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撮影レポート 梶原善 篇

2017.06.16

劇団☆新感線の『髑髏城の七人』には2004年版『アカドクロ』で贋鉄斎役を経験している梶原善さん。今回の“Season鳥”では、初めて狸穴二郎衛門役に挑みます。

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まず、全体のバランスを確認するためのテスト撮影中、梶原さんの首回りの襟巻風の布を見て「他の色とか柄はありますか?」とアートディレクターの河野真一さんに聞かれた衣裳や小道具のスタッフたち。早速、持参している他の布を出しては当てて、試します。結局、小道具の高橋岳蔵さんが持っていた布を首に巻くことになった梶原さん。「え〜、これ、洗ってあるの〜? 奥から引っ張り出してきたんじゃないの〜?」と言われた高橋さんは「そんなことないっす!」と即答。冒頭から周囲にクスクス笑いが絶えません。

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“Season鳥”の狸穴の羽織は、明るい辛子色。これは演出のいのうえひでのりさんの指示だったとのこと。衣裳、小道具すべて整った状態でカメラの前に立つ梶原さんを見て、「わ、ちゃんと狸穴だー」と頷くスタッフたち。カメラマンの野波浩さんから「シリアス顔で、腕を組んでみて」と言われた梶原さん、渋めの表情からいよいよ撮影開始です。

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照明を直したり、小道具に手を加えたり、セットチェンジしたりする、ちょっとした隙間の時間には、メイクさん、小道具さん、衣裳さんら、いろいろなスタッフとまんべんなく楽し気に会話をしている梶原さん。さすが準劇団員、撮影中も常にリラックスモードです。

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狸穴の小道具といえば、笠と刀と鉄砲。笠を身体に装着する際には隙間にクッションになる布を少しはさんで、見える位置と角度を調整します。「気持ち足を広げて、肩を少し開き気味に」「表情はいろいろ変えてみて」「少し右足を前に踏み出して」との野波さんからの指示に、丁寧に反応していく梶原さん。刀を少しだけ抜いて構えるポーズも決まっています。

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「次は、鉄砲を担ごうか」ということになり、今度は「睨む感じで」「もっと不敵な笑みで」「左手を顎にあててニヤっと笑って」「険しい、強い表情で」とのリクエストに応える梶原さん。ヒゲの周りをいじりながら、何か良からぬことを企んでいる……というようなポーズを試していると、またもやクスクス笑いが自然発生。ちょっとした仕草にも独特の味があるので、見ているとどうしても周囲のスタッフの口元がほころんでしまうようです。

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また、この日は脚本の中島かずきさんもスタジオに登場、これまでの撮影の様子をモニターでチェックしていました。それぞれのキャラクターの仕上がり具合に、満足げに頷いたり、爆笑したり。

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セットチェンジの合間には「あっ、もしかして本番も雪駄だったりするの?」と気づいた梶原さん。「雪駄でグルグル回るお客さんの前に立つのはなあ。いや、でも狸穴はアクションはそんなにないはずだから大丈夫か」などと言っていると、そばにいたいのうえさんは「いや、まだ決めつけないほうがいいよ」とニヤリ。「立ち回りするってこと?いやいや、今回は(早乙女)太一も(森山)未來もいるんだから!そっちにまかせるよ!!」と少々焦り気味の様子にはまたもや周囲はクスクス。


劇団☆新感線には、これが堂々6回目の出演となる“準劇団員”の梶原さんにも『髑髏城の七人』Season鳥への想いを語っていただきました。

——長時間の撮影、本当にお疲れさまでした!
はい、びっくりしました。こんなに長く撮影されたのは初めてだったので。予定では5〜6時間かかると聞いていましたけど、今日はもっとかかりましたよね。僕、今までは2時間程度だった印象だったので、今回はずいぶん時間をかけていただいたなあ〜と(笑)。

——『髑髏城の七人』には『アカドクロ』(2004年)以来の参加ですが、前回とは役柄が変わりますね。もう、贋鉄斎役はいいやと思われたんですか?
いやいや、別に僕が役を選んだわけではないので!(笑)『アカドクロ』の時は相手が古田(新太)くんだったから、僕も贋鉄斎役ができたようなところもありましたからね。とはいえ、とにかく僕は、新感線に参加できるのであればどんな役でもいいんです、はい。お声をかけていただけるだけで、光栄です。

