手作りフリップ（9月24日放送）
「クルド人自治区で独立問う住民投票」
そもそもクルド人とはどういう人々で、なぜ独立を求めているのでしょうか。
クルド人は、今のトルコやイラク、イランなどにまたがった山岳地帯に暮らし、第一次大戦以前まで、その多くがオスマン帝国の領土でした。
しかし、第一次大戦でオスマン帝国が敗れると、戦勝国のイギリス、フランス、ロシアによってサイクス・ピコ協定が結ばれ、領土は分断。この時、クルド人国家の建設も話に上りましたが、トルコの反対で消滅。結局、クルド人はバラバラにされてしまいました。
その総人口は2500万から3000万人とされ、「国を持たない世界最大の民族」と呼ばれます。
1946年、ソ連の支援で、一度だけクルド人国家がイラン北西部に誕生しましたが、それもわずか11か月で崩壊。
クルド人は、それぞれの国で差別や迫害を受け続け、1988年には、イラク北部のハラブジャで、サダム・フセイン政権によってクルド人とされる最大5000人の住民が化学兵器で殺されました。
長年、独立や権利拡大を求めつづけたクルド人ですが、イラクでは、1991年の湾岸戦争や2003年のイラク戦争を経て、やっと、クルド人自治区を設立。
さらに2014年にイスラム国が台頭すると、そのイスラム国との戦闘を続けて、勢力範囲を拡大させていきました。
去年3月、シリア北部で、クルド人勢力が自治区の設立を宣言。来年1月には初めて議会選挙を実施する予定です。
一方、イラクのクルド人自治区は、今月25日、「独立を問う」住民投票を行います。自治政府のバルザニ議長は「クルド人の願望を内外に示すもの」としていて賛成されたら「即独立」というものではありません。
それでも、周囲の内外から住民投票への圧力が高まっています。そもそも国家が分裂しかねない動きにイラク政府は反対。じつは今回の投票の対象地域は、クルド人自治区だけでなく、イラク政府と係争地の周辺地域も含まれます。
なかでもキルクークはイラク有数の油田地帯で、イラクのアバディ首相は軍事介入も示唆しています。
また、国内にクルド人を抱える隣国のトルコやイランも、独立の動きが波及することを警戒して反対。アメリカのホワイトハウスも「イスラム国との戦闘を続けている努力を損なう」と懸念を表明。周囲の圧力が強い中、もし投票が強行されると…
クルド人問題は中東情勢の新たな火種になるかもしれません。