・ガン」とも呼ばれています。
こうした銃が拡散することを危険視したオバマ政権がこれを規制し、データは非公開となりましたが、団体は「表現の自由」を訴え政府との間で裁判となっていました。 今年6月、トランプ政権が団体側と和解し、設計データの公開を認めたため、団体は8月1日に公開すると予告していました。

こうした動きに対し、ワシントン州などが公開中止を求めて提訴、連邦地方裁判所はデータが公開されると「取り返しが付かない損害を与えかねない」と一時差し止めの仮処分を命じました。
銃を持つ自由を主張するこの団体の代表は「我々はこれからこの仮処分と闘っていく」と対決姿勢を鮮明にしています。

そんな3Dプリンター銃ですが、この問題はアメリカ国内に留まるものではありません。 設計データがインターネットで公開されれば、世界中どこでもデータのダウンロードが可能になるので、銃社会でない国や、テロリストにまでこうした銃が一気に拡散しかねません。
日本でも2014年、ネットで設計データをダウンロードした神奈川県の大学職員の男が3Dプリンターで拳銃を製造し、逮捕される事件がありました。

また当局が団体のデータの公開を禁止しても、データはすでにネット上に拡散しているうえ、別の人物が設計図を上げれば、いたちごっことなってしまう現実があり、有効な対策をとれるのかが問われています。