——では今回声がかかった時にはどう思われたんですか。
ワクワク!です(笑)。また来た!と思って。

—— 一時期、もっともっと頻繁に出演したいのに!みたいなことをおっしゃっていた記憶があります。
ハハハ。その頃は、(池田)成志さんの出演回数を抜かしたいという思惑があったんですよ。でも、成志さんはもう12回出られているんでしょ。僕はきっともう叶わないので、最近はそんなこと言いません。逆に、びーびーうるさく言っていたらはずされちゃいそうだし(笑)。今は黙って待つことにしています。

——『髑髏城の七人』という作品自体の魅力はどんなところだと思われていますか。
まあ、なんだかんだといって、みんなが一丸となって向かっていくところじゃないですかね。それは、舞台裏で支えてくださっているスタッフさんも含めて、特にこれは“一丸力”が強い作品という気がします。

——狸穴二郎衛門の役柄についてはどういう印象がありますか。
食えないヤツ、かな。それが今回、僕が芝居を作る上でのテーマにもなるんじゃないかとも思います。

——今回、新しい劇場で“花・鳥・風・月”とパターンを変えて上演するというこの企画の話を聞いた時はどう思われましたか。
さすが新感線!と思いました。普通はロングランといえばひとつの作品を長くやることだと思いますけど、今回はキャストほぼ全部を総とっかえじゃないですか。おそろしいことですよ。まあ、でもこんなことが今の日本でできるのは、新感線だけだと思いますね。

——何度も新感線に出られていて、この劇団のどんなところに魅力を感じられていらっしゃいますか。
衣裳にしても舞台装置にしてもいろいろ豪華な面が多いですが、僕としてはやはり、後ろで頑張ってくれているスタッフさんたちのおかげで、すごく安心して気持ちよくお芝居をさせていただける劇団だと思っていて。そこが一番の魅力ですかね。あとは集めてくれるキャスティングの良さという部分ももちろんありますけど。今回は劇場の機構のことがあるのでまだわからないことも多いですが、でもきっと大丈夫だと思います。

——そのIHIステージアラウンド東京という、新しい劇場でやることに関しては。
いや、こればかりはまったくどうなるか、まだわかりません(笑)。大変なことは大変だと思いますよ、舞台袖に戻って一段落することができなくなるのかなとか、その分、出番が延びるのかなとか。以前なら、袖で軽くのどを湿らせることができたところもできなくなるのかもしれないですしね。まあ、お客さんにしてみれば、相当面白い体験ができるんだろうなとは思いますが。

——“Season鳥”のカンパニーの顔ぶれをご覧になって、いかがですか。
ほとんど馴染みの深い連中ばかりなので、そういう意味ではお祭り騒ぎ気分というか。楽しくできるんじゃないかな、と思っています。

——改めて、いのうえさんの演出を受けることの面白さとは。
僕はもともと小劇場出身(東京サンシャインボーイズ)で、三谷(幸喜)さんの演出はわりとナチュラルな芝居だし、あの人はあまり立ち位置を気にする人ではないので自分で好きなところに立って芝居をしていて。セリフもリアルに話をしている相手に向かって言っていたんですが、いのうえさんのお芝居はそれとは思いっきり真逆で、ど正面向いてやるでしょ。音もカンカラカンカラとかバーン!とか、いろいろ入るし(笑)。最初、これは無理!と思っていたけど、でもやればやったで気持ちがいいわけですよね。立ち位置にしても素晴らしく綺麗に整理してくれるし。だから最初は戸惑ったけど、それが自分のものになれば気持ちよく演じられることがわかっているので、あとはもうひたすら信じてやっています。まったく刃向かうことなく、ね。

——中島かずきさんの書かれる脚本の面白さはいかがですか。
もちろん『髑髏城の七人』以外にもたくさん書かれていますから、一言では言えないですけど。これに関してはキャラクターに武骨なところがあったり、ラブストーリーではないですが男同士の友情みたいなところもあって、そこがすごく好きですね。

——ではファンのみなさんへ、梶原さんからお誘いのメッセージをいただけますか。
これ、難しいね。だって、うちだけじゃないから(笑)。まあ、まず“花”を観て、僕が出ている“鳥”ももちろん観ていただき、次の“風”や“月”も観てから、「さあ、あなたはどれが、誰が好きでしたか?」って聞いてみたいです。決して安くはないのはわかっていますけど、絶対に損はさせません!できれば全部観にきなさい!!(笑)ということで、どうぞよろしくお願いします。