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撮影レポート 粟根まこと 篇

2017.06.02

『髑髏城の七人』Season鳥のメインキャスト10人の中で唯一、劇団☆新感線の劇団員からの参加となるのが粟根まことさん。今回は1990年に上演された初演版で演じ、その後2004年版『アオドクロ』でも演じていた、裏切りキャラの渡京役を演じます。ちなみに粟根さんは1997年版には無界屋蘭兵衛、2011年版には天部の将監(てんぶのしょうげん)役で出演していますので、『髑髏城の七人』にはこれが5回目の参加になります。

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今回の渡京のビジュアルは丸メガネに、黒髪、それも前髪アリのスタイル。小道具は、粟根さん演じるキャラにはお馴染み感のある、そろばんです。撮影用にはさまざまな大きさのそろばんを3種類用意。それぞれ顔の横に合わせてバランスをチェックしていると、それをまるで楽器のように爪弾き出す仕草の粟根さん。あちこちから「やっぱり似合う!」との声。

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衣裳は茶系ベースのクールな印象の着流しに、派手な生地をパッチワークにしたベストのような羽織もの。衣裳の堂本教子さんによると、このパッチワーク、そろばんの珠の形を意識しているそう。前面も飾り紐がつけてあったり、アクセサリーもじゃらじゃらとつけ、もしかしたらこれまでで一番派手好きな渡京かも…?そして撮影に入ると、このゴツゴツした首飾りが身体を動かすとズレて少し重なってしまったりするのですが、その度に粟根さんが気づいては自ら整えています。やはり細かいところにもすぐ気が回る粟根さんです。

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モニターを見ていたアートディレクターの河野さんの「メガネのタッチをもう少し派手に入れたい…」とのつぶやきに反応してさっと粟根さんのメガネをはずし、小道具の高橋岳蔵さんがすぐさま加工作業に入ります。「メガネをはずすと海原雄山に似てない?」「そう言われれば!」などという会話が交わされている間に、ほんの数分でメガネフレームが戻ってきました。確かに、目立つようにさりげなくハイライトが入れられています。「おおー、いいねー」「さすが、早い!」と早速、大好評。

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カメラマンの野波さんからの「ツンと、偉そうな感じ」「次はオーバーな表情で」「“俺って天才?”という顔してみて」などという注文に、目を見開いたり、口をひん曲げたりして百面相をしていく粟根さん。河野さんが「じゃ、そろばんを入れて」と合図すると、粟根さんは「ご破産で願いましては……」と言いながら、「片手で持つ? 両手にする?」と確認。野波さんが「さっきみたいに顔の近くで、そろばんを愛撫する感じかな」と言い出すと、今度はとろけるような表情に。「ええよー、でもちょっとおかしな人だ!」と笑い出す河野さんに、スタジオ内の空気もどんどん盛り上がります。

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河野さんが「一番でかいほうも見てみたい」と、そろばんを大きめのものと交換すると、それを今度は担ぐ粟根さん。「お約束!」「かっこいいね!!」と声がかかると、粟根さんは「これまでやってきた戯衛門とか、蘭兵衛とか、いろいろ混ざってる感じですよね」とニヤリ。でもやはり、バランス的に大きすぎるとのことで先ほどのそろばんを戻すと、今度はそれをハイテンション風に撫でまわしたあと、懐に半分だけ入れてみたり。「懐からスーッと出して、カッコイイ顔で」「ニヒルな感じで、シリアスに」というリクエストが出て、先程とはまた違う表情で決める粟根さん。野波さんが「もっと恍惚の表情で」とまで言い出すと、周囲のスタッフはみな「もっと〜?」と、苦笑い。

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粟根さんにも、これまでの『髑髏城の七人』のこと、今回の“Season鳥”のことなど、語っていただきました。

——粟根さんは今回のステージアラウンド版『髑髏城の七人』の企画を聞いた時、最初はどう思われましたか。
無謀だ、正気の沙汰じゃない!と思いました。1年間、同じ作品をやることが無謀な上に、新しい、しかも特殊な劇場でやるわけですから。そこでうちみたいな小劇場劇団が、こけら落としで1年3カ月やるなんて、そんなにチケットが売れるわけがないだろう?と思いました。最初の話ではもっと小さな劇場で同じ作品を長くやるんだろうと思っていたので、まさかこんなに巨大な、客席が回る劇場で、違うキャスト、脚本、演出で連続上演すると知った時はビックリしました。

