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中島かずき氏×いのうえひでのり氏 対談インタビュー

2017.01.01

東京・豊洲に誕生する〔IHIステージアラウンド東京〕。そのこけら落とし公演、劇団☆新感線『髑髏城の七人』は3月30日から6月12日にわたって上演される“Season花”からスタートするが、続く第2弾“Season鳥”も準備万端、いよいよ動き出した。今回の『髑髏城〜』には“花鳥風月”と名付けられた4つのバージョンが存在し、キャストはもちろん、脚本も演出も変わるというダイナミックな趣向になっているのも大きな見どころのひとつ。脚本を担当する中島かずき、劇団の座長で演出を手がけるいのうえひでのりに、“Season鳥”は果たしてどんなステージになるのかを語ってもらった。



——今回は新しい劇場〔IHIステージアラウンド東京〕にて、“花鳥風月”4パターンの『髑髏城の七人』が誕生するわけですね。

いのうえ そうです、要するに4パターンそれぞれで毎回キャストが変わり、脚本も演出も変わるわけです。“花鳥風月”で全部、見せ方を変えていきます。

中島 キャストに合わせて脚本を書き換えますから、登場人物は同じでもキャラクターがかなり違ってきます。ちなみに“花”と“鳥”は捨之介と天魔王を別々の俳優さんが演じますけれど、このあとの“風”か“月”かどちらかのバージョンでは捨之介と天魔王を一人二役で演じるパターンを復活させたりもします。そうなると、作品の構造的にもまたガラッと変わりますからね。つまり1つのバージョンを観てもそれがすべてではない、ということです(笑)。


——その第2弾にあたる“Season鳥”では、どういうステージングを考えていらっしゃるんでしょうか。

いのうえ “花”が2011年版の『髑髏城の七人』をストイックに発展させたバージョンだとすれば、“鳥”はまた全然違って、どちらかといえば歌や踊りの要素を強化してもっと派手にショーアップさせたバージョンになります。決してミュージカルではないですけど、ある程度は歌、歌詞でドラマが進行するようにしたいと思っています。

中島 歌が会話になり会話が歌になりみたいなこととか、身体表現を使ったりもしてできたら面白いよね。

いのうえ たぶんお客様もご覧になれば「こう来たか!」って驚いていただけると思いますよ。

中島 脚本のほうでも、たぶん捨之介の立ち位置がだいぶ変わります。なにしろ“鳥”はキャストが阿部(サダヲ)ちゃんと、(森山)未來くんと、(早乙女)太一くんですから。

いのうえ 顔合わせが変われば人間関係が変わるし、位置関係も変わるでしょうしね。

中島 なにしろ阿部ちゃんが捨之介をやるわけですから、そういう意味ではこれまでのイメージを1から作り直すくらいの覚悟で僕も臨んでいます。

いのうえ まあ、彼自身のキャラクターが今までの捨之介像を受け付けないところもありますからね。今までとは違う個性の役にしないと、せっかく阿部ちゃんをキャスティングした旨味が出て来ませんし。


——阿部さん演じる<捨之介>はビジュアルからしてこれまでと印象がまるで違いますが、キャラクターとしてはどのように描かれていくのでしょうか。

中島 今回の捨之介は、信長のもとで“地を這う者”だったということ、要するに彼は下回りの“草の者”だったので。

いのうえ つまりスパイ、忍びだった過去が強調されるんです。


——これまでは、捨之介が忍びだったことにはそれほど触れていませんでしたが。

いのうえ 昔はそうだった、ということをセリフで言ってはいたけど。今回は、それをビジュアルも含めて強調していくということです。

中島 要するに、天魔王が天で、捨之介は地であるということをもうちょっとはっきり書きたいなということですよ。

いのうえ 阿部ちゃんがやることで、今までとはまったく違った捨之介像が見られるのではないでしょうか。

中島 大人計画の公演では観られないような魅力を発揮してくれそうですし。僕自身もそれで気分がノリましたから、阿部ちゃんが捨之介を演じてくれるなんて相当面白いことになるな、と。

