手作りフリップ(11月12日放送)
「『パラダイス文書』税の楽園とは?」

去年4月、パナマの法律事務所からタックスヘイブン=租税回避地に関する大量の内部文書が流出。「パナマ文書」と呼ばれ、現役の首相を辞任に追い込むなど世界に衝撃を与えました。
今回新たにバミューダ諸島の法律事務所から流出した、1340万件に上る内部文書を、 入手したICIJ=国際調査報道ジャーナリスト連合などが「パラダイス文書」と名付けました。

そこにはイギリスのエリザベス女王をはじめ、数々の著名人や世界的に事業を展開する企業の名前があり、その中に日本の企業や個人の情報1056件も含まれています。
まずタックスヘイブン=租税回避地について簡単に説明しましょう。
今回主な舞台となったバミューダ諸島はじめ、タックスヘイブンと呼ばれる国や地域は、赤い点、世界に50以上あるといわれています。タックスヘイブンでは「税金がゼロか、ほとんどかかりません」。

例えば日本のある企業が日本とタックスヘイブンに投資会社を設立したとします。それぞれがアメリカの同じファンドに投資して1億円を稼ぎました。日本の企業は30%の法人税3000万円が徴収されますがタックスヘイブンでは無税なのです。
ここで問題なのは、タックスヘイブンでは、法律によって顧客の情報が厳格に守られ、 「ブラックボックス化」していることです。いったい誰がどのような企業にどれだけ投資しているのか、今回のような内部告発がない限り、表に出ることはないのです。

では各国の要人はどのようにタックスヘイブンを利用していたのでしょうか?
エリザベス女王の個人資産およそ15億円がケイマン諸島などのファンドに投資されていました。 ところがこのファンドの運用先が、イギリスの貧困層を搾取していると批判されている家電小売業で、年率最大で99.9%という高利を課すような業者だったのです。
またトランプ政権のロス商務長官が出資している海運会社「ナビゲーター・ホールディングス」が、プーチン氏の娘婿が役員のロシア石油化学大手「シブール」の輸送業務を請け負っていてことが分かりました。3年間でおよそ78億円の取引を行っていて、「シブール」社のオーナーの1人が、アメリカの経済制裁の対象であることから、アメリカの国益に反する「利益相反」の可能性も指摘されています。

アメリカのコンサルティング会社の去年の試算では、2015年のタックスヘイブンへの出資総額はおよそ1130兆円。これは日本、イギリス、フランスの国内総生産の合計と、ほぼ同額です。
タックスヘイブン問題に詳しいデンマークのハリングトン教授は、「富裕層や企業から取り損ねた税金は、庶民の懐から徴収される」と指摘、現状について「フランス革命当時と同レベルの不平等、不正に到達しようとしている」と警告を発しています。