——そして粟根さんは、また裏切り渡京役を演じるわけですが。
はい。これって27年前にやっていた役ですよ、すごいですよね。1990年初演の『髑髏城の七人』でやった後、2004年『アオドクロ』でもやったので、13年ぶりです。だけど『髑髏城の七人』はこれまで4期、5作品やっているんですが、そのうちの3回は裏切り三五、河野まさとくんが演じているんです。裏切り渡京は2回ですからね。私としてはあの裏切りキャラは、渡京がオリジネーターだと思っていたんですが。最近はみなさん、裏切りといえば三五、河野くんだと思っているらしくて。

——なんだか、そういう風潮になっているみたいですね。
はい。なので今回は、ちょっと裏切りの真骨頂を河野くんに見せつけてやりたいと思っています(笑)。だけど、それにしても27年前にやった役をもう一度演じるなんてことは、なかなか経験できないことですよね。新感線が、いかに長くやってるかってことですよ。『アオドクロ』の時も確か「14年ぶりだ」と言っていたんですが、今回はそこから13年ぶりなので、そう考えると約14年に1回、渡京をやっていることになります。

——約14年ごとに巡ってくる役なんですね。今回の鳥チームの座組は、粟根さんにはどう見えていますか。
ザ・小劇場チームですね。そしてザ・準劇団員チームでもあります。“花”にはすごく豪華な面々が揃っていましたが新感線初参加という方が多くて、古田くんと小栗くん、あと近藤さんが経験者で、あとは初新感線ばかり。それが“鳥”では怖ろしいことに、沙霧役の清水葉月さん以外は新感線経験者ですから。それも準劇団員といっても過言ではない、いのうえひでのりの信頼の厚いゲストが揃っているわけです。小劇場出身者が多く、おポンチ好きも多い。もともとは池田成志さんが、『西遊記』(1999年)には出ていただいているものの、それ以外にはいわゆるカッコイイほうの新感線をほとんど経験していないんです。今回初めてカッコイイほうの新感線で、野波さんに撮っていただけるということで、たぶんご本人のテンションはかなり上がっているはずですが。ただ、昔この企画が立ち上がった当初、冗談で成志さんが「いくつかやるのなら、一本、おポンチ髑髏をやろうよ、俺を呼んでさ」とおっしゃっていて。だから今回、“鳥”チームに成志さんがキャスティングされたと聞いた時は「ややっ、おポンチ髑髏なのか!」と思ったんですけれど、でも別に今回はどうやらそんなことではないようで(笑)。ただ、キャスト陣を見ていただければわかるように、阿部サダヲさん、成志さん、梶原善さん、少路勇介さん、福田転球さん。このあたりの小劇場出身者が集まっているので、少なからずオモシロにはなるだろうと予想します。

——稽古の時点で、どんどんそっち寄りになっていきそうな気もします。
はい。台本から、多少意識したものを書いてくるとは思うんですが、いのうえがもっとふざけた『髑髏城の七人』にしてくれることを祈っています。そうじゃないと4作やる意味がないと思っているので。いわば“花”で正統派なカッコイイ髑髏をやってもらい“鳥”ではふざけた人たちがふざけたことをやれることを期待しています。どうなるかは、本当に現時点ではわからないですけどね。

——阿部さんが捨之介役だというだけでだいぶ違う雰囲気にはなりそうですが。
そこがキーになると思います。それに対する天魔王は森山未來で、蘭兵衛は早乙女太一という2011年版のコンビですので。あの殺陣が再び観られるのが楽しみな上に、阿部さんが加わるんですから。ぜひ阿部さんの身体能力を生かした、ふざけた作品にしていただければと思います。なにしろ、阿部さんも松雪さんも、成志さんや善さんにしても、いのうえの信頼は絶大ですから。そんな気心知れた人たちでまた新しい『髑髏城の七人』が作れたらいいなと思います。

——では粟根さんからファンの方へ、鳥へのお誘いの言葉を。
“花”を観た人も、安心してはいけません。“鳥”ではまた別の作品ですので、また来てください。“風”も“月”も違いますので、年4回、5回、6回と今年は豊洲に通うぞというくらいの気持ちでいていただければ。今回は地方の方には申し訳ないのですが、ぜひオリンピック会場の下見のつもりで豊洲まで来ていただければ、と思いますね。