いのうえ 着流しで、いわゆる遊び人という、捨之介の一番パブリックなイメージからは離れますしね。何しろ、身体能力が高いいい役者さんですよ。

中島 笑いもできて、硬軟、どっちもいけるしね。


——森山さん、早乙女さんにも、また違うアプローチでそれぞれ<天魔王>と<蘭兵衛>を演じてもらうわけですね。

中島 未來くんと太一くんに関しては2011年版で同じ役を一度演じているとはいえ、決して同じアプローチにならないよう工夫したいところではあります。きっとここに阿部ちゃんが入ることで、全然違う関係性が生まれるだろうし。

いのうえ それに前回から6年たっていますから。脚本自体も変わってくるけど、二人とも成長して役者としてもいろいろ変化しているはずで、きっと役のとらえ方も前と全然違うと思う。対決の場面にしても、いわゆるクドキの場面にしても。その違いこそ、お客様も観てみたいだろうし。

中島 いのうえのことだから、前回と同じことは絶対やらないはずですしね。

いのうえ そこはちょっと違う方法でやってみるつもりです。二人とも成長して2011年版の時のピリピリした、カミソリみたいな殺気ともまた違う、別な魅力がきっと出てくるだろうと思うので。

中島 前回は、年齢的にちょうど過渡期だったんだよね。あのあと僕は、『ふたがしら』(WOWOW、2015)で太一くんと一緒に仕事をしていたんだけど、やっぱり前回の時の印象とはすごく変わっていたから。芝居に対する意欲もすごいし、そうやって大きく成長した早乙女太一の魅力を新たに出していきたいですね。

いのうえ “無界屋”を作った主人の役どころとして一生懸命で真っ直ぐなところはよく出ていたけど、今回はさらに包容力のある部分を出していって色里の主人という存在に説得力を持たせたいんですよ。前回はちょっと極楽太夫に仕切られている風にも見えたから(笑)。

中島 あの時は、極楽の一方的な片思いだったみたいな関係性に見えたかもしれないですが、今回は松雪(泰子)さん演じる極楽太夫と両想いというか、気持ちが通じ合っている関係に見せたいんです。それは“花”でもある程度はやっていることなんですけど。そういう、蘭兵衛と極楽が共犯関係である種の恋愛関係でもあるという関係性というのは、たぶん今回の“花鳥風月”を通じて基本ラインになると思います。この二人と、さらに兵庫と極楽との関係は、たぶん過去作や2011年版とも違うものになっています。

いのうえ そして当然、未來演じる天魔王と捨之介との関係性もかなり変わりますからね。そこのところも、楽しみにしていただきたいです。



——<極楽太夫>を演じる松雪泰子さんも、劇団☆新感線にはおなじみの方ですが。

いのうえ 3回出ていただいているので、もはや準劇団員です(笑)。

中島 “いのうえ歌舞伎”、“RX”、“ネタもの”と全種目を制覇して、新感線トライアスロンをクリアしている人ですからね(笑)。

いのうえ オールマイティー、オールラウンダーだから。女優さんの中では劇団員を除くとやっちゃんくらいじゃないですか。“ネタもの”、“音モノ”、“歌舞伎”、全部に出ている人は。

中島 すでに新感線の舞台であることをしっかり理解してくれているという意味で、アテにできるというか。

いのうえ まったく、何も心配していないです(笑)。


——初めて出ていただいた『吉原御免状』(2005年)の時も太夫役でしたよね。

中島 そうだった。そうか、今回また太夫に戻ってきた。太夫、お竜、お竜、太夫なんだ(笑)。

いのうえ 華やかだから、そういう派手なシーンが似合うんですよ。また今回は特に歌、踊りが入ることでそこの魅力がより強調される可能性はありますね。


——そして<兵庫>は福田転球さん。

中島 これまでで一番年長の兵庫になりますね。

いのうえ ま、でもやっちゃんに惚れているというところは、逆にすごくリアリティが出そう。

中島 そしてまったく相手にされないというところも(笑)。

いのうえ “関八州荒武者隊”や“無界屋”の場面で全体のバランス的には、みんなよりちょっとお兄ちゃんみたいなイメージになるのかな。きっと、空気をうまく作ってくれると思いますね。


——<沙霧>は清水葉月さんです。

いのうえ 『墓場女子高生』(2015年)でヒロインを演じ、『転校生』(2015年)にも出ていた女優さんで、すごくハキハキしたいい感じだったんですよ。ま、抜擢ですね。

中島 今回、捨之介像はガラッと変えますが、沙霧はあまり変えずにこれまでどおりの沙霧像で攻めようかなと思っているんです。

いのうえ まあ、捨之介像が変わることで、二人の関係性はずいぶん変わるはずだから。

中島 それだけで見え方としても、かなり変わってくると思います。


——池田成志さんは新感線の舞台に数えきれないくらいに出られていますが、『髑髏城〜』には初参加ですね。どんな<贋鉄斎>になりそうですか。

中島 ま、はた迷惑度の上がった贋鉄斎ですよ。

いのうえ 声が大きな、胡散臭い贋鉄斎だね。まあ、今回も彼は完全燃焼してくれることでしょう。ただし“百人斬り”の見せ方に関しては、本番までのお楽しみということで。

中島 そこでもまた新しい挑戦をしようと思っていますので。ぜひ、楽しみにしていてください。


——粟根まことさんは、三度目の裏切り<渡京>役ですね。

いのうえ 彼こそ元祖、裏切りキャラですよ。

中島 もともと、初演は<三五>ではなく<渡京>だったんですから。元祖裏切り男が、裏切りの神髄を見せてくれるんじゃないでしょうか。(“花”で<三五>を演じる)河野まさとの裏切りなんてまだまだ浅い、本当の裏切りはこういうものだと。本来は小田切渡京がオリジナルなんです。小説版のほうも小田切渡京ですしね。哲学のある裏切りと哲学のない裏切りとの違いといえばいいのかな(笑)。

——渡京は、哲学を持って裏切っている、と?

中島 そうですね。能書きという言い方でもいい。能書きを持って裏切るか、脊髄反射で裏切るか。粟根が演じることでそういう風に見えたら面白いけどなあ。

いのうえ いつの間にか、裏切りキャラと言えばサンボ(河野まさと)になってたからね。

中島 『アオドクロ』以来ですから、そういう意味では14年に一度帰ってくる渡京ですよ(笑)。

いのうえ みなさんのご期待に応えられるよう、裏切り道の真骨頂で思い切り裏切ってもらいましょう。


——そして少路勇介さんは劇団☆新感線には二度目の参加ですね。

いのうえ 『蜉蝣峠』(2009年)ではいっそん(礒野慎吾)とコンビで百姓役をやってもらっていたんですが、それがとてもうまかったんで。

中島 うん、少路くんの百姓役は確かにすごくうまかった(笑)。

いのうえ ということで、今回の<少吉>役でもとても期待しています(笑)。


——2004年の『アカドクロ』で贋鉄斎役だった梶原善さんは、今回は<狸穴二郎衛門>役での登場です。

中島 初参加が贋鉄斎で、そのあといろいろな作品に出てもらっているね。『吉原御免状』、『Cat in the Red Boots』(2006年)、『蜉蝣峠』、『蒼の乱』(2014年)。そうか、ネタものには出ていないんだ。

いのうえ やっぱり芝居の人だという認識だからかな。今回は信頼できる準劇団員として、良いタヌキオヤジっぷりを見せてくれるんじゃないでしょうか。


——演出としては、劇場全体の使い方も変えていくんですか。

いのうえ プラットフォームは一緒ですけど、完全に同じではなく、順番や見せ方、飾り方とかでそれぞれ変わってくるとは思います。関東荒野があって、無界屋があって、髑髏城の天守閣の中があって。特に“鳥”では歌や踊りの要素を強化するわけなので、それを効果的に見せられるようなセットになるだろうから、そういう意味では“花”とはだいぶ印象が変わってくるんじゃないかな。


——使用する楽曲は、新曲になるんでしょうか。

いのうえ 一応、現時点では原則として“花鳥風月”4バージョンとも使う音楽は変えていくつもりです。BGMでは多少同じものが出てくるかもしれないけど、気合としては全部変えます。


——そういう意味では、やはりこれまで培ってきた新感線のスタッフワークがあるからこそ、今回のプロジェクトは成立するんでしょうね。

中島 本当にそう思いますよ。

いのうえ しかも『髑髏城〜』という演目だからこそ、できるんです。もし、これが新作で、新しい劇場で、ということだったらきっとどうしていいかわからなかったと思いますね(笑)。

中島 うん。確かに新感線の作品の中でも、『髑髏城〜』は物語の背景となる場面のポイントがはっきりしているから。あの劇場を使って4バージョンに描き分けることを考えても、一番正しい選択だったと思いますね。


2017年6月27日よりはじまる『髑髏城の七人 Season鳥』をお楽しみに!